C型慢性肝炎治療薬
MSD株式会社
「バニヘップカプセル150mg」【承認】
(一般名 バニプレビル)
C型慢性肝炎治療に、インターフェロン(皮下注射)とリバビリン(経口剤)の併用療法にさらに併用する経口剤としてのプロテアーゼ阻害剤で、新たにMSDの「バニヘップカプセル」(一般名:バニプレビル)が11月下旬に薬価収載となる。2011年11月に初登場した田辺三菱製薬のテラビック錠(テラプレビル)は、リバビリンを最類似薬として有用性加算Ⅰで40%が算定された。2番手、13年11月のヤンセンファーマのソブリアードカプセル(シメプレビル)は、テラビック錠で起こる重篤な皮膚障害が見られないことが評価され有用性加算Ⅱで5%加算となった。バニヘップカプセルの薬価は、ソブリアードと1日薬価で同額、150mg1カプセルでは3280.70円になると予想される。
バニヘップカプセルは、先行したテラビック錠には添付文書の「警告」欄に記載されるほどの重篤な皮膚障害がある中で出てきた新たなプロテアーゼ阻害剤として厚労省が優先審査の対象としたものだった。
ただし、審査報告書によると、比較試験をしたわけではないが、MSDはシメプレビルと同程度の有効性と安全性があると主張、厚労省もほぼ認めている。結局、医薬品としての評価は、シメプレビルと同程度ということになる。一方、臨床上の意義としては、新たな選択肢が増えたということ。
従って、薬価算定上の有用性加算には該当せず、最類似薬と見られるソブリアードカプセルと1日薬価で同額の算定になるとみられる。
ソブリアードカプセルは現在、100mg1カプセルが1万3122.80円。1日1回服用だから、これがそのまま1日薬価である。これに対しバニヘップカプセルは1カプセル150mgで、1回300mgを1日2回、つまり1日600mg服用する。この600mgで1万3122.80円とすることになり、150mg1カプセルはその4分の1、3280.70円と予想される。
バニヘップカプセルは2カプセル(300mg)を1日2回服用するのに対し、ソブリアードカプセルは1日1回1カプセルであることから、患者にとってはソブリアードカプセルの方に利があるように見えるが、MSDはリバビリン製剤のレベトールを持つ強みがあり、それを武器に追い上げを図ることになろう。
薬価収載時の中医協資料では、ソブリアードカプセルはピーク時を2年度とし、予測投与患者数1.6万人、予想売上高は180億円としていた。バニヘップカプセルがどのような予想を立てるか、注目されるところだ。
先行したテラビック錠を見ると、2011年の薬価収載時の予想はソブリアードカプセルと同じく2年度をピークとして予測投与患者数は1.6万人だった。予想売上高も171億円でほぼ同じだ。これはソブリアードカプセルがテラビック錠にならったと見た方が良いかもしれない。
しかし、テラビック錠は、発売2年度の2012年度が51億円にとどまり、翌13年度には10億円に落ち込んでしまった。もはや、テラビック錠は市場での優位性はなくなったようだ。ただ、テラビック錠が登場したことで、これだけの高薬価が算定され、それがバニヘップカプセルにもつながっている。
すでに、インターフェロンフリーの経口剤のみでの治療法が登場しているが、武蔵野赤十字病院泉並木副院長は、インターフェロンを使用する治療では耐性の問題は起きないが経口剤のみでは耐性のリスクがあるとして、C型慢性肝炎治療には高齢者も含めてインターフェロンの使用が基本だと主張、日本肝臓学会ガイドラインでもその考え方に立っているという。
しかし、インターフェロンフリーの経口剤ではさらに強力な効果を持つものが来年には登場すると予想される。泉氏は、それでもインターフェロンの使用が基本だというが、臨床の現場、そして市場がどう動いていくのか、また耐性が本当にできていくのか、それらも注目点だ。
-
C型慢性肝炎治療薬 抗ウイルス剤「バニヘップ®」
製品名 |
バニヘップ®カプセル150mg |
一般名 |
バニプレビル |
効能・効果 |
セログループ1(ジェノタイプⅠ(1a)又はⅡ(1b))のC型慢性肝炎における次のいずれかのウイルス血症の改善
(1)血中HCV RNA 量が高値の未治療患者
(2)インターフェロンを含む治療法で無効又は再燃となった患者
|
用法・用量 |
本剤は、ペグインターフェロン アルファ-2b(遺伝子組換え)及びリバビリンと併用すること。
-
血中HCV RNA 量が高値の未治療患者、あるいはインターフェロンを含む治療法で再燃となった患者に使用する場合:通常、成人にはバニプレビルとして1回300mgを1日2回、12週間経口投与する。
-
インターフェロンを含む治療法で無効となった患者に使用する場合:通常、成人にはバニプレビルとして1回300mgを1日2回、24週間経口投与する。
|
承認申請日 |
2013年12月24日 |
承認取得日 |
2014年9月26日 |