性肺炎・肺線維症を起こすことがあるので観察を十分に行い、肺胞気動脈血酸素分圧較差(A-aDo2)、動脈血酸素分圧(Pao2)、一酸化炭素拡散能(DLco)、又は胸部レントゲン写真などの検査で異常が認められた場合(重要な基本的注意:1.-(3)参照)、あるいは咳嗽、労作性呼吸困難、捻髪音(ラ音)等の肺症状があらわれた場合は、直ちに投与を中止し、副腎皮質ホルモンの投与と適切な抗生物質等による治療を行うこと。
2. ショック
(0.1%未満)
ショックを起こすことがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。(悪性リンパ腫の患者に対する1~2回目の投与時に発現することが多いので、初回及び2回目の投与量を5mg(力価)以下の量で開始し、急性反応が起こらないことを確かめた後に通常の用量に増量すること。)
3. 出血
(2%)
癌病巣が急速な壊死を起こし、そのために出血することがあるので注意すること。
その他の副作用
過敏症注1)
(1~10%未満)
発疹、蕁麻疹、発熱を伴う紅皮症
皮膚
(10%以上又は頻度不明)
脱毛、皮膚肥厚、色素沈着、爪の変形・変色、皮膚の強皮症様変化、scratch dermatitis
消化器
(10%以上又は頻度不明)
食欲不振、悪心・嘔吐、口内炎
消化器
(1~10%未満)
口角炎
消化器
(1%未満)
下痢
肝臓
(1%未満)
肝障害
泌尿器
(1%未満)
乏尿、排尿痛、頻尿、残尿感
**血液
(10%以上又は頻度不明)
貧血、血小板減少
血液
(1%未満)
白血球減少
精神・神経系
(1~10%未満)
頭痛
精神・神経系
(1%未満)
めまい
投与部位 静注
(1%未満)
静脈壁の肥厚・狭窄注2)
投与部位 筋注、局注
(1%未満)
硬結
その他
(10%以上又は頻度不明)
発熱注3)、倦怠感
その他
(1%未満)
腫瘍部位の疼痛
その他の副作用の注意
注1) このような症状があらわれた場合には投与を中止すること。
注2) このような場合は投与部位を変更するか、筋肉内注射すること。
注3) 発熱は投与後4~5時間あるいはさらに遅れて発現することがある。発熱と1回投与量との間には用量反応性があるので、発熱が強い場合は投与量を減量し、投与間隔を短縮するか、本剤投与前後に抗ヒスタミン剤、解熱剤を投与するなど適切な処置を行うこと。
高齢者への投与
60歳以上の高齢者では、間質性肺炎又は肺線維症が発現しやすいので慎重に投与すること。
[間質性肺炎又は肺線維症等の重篤な肺症状の発現率は、50歳未満5.9%、50歳代8.1%、60歳代10.9%、70歳以上15.5%と年齢が高くなるに従い高かった。]
妊婦、産婦、授乳婦等への投与
1.
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、投与しないことが望ましい。
[動物実験(マウス、ラット)で催奇形作用が報告されている。]
2.
授乳中の婦人に投与することを避け、やむを得ず投与する場合には授乳を中止させること。
[授乳中の投与に関する安全性は確立していない。]
小児等への投与
小児に投与する場合には、副作用の発現に注意し、慎重に投与すること。
適用上の注意
1. 静脈内投与時:
血管内投与により血管痛を起こすことがあるので、注射濃度、注射速度に十分注意すること。静脈内に投与する場合には、できるだけ緩徐に投与すること。
2. 筋肉内投与時:
筋肉内に投与する場合には、組織・神経などへの影響を避けるため下記の点に注意すること。
(1)
筋肉内投与により、投与部位の硬結をきたすことがある。なお、特に同一部位への反復注射は行わないこと。また、新生児、低出生体重児、乳児、小児には特に注意すること。
(2)
神経走行部位を避けるよう注意すること。
(3)
注射針を刺入したとき、激痛を訴えたり、血液の逆流をみた場合は、直ちに針を抜き、部位をかえて注射すること。
その他の注意
1.
外国で本剤と他の抗悪性腫瘍剤との併用により、心筋梗塞、脳梗塞等が発現したとの報告がある。
2.
動物実験(ラット)の皮下投与において、線維肉腫・腎癌が認められたとの報告がある。
薬物動態
〈薬物動態・代謝〉2)
体内動態は特徴的で、主成分のブレオマイシンA2は皮膚によく分布する。各組織に分布したブレオマイシンの生物活性を測定すると、皮膚、肺、腎及び膀胱では活性型であるが、肝、脾などの他の臓器では不活化されており、これらの結果から本薬が皮膚がん、頭頸部がんに特に効果を示し造血器障害のないことが証明された。
成人に15mg(力価)を静注するとき、血中濃度は直後に3μg/mL、1時間後に<0.5μg/mLとなる。筋注では最高血中濃度は静注時の約1/3で、以後ゆるやかに減少する。尿中排泄は24時間までに静注で38.3%、筋注で19.2%であった。陰茎がん患者3名に15mg(力価)を静注後30~37分後に手術をするとき、血中濃度0.69~0.94μg/mL、腫瘍内濃度0.08~0.49μg/gが認められ、睾丸腫瘍患者1例で総量300mg(力価)静注、7日後に手術したとき、皮膚に430μg/g、腫瘍内に4μg/gが認められた。未変化体としての尿中排泄率は68%である。全身クリアランス、分布容積、血中消失半減期はそれぞれ、1.1mL/min/kg、0.27L/kg、3.1時間である。
〈血中濃度〉3)
癌患者4例にブレオマイシン15mg(力価)を静注又は筋注して得られる血中濃度は下図のとおりである。
臨床成績
1. 国内臨床試験成績
疾患別の有効率は以下のとおりであった( 表1参照 )。
2. 海外臨床成績
精巣腫瘍、精巣腫瘍以外の胚細胞腫瘍(卵巣、性腺外)及び悪性リンパ腫に対して本剤を含む併用化学療法( BEP療法、ABVD療法等 )が汎用されており、これら併用化学療法における有効率は次のとおりである( 表2参照 )。
3. 再評価結果(1989年)
疾患別の有効率は以下のとおりであった( 表3参照 )。皮膚癌で承認時に比し有効率は高かったが、承認後は他剤併用が主であった