Fludara(Fludarabine Phosphate infusion )フルダラ静注用50mg
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作成又は改訂年月
**2015年6月改訂(第20版)
*2013年1月改訂
日本標準商品分類番号
874229
日本標準商品分類番号等
国際誕生年月
1991年4月
薬効分類名
抗悪性腫瘍剤
承認等
販売名
フルダラ静注用50mg
販売名コード
4229400D1033
承認・許可番号
承認番号
21700AMY00037
商標名
Fludara
薬価基準収載年月
2005年6月
販売開始年月
2000年4月
貯法・使用期限等
貯法
室温保存
使用期限
包装に表示されている期限内に使用すること
規制区分
劇薬
処方箋医薬品注)
注)注意-医師等の処方箋により使用すること
組成
成分・含量
1バイアル中、フルダラビンリン酸エステル50mg含有
添加物
D-マンニトール50mg、pH調整剤
性状
色・性状
白色の粉末又は塊の凍結乾燥製剤
浸透圧比注)(生理食塩液に対する比)
約2
pH注)
7.2~8.2
注)50mgを注射用水1mLに溶解したとき
一般的名称
フルダラビンリン酸エステル点滴静注用
警告
1.
本剤は、緊急時に十分対応できる医療施設において、造血器悪性腫瘍の治療に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤の投与が適切と判断される症例についてのみ投与すること。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に本剤の有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与すること。
同種造血幹細胞移植の前治療として本剤を使用する場合には、同種造血幹細胞移植に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、適切と判断される症例についてのみ投与すること。
2.
骨髄抑制により感染症又は出血傾向等の重篤な副作用が増悪又は発現することがあるので、頻回に臨床検査(血液検査、肝機能・腎機能検査等)を行うなど、患者の状態を十分に観察すること。[「重要な基本的注意」の項参照]
3.
遷延性のリンパ球減少により、重症の免疫不全が増悪又は発現する可能性があるので、頻回に臨床検査(血液検査等)を行うなど、免疫不全の徴候について綿密な検査を行うこと。[「重要な基本的注意」の項参照]
4.
致命的な自己免疫性溶血性貧血が報告されているので、自己免疫性溶血性貧血の既往歴の有無、クームス試験の結果に拘わらず、溶血性貧血の徴候について綿密な検査を行うこと。
5.
放射線非照射血の輸血により移植片対宿主病(GVHD:graft versus host disease)があらわれることがあるので、本剤による治療中又は治療後の患者で輸血を必要とする場合は、照射処理された血液を輸血すること。
6.
ペントスタチンとの併用により致命的な肺毒性が報告されているので併用しないこと。[「禁忌」、「相互作用」の項参照]
なお、本剤使用にあたっては、本剤及び併用薬剤の添付文書を熟読し、慎重に患者を選択すること。[「禁忌」、「慎重投与」、「重要な基本的注意」の項を参照]
禁忌
(次の患者には投与しないこと)
1.
重篤な腎障害のある患者(クレアチニンクリアランス<24時間蓄尿により測定>が30mL/分未満の患者)[本剤は腎から排泄されるので、排泄遅延により副作用が強くあらわれるおそれがある。]
2.
妊婦又は妊娠している可能性のある女性[「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項参照]
3.
ペントスタチンを投与中の患者[「警告」、「相互作用」の項参照]
4.
フルダラビンリン酸エステルにより溶血性貧血を起こしたことのある患者[重篤な溶血性貧血を起こすおそれがある。]
5.
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
6.
重症感染症を合併している患者[特に同種造血幹細胞移植の前治療に本剤を投与する場合は、感染症が増悪し致命的となることがある。]
効能又は効果
効能又は効果/用法及び用量
●貧血又は血小板減少症を伴う慢性リンパ性白血病
●再発又は難治性の下記疾患
低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫
マントル細胞リンパ腫
●下記疾患における同種造血幹細胞移植の前治療
急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫
効能又は効果に関連する使用上の注意
慢性リンパ性白血病において、本剤の対象は、未治療例の場合、原疾患の進展に起因する貧血又は血小板減少症を伴う慢性リンパ性白血病患者(Rai分類でハイリスク群又はBinet分類でB又はC期)であり、既治療例の場合、少なくとも一種類の標準的なアルキル化剤を含む治療に無効又は進行性の慢性リンパ性白血病患者である。
用法及び用量
●貧血又は血小板減少症を伴う慢性リンパ性白血病
●再発又は難治性の低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫
通常、成人にはフルダラビンリン酸エステルとして、1日量20mg/m2(体表面積)を5日間連日点滴静注(約30分)し、23日間休薬する。これを1クールとし、投薬を繰り返す。
なお、患者の状態により適宜増減する。
●同種造血幹細胞移植の前治療
フルダラビンリン酸エステルとして、1日量30mg/m2(体表面積)を6日間連日点滴静注(約30分)する。なお、患者の状態により、投与量及び投与日数は適宜減ずる。
用法及び用量に関連する使用上の注意
1.
慢性リンパ性白血病、低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫において、腎機能が低下している患者(クレアチニンクリアランスが30~70mL/分)では、腎機能の低下に応じて次のような目安により投与量を減量し、安全性を確認しながら慎重に投与すること。[「薬物動態」の項参照]
<減量の目安>
クレアチニンクリアランス(mL/分):70
投与量(mg/m2):18
クレアチニンクリアランス(mL/分):50
投与量(mg/m2):14
クレアチニンクリアランス(mL/分):30
投与量(mg/m2):12
2.
慢性リンパ性白血病、低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫への本剤投与にあたっては、好中球、血小板等の変動に十分留意し、前クールにおいて、高度の骨髄抑制が認められなかった場合に限り増量(最大25mg/m2/日)を考慮する。
3.
同種造血幹細胞移植の前治療においては、他の抗悪性腫瘍剤や全身放射線照射と併用すること。
4.
小児における本剤の同種造血幹細胞移植の前治療としての有効性及び安全性は確立していない。[使用経験が限られている。]
5.
本剤は、通常2.5mLの注射用水にて溶解し(フルダラビンリン酸エステル20mg/mL)、体表面積より計算した必要量をとり、日局生理食塩液100mL以上に希釈する。
使用上の注意
慎重投与
(次の患者には慎重に投与すること)
1.
腎機能が低下している患者(クレアチニンクリアランスが30~70mL/分の患者)[副作用が強くあらわれるおそれがある。]
2.
感染症を合併している患者[骨髄抑制により感染症が増悪するおそれがある。]
3.
肝障害のある患者[症状を悪化させるおそれがある。]
重要な基本的注意
1.
骨髄抑制により感染症又は出血傾向等の重篤な副作用が増悪又は発現することがあるので、頻回に臨床検査(血液検査、肝機能・腎機能検査等)を行うなど、患者の状態を十分に観察すること。異常が認められた場合には減量、休薬等の適切な処置を行うこと。また、使用が長期間にわたると副作用が強くあらわれ、遷延性に推移することがあるので、投与は慎重に行うこと。[「その他の注意」の項参照]
2.
遷延性のリンパ球減少(特にCD4陽性リンパ球の減少)により、重症の免疫不全が増悪又は発現する可能性があるので、頻回に臨床検査(血液検査等)を行うなど、免疫不全の徴候について綿密な検査を行うこと。異常が認められた場合には減量、休薬等の適切な処置を行うとともに、カンジダ等の真菌、サイトメガロウイルス等のウイルス、ニューモシスチス・カリニ等による重症日和見感染に注意すること。また、日和見感染の発現を抑制するため、あらかじめ適切な措置を講ずること。
3.
生殖可能な年齢の患者に投与する場合には、性腺に対する影響を考慮すること。[「その他の注意」の項参照]
4.
同種造血幹細胞移植の前治療薬として本剤を用いる際には、患者の状態及び臓器機能(心、肺、肝、腎等)を十分検討し、同種造血幹細胞移植を実施可能と判断される患者にのみ投与し、以下の事項について特に注意すること。
(1)
本剤の投与後は患者の状態を十分に観察し、致命的な感染症の発現を抑制するため、抗菌剤投与等の感染症対策を行い、適切な無菌管理を行うこと。
(2)
本剤の投与後は輸血及び造血因子の投与等適切な支持療法を行うこと。
5.
**B型肝炎ウイルスキャリアの患者又は既往感染者(HBs抗原陰性、かつHBc抗体又はHBs抗体陽性)で、本剤の投与により、B型肝炎ウイルスの再活性化による肝炎又は劇症肝炎があらわれることがあるので、本剤投与に先立って肝炎ウイルス感染の有無を確認し、本剤投与前に適切な処置を行うこと。本剤の治療期間中及び治療終了後は継続して肝機能検査値や肝炎ウイルスマーカーのモニタリングを行うなど、B型肝炎ウイルス増殖の徴候や症状の発現に注意すること。
相互作用
併用禁忌
(併用しないこと)
薬剤名等
ペントスタチン
(コホリン)
臨床症状・措置方法
致命的な肺毒性が発現することがある。
機序・危険因子
機序は不明
併用注意
(併用に注意すること)
1. 薬剤名等
シタラビン
臨床症状・措置方法
骨髄抑制等の副作用が増強するおそれがある。
機序・危険因子
in vivo試験及びin vitro試験において、シタラビンの活性代謝物であるara-CTPの細胞内濃度の上昇が認められている。
2. 薬剤名等
他の抗悪性腫瘍剤
臨床症状・措置方法
骨髄抑制等の副作用が増強するおそれがある。
機序・危険因子
ともに骨髄抑制作用を有する。
副作用
副作用等発現状況の概要
慢性リンパ性白血病を対象とした国内臨床試験において、総症例41例中、40例(97.6%)に副作用(臨床検査値異常を含む)が認められ、主な自他覚症状は発熱11件(26.8%)、悪心5件(12.2%)、疲労5件(12.2%)、脱力感5件(12.2%)、嘔吐3件(7.3%)等であった。
主な臨床検査値異常は好中球減少25件(61.0%)、血小板減少21件(51.2%)、ヘモグロビン減少15件(36.6%)、赤血球減少14件(34.1%)等であった。(承認時)
重大な副作用
1. 骨髄抑制
(頻度不明)
汎血球減少、好中球減少、血小板減少、ヘモグロビン減少、赤血球減少等があらわれる又は増悪することがあるので、頻回に血液検査を行うなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には減量、休薬等の適切な処置を行うこと。
2. 間質性肺炎
(頻度不明)
間質性肺炎があらわれることがあるので、観察を十分に行い、呼吸困難、咳、発熱等の症状が認められた場合には速やかにX線検査を行い、本剤の投与を中止するとともに、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。
3. 精神神経障害
(頻度不明)
錯乱、昏睡、興奮、けいれん発作、失明、末梢神経障害等の精神神経障害があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。
4. 腫瘍崩壊症候群
(頻度不明)
腫瘍崩壊症候群(初期症状:側腹部痛、血尿)があらわれることがある。この合併症は高尿酸血症、高リン酸血症、低カルシウム血症、代謝性アシドーシス、高カリウム血症、血尿及び腎不全を伴うことがあるので、異常が認められた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと(本剤の治療効果が投与開始後1週間であらわれることがあるので、この合併症の危険性のある患者では予防措置を講じること)。
5. **重症日和見感染
(頻度不明)
敗血症、肺炎等の重症日和見感染があらわれることがある。また、B型肝炎ウイルスによる肝炎の増悪又は劇症肝炎を認めることがある。観察を十分に行い、異常が認められた場合には、抗生剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤の投与等適切な処置を行うこと。
6. 自己免疫性溶血性貧血
(頻度不明)
致命的な自己免疫性溶血性貧血があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には直ちに投与を中止し、輸血(放射線照射血)、副腎皮質ホルモン剤の投与など適切な処置を行うこと。
7. 自己免疫性血小板減少症
(頻度不明)
自己免疫性血小板減少症があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。
8. 赤芽球癆
(頻度不明)
赤芽球癆があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。
9. 脳出血、肺出血、消化管出血
(頻度不明)
脳出血、肺出血、消化管出血があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。
10. 出血性膀胱炎
(頻度不明)
出血性膀胱炎があらわれることがあるので、観察を十分に行い、血尿が認められた場合には減量、休薬等の適切な処置を行うこと。
11. 重篤な皮膚障害
(頻度不明)
皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、中毒性表皮壊死症(Lyell症候群)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、発熱、口腔粘膜の発疹、口内炎等が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
12. 心不全
(頻度不明)
心不全があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。
13. 進行性多巣性白質脳症(PML)
(頻度不明)
進行性多巣性白質脳症(PML)があらわれることがあるので、本剤の治療期間中及び治療終了後は患者の状態を十分に観察し、意識障害、認知障害、麻痺症状(片麻痺、四肢麻痺)、言語障害等の症状があらわれた場合には、MRIによる画像診断及び脳脊髄液検査を行うとともに、投与を中止し、適切な処置を行うこと。
その他の副作用
下記の副作用があらわれることがあるので、このような場合には適切な処置を行うこと。
呼吸器
0.1~5%未満※
咳、喘鳴、呼吸障害、呼吸困難、低酸素(症)
呼吸器
頻度不明※※
上気道炎、鼻咽頭炎、咽頭炎、アレルギー性鼻炎
消化器
5%以上※
悪心、嘔吐
消化器
0.1~5%未満※
便秘、口唇疱疹
消化器
頻度不明※※
食欲不振、下痢、口内炎、胃部不快感、腹痛、消化不良
精神神経系
5%以上※
脱力感
精神神経系
0.1~5%未満※
下肢知覚異常、手指感覚異常
精神神経系
頻度不明※※
視力障害、視神経炎、視神経障害、下垂手、頭痛、不眠、めまい、感覚減退(しびれ)、錯感覚注)
循環器
0.1~5%未満※
不整脈、脈拍数増加
循環器
頻度不明※※
浮腫、動悸
代謝異常
頻度不明※※
代謝性アシドーシス、膵酵素変化
肝臓
5%以上※
LDH上昇、AST(GOT)上昇、ALT(GPT)上昇、総ビリルビン上昇
肝臓
0.1~5%未満※
黄疸、ALP上昇、 γ-GTP上昇、血清総蛋白減少、血清アルブミン低下
肝臓
頻度不明※※
ウロビリン尿
皮膚
0.1~5%未満※
皮膚そう痒症
皮膚
頻度不明※※
発疹、表皮剥離
腎臓
5%以上※
BUN上昇、蛋白尿
腎臓
0.1~5%未満※
クレアチニン上昇
腎臓
頻度不明※※
高尿酸血症、高リン酸血症、低カルシウム血症、高カリウム血症、低ナトリウム血症
泌尿器
頻度不明※※
尿中結晶
その他
5%以上※
発熱、疲労
その他
0.1~5%未満※
疼痛、水痘、体重減少
その他
頻度不明※※
悪寒、けん怠感、腰痛、CRP上昇、筋肉痛、神経痛、味覚異常、多汗、潮紅、無力症注)、インフルエンザ様症状注)、末梢性浮腫注)、四肢痛注)、粘膜障害
その他の副作用の注意
※:慢性リンパ性白血病を対象とした国内臨床試験における頻度
※※:海外添付文書等で記載のある副作用のため頻度不明
注)外国の臨床試験で報告された有害事象
高齢者への投与
一般に高齢者では生理機能が低下しているので、本剤投与前に患者の状態及び臓器機能を十分検討し確認すること。投与開始後は、患者の状態を慎重に観察すること。
妊婦、産婦、授乳婦等への投与
1.
胎児毒性及び催奇形性が報告されているので、妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。[妊娠中に本剤の投与を受けた患者で奇形を有する児を出産したとの報告がある。]
2.
授乳中の女性に投与することを避け、やむを得ず投与する場合には授乳を中止させること。[動物実験で乳汁中に移行することが認められている。]
小児等への投与
低出生体重児、新生児、乳児、幼児又は小児に対する安全性は確立していない。[使用経験が限られている。]
過量投与
徴候、症状
外国の急性白血病を対象とした臨床試験で、過量投与により失明、昏睡などの重篤な精神神経障害の発現が報告されている。
処置
本剤の投与を中止し、慎重に観察を行うとともに適切な対症療法を行うこと。
適用上の注意
1. 投与時
調製後は速やかに使用し、残液は適切に廃棄すること。
2. 調製方法
(1)
本剤は、通常2.5mLの注射用水にて溶解し(フルダラビンリン酸エステル20mg/mL)、体表面積より計算した必要量をとり、日局生理食塩液100mL以上に希釈する。
(2)
他の薬剤との混注を避けること。[配合変化を起こす可能性がある。]
(3)
本剤の取扱い及び調製にあたっては、手袋、防護メガネを使用するなど慎重に行うこと。本剤が皮膚又は粘膜に触れた場合には、直ちに石鹸でよく洗うこと。
その他の注意
1.
フルダラビンリン酸エステルと他の抗悪性腫瘍剤で治療された患者に、骨髄異形成症候群、急性白血病、エプスタイン・バーウイルス関連リンパ増殖性疾患が発生したとの報告がある。
2.
本剤の治療中又は治療後に、皮膚癌の発生、悪化又は再燃が報告されている。
3.
固形腫瘍患者を対象とした外国の第I相臨床試験で、顆粒球数が最低値を示すまでの平均期間(中央値)は、13日(範囲:3~25日)であり、血小板については16日(範囲:2~32日)であった。
4.
動物実験(ラット、イヌ)において精巣毒性が認められ、4週間の休薬期間では回復性が確認されていないので、不妊など性腺に対する影響を考慮すること。また、男性において、本剤による治療中、精子のDNA損傷が認められたという報告がある。
薬物動態
1. 薬物動態
日本人の慢性リンパ性白血病(CLL)及び成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)患者に本剤15、20、25mg/m2を1日1回30分点滴静注5日間連日投与したとき、投与1日目の血漿中代謝物(2F-ara-A)濃度は半減期0.6~0.8時間及び11~20時間の2相性で消失した。最高血漿中濃度及びAUCは用量依存的に増加した。また、投与5日目のAUCは1日目の約2倍に増加した1)。
米国人白血病患者に本剤20~125mg/m2を30分点滴静注したとき、白血病細胞内の活性代謝物(2F-ara-ATP)濃度は投与3.5時間後に最高値を示した後、半減期14~15時間で消失した2)。
2. 蛋白結合
最終添加濃度0.2~5μg/mLでの2F-ara-Aのヒト血漿との蛋白結合率は19.3~29.4%であり、濃度によらずほぼ一定であった3)。また、2F-ara-A(最終添加濃度0.285μg/mL)のヒト血清アルブミンとの結合率は9.1%であった4)。
3. 代謝・排泄
静脈内投与後血液中で速やかに2F-ara-Aに代謝され、2F-ara-Aとして主に尿中に排泄される。日本人のCLL及びATL患者に本剤15、20、25mg/m2を1日1回30分点滴静注5日間連日投与したとき、投与1日後までに投与量の29~42%が2F-ara-Aとして尿中に排泄された。また、5日間連日投与したとき、2F-ara-Aの尿中排泄率は1日当りの投与量の29~64%であった1)。
4. 腎機能低下患者における動態
腎機能低下患者(米国人癌患者、血清クレアチニン濃度≧1.5mg/dL又はクレアチニンクリアランス<70mL/分)に本剤80~260mg/m2を単回静脈内投与したとき、血漿中2F-ara-A濃度の全身クリアランスは腎機能の正常な患者に比して低下した5)。さらに、腎機能低下患者(米国人白血病患者、クレアチニンクリアランス<70mL/分)に5日間連日点滴静注したとき、血漿中2F-ara-A濃度の全身クリアランスとクレアチニンクリアランスには正の相関関係が認められた。また、AUCは、腎機能低下度がより大きい患者では腎機能の正常な患者に比して最大約2倍まで増加した6)。
これらのことから、腎機能低下患者では、血漿中2F-ara-Aの曝露量を腎機能の正常な患者と等しくするために、腎機能の低下の程度(クレアチニンクリアランス:30~70mL/分)に応じて投与量を減量する必要があると考えられる。
[注:本剤の慢性リンパ性白血病、低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫に対する承認用量は1日量20mg/m2(体表面積)]
臨床成績
1. 国内での臨床試験成績
慢性リンパ性白血病において、総症例25例を対象に本剤20mg/m2/日5日間投与及び休薬23日間(計28日間)を1クールとして最大6クール実施する国内臨床試験が行われた。奏効率(完全寛解及び部分寛解)は40%(10/25例;95%信頼区間:20.2-59.4%)であった。
2. 外国での臨床試験成績注)
低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫において、総症例47例を対象に本剤25mg/m2/日5日間投与及び休薬23日間(計28日間)を1クールとし、奏効後にさらに2クール繰り返して最大10クールを実施する外国臨床試験が行われた。奏効率(完全寛解及び部分寛解)は55.3%(26/47例;90%信頼区間:42.3-67.8%)であった。また、無増悪生存期間(治療開始から増悪が記録された日までの期間)の中央値は10.9ヵ月(95%信頼区間[8.8-19.3ヵ月])であった。
[注:本剤の低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫に対する承認用量は1日量20mg/m2(体表面積)]
薬効薬理
1. 作用機序
DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼなどを阻害し、DNA及びRNA合成並びにDNA修復を阻害することにより、増殖細胞及び静止細胞のいずれにも抗腫瘍効果を発揮する。また、リンパ球減少に伴う免疫抑制作用を有する7~12)。
2. 抗腫瘍効果
種々の培養ヒト白血病細胞株を用いた腫瘍選択性試験において、骨髄性白血病細胞に比べ慢性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病及び成人T細胞白血病・リンパ腫細胞で強い増殖阻害作用を示した13)。非ホジキンリンパ腫については、患者由来細胞及び株化細胞に対して増殖抑制作用を示し、マントル細胞リンパ腫患者から採取した細胞においてアポトーシス増強作用を示した14~16)。(in vitro)
マウスL1210白血病細胞又はヒトJOK-1白血病細胞を腹腔内移植したマウスにおいて、静脈内投与(L1210、JOK-1)、経口投与(JOK-1)ともに延命効果を示した17~19)。(in vivo)
有効成分に関する理化学的知見
構造式
一般名
フルダラビンリン酸エステル(Fludarabine Phosphate)〔JAN〕
化学名
(+)-2-Fluoro-9-(5-O-phosphono-β-D-arabinofuranosyl)-9H-purin-6-amine
分子式
C10H13FN5O7P
分子量
365.21
性状
本品は白色の結晶性の粉末である。
本品はN,N-ジメチルホルムアミドに溶けやすく、水又は0.1mol/L塩酸試液に溶けにくく、エタノール(95)又はジエチルエーテルにほとんど溶けない。
本品は吸湿性である。
承認条件
●貧血又は血小板減少症を伴う慢性リンパ性白血病
本剤の未治療例及び増量時の臨床的有効性及び安全性を確認するため、適切な臨床試験を行い、その結果を含めた市販後調査結果を報告すること。
包装
1バイアル
主要文献及び文献請求先
主要文献
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Di Gaetano, N. et al.:Br. J. Haematol. 114:800(2001)[FDR0014]
16)
Lathan, B. et al.:Eur. J. Cancer Clin. Oncol. 24:1891(1988)[FDR0013]
17)
社内資料(in vivo抗腫瘍効果, 1987)[FDR-03]
18)
Bai, L. et al.:Oncol. Rep. 7:33(2000)[FDR0018]
19)
社内資料(in vivo抗腫瘍効果, 1998)[FDR-04]
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