感染症患者を対象としたゲンボイヤ配合錠の臨床試験
292-0104試験及び292-0111試験36):スタリビルド配合錠(エルビテグラビルとして150mg,コビシスタットとして150mg,エムトリシタビンとして200mg及びテノホビル ジソプロキシルフマル酸塩として300mgを含有する抗HIV薬)を対照とした無作為化二重盲検並行比較試験2試験の結果を表8に示す(投与後48週時及び96週時)。なお,国内において292-0104試験に組み入れられた被験者10例(ゲンボイヤ配合錠投与群4例,スタリビルド配合錠投与群6例)における投与後48週時のHIV-1 RNA量が50copies/mL未満の被験者の割合は,ゲンボイヤ配合錠投与群及びスタリビルド配合錠投与群ともに100%であった。
表8 292-0104試験及び292-0111試験の結果(投与後48週時及び96週時)
例数(%)
注14)投与後48週又は96週時の血漿中HIV-1 RNA量が50copies/mL以上の症例,治療効果の欠如及び減弱により早期に中止した症例,有害事象,死亡,治療効果の欠如又は減弱以外の理由で中止した症例のうち,中止時の血漿中HIV-1 RNA量が50copies/mL以上であった症例
(2) 抗HIV薬による治療経験がないHIV-1感染症患者を対象としたダルナビル/コビシスタット/エムトリシタビン/テノホビル アラフェナミドフマル酸塩配合錠(ダルナビルとして800mg,コビシスタットとして150mg,エムトリシタビンとして200mg及びテノホビル アラフェナミドとして10mgを含有する抗HIV薬)の臨床試験
299-0102試験37):ダルナビル800mg,コビシスタット150mg及びエムトリシタビン/テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩を対照とした無作為化二重盲検並行比較試験の結果を表9に示す(投与後48週時)。
表9 299-0102試験の結果(投与後48週時)
例数(%)
注15)投与後48週時の血漿中HIV-1 RNA量が50copies/mL以上の症例,治療効果の欠如及び減弱により早期に中止した症例,有害事象,死亡,治療効果の欠如又は減弱以外の理由で中止した症例のうち,中止時の血漿中HIV-1 RNA量が50copies/mL以上であった症例
(3) 抗HIV薬による治療経験があり,ウイルス学的に抑制されているHIV-1感染症患者を対象とした臨床試験
311-1089試験38):エムトリシタビン/テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩を含むレジメンから本剤を含むレジメンに切り替えた際の,本剤の有効性及び安全性を検討するために実施した,エムトリシタビン/テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩を含むレジメン継続投与を対照とした無作為化非盲検並行比較試験の結果を表10に示す(投与後48週時)。
表10 311-1089試験の結果(投与後48週時)
例数(%)
注16)投与後48週時の血漿中HIV-1 RNA量が50copies/mL以上の症例,治療効果の欠如及び減弱により早期に中止した症例,有害事象,死亡,治療効果の欠如又は減弱以外の理由で中止した症例のうち,中止時の血漿中HIV-1 RNA量が50copies/mL以上であった症例
(4) 抗HIV薬による治療経験があり,ウイルス学的に抑制されているHIV-1感染症患者を対象としたゲンボイヤ配合錠の臨床試験
292-0109試験39):エムトリシタビン/テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩を含むレジメンからゲンボイヤ配合錠に切り替えた際の,ゲンボイヤ配合錠の有効性及び安全性を検討するために実施した,エムトリシタビン/テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩を含むレジメン継続投与を対照とした無作為化非盲検並行比較試験の結果を表11に示す(投与後48週時及び96週時)。
表11 292-0109試験の結果(投与後48週時及び96週時)
例数(%)
注17)投与後48週又は96週時の血漿中HIV-1 RNA量が50copies/mL以上の症例,治療効果の欠如及び減弱により早期に中止した症例,有害事象,死亡,治療効果の欠如又は減弱以外の理由で中止した症例のうち,中止時の血漿中HIV-1 RNA量が50copies/mL以上であった症例
薬効薬理
1. 作用機序
エムトリシタビン:エムトリシタビンは,シチジンの合成ヌクレオシド誘導体であり,細胞内酵素によりリン酸化されエムトリシタビン5’-三リン酸となる40)。エムトリシタビン5’-三リン酸はHIV-1逆転写酵素の基質であるデオキシシチジン5’-三リン酸と競合すること及び新生ウイルスDNAに取り込まれた後にDNA鎖伸長を停止させることにより,HIV-1逆転写酵素の活性を阻害する。エムトリシタビン5’-三リン酸のHIV-1逆転写酵素に対する阻害定数(Ki値)は0.17μMであるのに対し,ヒトのDNAポリメラーゼα,β,ε及びミトコンドリアDNAポリメラーゼγに対するKi値は,それぞれ6.0μM,17.0μM,150μM及び6.0μMとなり,これらに対するエムトリシタビン5’-三リン酸の阻害作用は弱い41)。
テノホビル アラフェナミド:テノホビル アラフェナミドは,テノホビルのホスホンアミド酸プロドラッグ(2’-デオキシアデノシン一リン酸誘導体)である。テノホビル アラフェナミドは,血漿中の安定性が高く,細胞内透過性を有し,末梢血単核球及びマクロファージ中のカテプシンAにより加水分解を受けて細胞内にテノホビルを送達する。その後,細胞内酵素によりリン酸化を受け,テノホビル二リン酸となる42)。テノホビル二リン酸は,HIV-1逆転写酵素の基質であるデオキシアデノシン5’-三リン酸と競合すること及びDNAに取り込まれた後にDNA鎖伸長を停止させることにより,HIV-1逆転写酵素の活性を阻害する。テノホビル二リン酸のHIV-1逆転写酵素に対するKi値は0.21μMであるのに対し,ヒトのDNAポリメラーゼα,β及びミトコンドリアDNAポリメラーゼγに対するKi値は,それぞれ5.2μM,81.7μM及び59.5μMとなり,これらに対するテノホビル二リン酸の阻害作用は弱い43) 44) 45)。
2. 抗ウイルス作用(in vitro )
エムトリシタビン及びテノホビル アラフェナミドを細胞培養系で評価した結果,相乗的な抗ウイルス活性が認められた。
エムトリシタビン:ヒトTリンパ芽球様細胞株,MAGI-CCR5細胞株及び末梢血単核球初代培養細胞を用いて,HIV-1の実験室株及び臨床分離株に対するエムトリシタビンの抗ウイルス活性を評価した。エムトリシタビンのEC50値は,0.0013~0.64μMの範囲であった46