血液凝固能検査等出血管理を十分行いつつ使用すること。
3.ヘパリンによる抗凝固作用を急速に中和する必要がある場合には、プロタミン硫酸塩を投与するなど適切な処置を行うこと。
4.本剤投与後にヘパリン起因性血小板減少症 (HIT: heparin-induced thrombocytopenia) があらわれることがある。HITはヘパリン-血小板第4因子複合体に対する自己抗体 (HIT抗体) の出現による免疫学的機序を介した病態であり、血小板減少と重篤な血栓症 (脳梗塞、肺塞栓症、深部静脈血栓症等) を伴うことが知られている。本剤投与後は血小板数を測定し、血小板数の著明な減少や血栓症を疑わせる異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。また、投与終了数週間後に、HITが遅延して発現したとの報告もある。(「副作用 重大な副作用」の項2.参照)
相互作用
他の薬剤との相互作用は、可能なすべての組合せについて検討されているわけではない。
併用注意
(併用に注意すること)
薬剤名等
抗凝血剤
臨床症状・措置方法
本剤の作用が出血傾向を増強するおそれがある。
機序・危険因子
本剤の抗凝血作用と血液凝固因子の生合成阻害作用により相加的に出血傾向が増強される。
薬剤名等
血栓溶解剤
(ウロキナーゼ、t-PA製剤等)
臨床症状・措置方法
本剤の作用が出血傾向を増強するおそれがある。
機序・危険因子
本剤の抗凝血作用とフィブリン溶解作用により相加的に出血傾向が増強される。
薬剤名等
血小板凝集抑制作用を有する薬剤
(アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン塩酸塩等)
臨床症状・措置方法
本剤の作用が出血傾向を増強するおそれがある。
機序・危険因子
本剤の抗凝血作用と血小板凝集抑制作用により相加的に出血傾向が増強される。
薬剤名等
テトラサイクリン系抗生物質
強心配糖体
(ジギタリス製剤)
ニトログリセリン製剤
臨床症状・措置方法
本剤の作用が減弱するおそれがある。
機序・危険因子
機序不明
薬剤名等
**筋弛緩回復剤
(スガマデクスナトリウム)
臨床症状・措置方法
本剤の抗凝固作用が増強されるおそれがあるので、患者の状態を観察するとともに血液凝固に関する検査値に注意すること。
機序・危険因子
作用機序は不明であるが、スガマデクスナトリウム4mg/kgと抗凝固剤の併用中に活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)又はプロトロンビン時間(PT)の軽度で一過性の延長が認められている。
副作用
本剤は使用成績調査等の副作用発現頻度が明確となる調査を実施していない。
重大な副作用
1. **ショック、アナフィラキシー
(頻度不明)
ショック、アナフィラキシーが起こることがあるので、観察を十分に行い、血圧低下、意識低下、呼吸困難、チアノーゼ、蕁麻疹等の異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
2. 血小板減少、HIT等に伴う血小板減少・血栓症
(頻度不明)
本剤投与後に著明な血小板減少があらわれることがある。ヘパリン起因性血小板減少症 (HIT) の場合は、著明な血小板減少と脳梗塞、肺塞栓症、深部静脈血栓症等の血栓症やシャント閉塞、回路内閉塞等を伴う。本剤投与後は血小板数を測定し、血小板数の著明な減少や血栓症を疑わせる異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
3. 出血
(頻度不明)
抗血液凝固療法で1,000単位/mLのヘパリンナトリウム注射液を投与した場合では、脳出血、消化管出血、肺出血、硬膜外血腫、後腹膜血腫、腹腔内出血、術後出血、刺入部出血等重篤な出血があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には本剤を減量又は中止し、適切な処置を行うこと。なお、血液凝固能が著しく低下し、抗凝血作用を急速に中和する必要がある場合には、プロタミン硫酸塩を投与する。
その他の副作用
1) 本剤の投与により、以下のような副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、発現した場合には、適切な処置を行うこと。
注射部位
(頻度不明)
血管痛
肝臓
(頻度不明)
ALT(GPT)上昇、総ビリルビン上昇
その他
(頻度不明)
PT低下・延長、APTT延長、フィブリノーゲン上昇
2) 抗血液凝固療法で1,000単位/mLのヘパリンナトリウム注射液を投与した場合では、以下のような副作用が知られている。
過敏症注)
(頻度不明)
そう痒感、蕁麻疹、悪寒、発熱、鼻炎、気管支喘息、流涙等
皮膚
(頻度不明)
脱毛、白斑、出血性壊死等
肝臓
(頻度不明)
AST(GOT)、ALT(GPT)の上昇等
長期投与
(頻度不明)
骨粗鬆症、低アルドステロン症
注) このような場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
高齢者への投与
高齢者では出血の危険性が高まるおそれがあるので、慎重に投与すること。
妊婦、産婦、授乳婦等への投与
妊娠中の投与に関する安全性は確立していない(使用経験がない)。
小児等への投与
低出生体重児、新生児では安全性が確立していない(使用経験が少ない)。
適用上の注意
1.抗ヒスタミン剤は本剤と試験管内で混合すると反応し沈殿を生じることがあるので、本剤使用前後の抗ヒスタミン剤の投与は避けること。
2.治療薬剤とヘパリンが配合不適の場合があるので、静脈内留置ルート内を生理食塩液で十分フラッシングした後、本剤を注入しロックすること。
3.ヘパリンは血液検査結果に影響を及ぼす可能性があるので、留置している同一ルート又は近傍からの採血を避けること。
4.使用後の残液は、同一患者であっても決して使用しないこと。
その他の注意
HIT発現時に出現するHIT抗体は100日程度で消失~低下するとの報告がある。(「原則禁忌」の項 7.、「重要な基本的注意」の項 4. 参照)
薬効薬理
血液凝固系には第Iから第XIIIまでの血液凝固因子やプレカリクレイン、高分子キニノーゲンなどが働いているが、多くの因子がこれらを調節している。これらの調節因子のうち、アンチトロンビンIII(ATIII)がヘパリンにより活性化され、トロンビンをはじめ第IXa~XIIa因子及びカリクレインを阻害することによって、血液凝固を抑制する。1)
有効成分に関する理化学的知見
一般名:
ヘパリンナトリウム (Heparin Sodium)
性状:
白色~帯灰褐色の粉末又は粒で、においはない。水にやや溶けやすく、エタノール (95) 又はジエチルエーテルにほとんど溶けない。
吸湿性である。
構造式:
取扱い上の注意
安定性試験
最終包装製品を用いた加速試験 (40℃、相対湿度75%、6ヵ月) の結果、本剤は通常の市場流通下において3年間安定であることが推測された。2)
包装
*ヘパリ |