小児等への投与
小児等に対する安全性は確立していない(使用経験が少ない)。
過量投与
症状・徴候
外国において、シメチジン20gから40gを投与後に意識喪失等の重篤な中枢神経症状が発現した症例、及び40g以上のシメチジンを単回経口服用した成人での死亡症例の報告がある。日本では1回50錠(10g)、外国では100錠(20g)までの過量投与の報告があるが、特に重大な影響はみられなかった。
処置
催吐、胃洗浄等を行うとともに適切な療法を行うこと。
適用上の注意
薬剤交付時
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。
(PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔を起こして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することが報告されている。)
その他の注意
1.
動物の毒性試験で弱い抗アンドロジェン作用に基づく前立腺及び精のう重量の減少が報告されている。
2.
ラットに24ヵ月投与した毒性試験で良性の精巣の間細胞腫の発生が増加したとの報告がある。
3.
本剤の投与が胃がんによる症状を隠蔽することがあるので、悪性でないことを確認のうえ投与すること。
薬物動態
1. 血中濃度
(1) 健常人
健常人に経口投与した場合、消化管からの吸収は良好であり、投与後約2時間で最高血中濃度に達する。血中からの半減期は経口、静脈内、筋肉内投与とも約2時間であり、いずれの投与経路でも大部分が24時間以内に尿中に排泄される。7)また、連続経口投与しても血中濃度のパターンに変化はみられず、蓄積する傾向は認められていない。8)
(2) 腎障害患者(外国人のデータ)
腎障害を有する患者にシメチジンを200mg経口投与した場合、血清クレアチニン値正常者と比較して、血漿からの消失半減期の延長と血中濃度の上昇がみられた。
(3) 透析患者(外国人に静脈内投与したデータ)
シメチジンは血液透析により除去される9)が、腹膜透析による除去率はわずかであった。10)
2. 乳汁中移行(外国人のデータ)
患者に1回400mg経口投与した試験で乳汁中への移行が認められている。11)
3. 薬物相互作用(外国人のデータ)
シメチジンは、in vitro試験においてヒト型P-450分子種を非特異的に阻害するが、特にCYP3A4とCYP2D6に対して強い阻害効果を有することが報告されている。12)
臨床成績
1. 消化性潰瘍(胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃・十二指腸共存潰瘍、吻合部潰瘍)
一般臨床試験において本剤1日800mgの経口投与は全般改善度91.5%(1,320/1,443例)、内視鏡的治癒率78.5%(1,048/1,335例)と高い効果を示した。
2. 胃炎
急性胃炎又は慢性胃炎の急性増悪期を対象とした一般臨床試験において、本剤1日400mgの経口投与は2週後の自・他覚症状総合改善度82.0%(146/178例)、内視鏡所見総合改善度75.4%(135/179例)と早期より高い効果を示した。また二重盲検比較試験(タガメット錠)によって本剤の有用性が認められている。13)~18)
3. 上部消化管出血
(1) 止血効果
主として1日4回(200mg/1回)静脈内投与により3日以内の止血率は56.5%(35/62例)、7日以内は71.0%(44/62例)であり、従来の薬剤の効果を有意に上回る止血効果を示した。19)
(2) 止血維持効果
止血後の本剤1日800mgの経口投与(タガメット錠)は止血維持率91.8%(67/73例)と良好な効果が認められた。19),20)
(3) 止血後の病変治癒効果
タガメット錠は上部消化管出血の原因となった病変(消化性潰瘍、ストレス潰瘍、出血性胃炎)に対しても、通常の消化性潰瘍とほぼ同程度の治癒効果を示した。19),20)
4. 逆流性食道炎
一般臨床試験において本剤1日800mgの経口投与は自・他覚症状総合改善度87.5%(63/72例)、内視鏡所見総合改善度71.2%(47/66例)と高い効果を示した。21)~23)
5. Zollinger-Ellison症候群
タガメット錠はZollinger-Ellison症候群に対して、自・他覚症状の改善及び内視鏡所見において有用性が認められた。
薬効薬理
1. 胃酸分泌抑制作用
(1) 基礎分泌
200mg経口投与により投与後1~3時間の2時間分泌量は91.2%抑制される。24)
(2) テトラガストリン、ベタゾール及びインスリン刺激分泌
200mg経口投与により、テトラガストリン4μg/kg、ベタゾール1mg/kg、インスリン0.1U/kg筋注投与による刺激分泌は投与後1~3時間の2時間分泌量でそれぞれ79.1%、67.8%、79.5%抑制される。25)また、同様の試験において400mg経口投与は200mg経口投与より強くテトラガストリン刺激分泌を抑制する。26)
(3) *食餌刺激分泌
流動蛋白食刺激による刺激分泌は200mg経口投与により最初の1時間で分泌量が85.7%、次の1時間で64.3%抑制される。同じ試験条件でアトロピン硫酸塩水和物0.5mg筋注による抑制率は、それぞれ48.8%及び27.1%である。27)400mg経口投与は朝食及び昼食に相当する2回のブイヨン刺激に対して、いずれも明らかに抑制し、その効果持続は少なくとも8時間であった(健常人)。28)
(4) 夜間分泌
午後11時~午前6時までの夜間分泌量は200mg経口投与で71.7%、300mg経口投与で94.0%抑制され、酸分泌抑制作用の持続時間は200mgで4~5時間、300mgで6~7時間である。29)
(5) 24時間分泌
24時間の胃液の平均水素イオン濃度は、800mg(200mg×4回)経口投与で55%抑制され、30)また、800mg(400mg×2回)の経口投与でも、同様に24時間分泌は良好にコントロールされる。31)いずれの用法においても昼間より夜間の効果が顕著である。
2. ペプシン分泌抑制作用
テトラガストリン、ベタゾール、インスリン及び食餌刺激分泌においてペプシン分泌は200mg経口投与により約55~67%抑制される。25),32) 夜間分泌における抑制率は200mg経口投与で53.5%、300mg経口投与で81.4%である。29)
3. 長期投与に伴う酸分泌機能の変動
酸分泌機能は、800~1,600mg/日、約1~8.5ヵ月の経口投与で、投与前後において有意な変化は認められていない。33)また、シメチジン投与中止に伴うacid reboundは認められていない。34)
4. 血中ガストリン