動物実験において、ラット[12週齢]及び若齢イヌ[7~8ヵ月齢]で精巣の病理組織学的変化、マウス[11週齢]で精子の異常が認められている。なお、いずれも休薬により回復又は回復傾向が認められている。9)10)
薬物動態
1. 血中濃度 健康成人8例に本剤を1日目は1回1600mgを1日2回、2日目から6日目は1回600mgを1日2回(6日目は1回のみ)経口投与(1600mg/600mg BID)したときの薬物動態パラメータは次のとおりであった。
(表1参照のこと)
なお、AO活性がほとんどないと考えられる健康成人1例に本剤を7日間反復経口投与注6)したとき、投与1日目及び投与7日目の未変化体のAUCの推定値は、それぞれ1452.73μg・hr/mL及び1324.09μg・hr/mLであった。11)
注6)1日目初回は1200mg、1日目2回目は400mg、2日目から6日目は1回400mgを1日2回、7日目は400mgを1回投与した。なお、本剤の承認用法及び用量は、「1日目は1回1600mgを1日2回、2日目から5日目は1回600mgを1日2回経口投与」である。
2. 分布 (外国人データ)
健康成人男性20例に本剤を1日目は1回1200mgを1日2回、2日目から5日目は1回800mgを1日2回経口投与(1200mg/800mg BID)注7)したときの本剤の精液中濃度(幾何平均)は投与3日目及び投与終了後2日目でそれぞれ18.341μg/mL及び0.053μg/mLであり、投与終了後7日目にはすべての被験者で定量下限(0.02μg/mL)未満となった。また、精液/血漿中濃度比(平均値)は投与3日目及び投与終了後2日目でそれぞれ0.53及び0.45であった。
注7)本剤の承認用法及び用量は、「1日目は1回1600mgを1日2回、2日目から5日目は1回600mgを1日2回経口投与」
本剤のヒト血清蛋白結合率は、0.3~30μg/mLの濃度において、53.4~54.4%であった(in vitro、遠心限外濾過法)。
〈参考〉動物でのデータ12)
サルに14C-ファビピラビルを単回経口投与したとき、各組織に広く移行した。各組織の放射能濃度は投与後0.5時間に最高値を示した後、血漿中放射能濃度と平行した推移を示した。投与後0.5時間の肺内放射能濃度の血漿中濃度比は0.51であり、投与後、感染部位と考えられる呼吸器系組織に速やかに移行した。また、投与後0.5時間の腎臓中放射能濃度は血漿中よりも高く、血漿中濃度比は2.66であった。骨を除く各組織の放射能濃度は、投与後24時間までに最高濃度の2.8%以下に低下した。
3. 代謝3) 本剤はチトクロームP-450(CYP)で代謝されず、主にアルデヒドオキシダーゼ(AO)、一部はキサンチンオキシダーゼ(XO)により水酸化体に代謝された。ヒト肝サイトゾルを用いて本剤の代謝を検討した結果、水酸化体の生成は3.98~47.6pmol/mg protein/minであり、AO活性には最大で12倍の個体間差が認められた。また、水酸化体以外の代謝物として、ヒト血漿中及び尿中にグルクロン酸抱合体が認められた。
4. 排泄11) 本剤は主に水酸化体として尿中に排泄され、未変化体はわずかであった。健康成人6例に本剤を7日間反復経口投与注8)したときの最終投与後48時間までの未変化体及び水酸化体の累積尿中排泄率は、それぞれ0.8%及び53.1%であった。
注8)1日目初回は1200mg、1日目2回目は400mg、2日目から6日目は1回400mgを1日2回、7日目は400mgを1回投与した。なお、本剤の承認用法及び用量は、「1日目は1回1600mgを1日2回、2日目から5日目は1回600mgを1日2回経口投与」
5. **肝機能障害患者2) (外国人データ)
軽度及び中等度肝機能障害患者 (Child-Pugh分類クラスA及びB、各6例) に、本剤を1日目は1回1200mgを1日2回、2日目から5日目は1回800mgを1日2回経口投与 (1200mg/800mgBID)注9)したとき、投与5日目のCmax及びAUCは、健康成人に同様の用法及び用量で投与した場合と比べて、軽度肝機能障害患者ではそれぞれ約1.6倍及び約1.7倍、中等度肝機能障害患者ではそれぞれ約1.4倍及び約1.8倍であった。
重度肝機能障害患者 (Child-Pugh分類クラスC、4例) に、本剤を1日目は1回800mgを1日2回、2日目から3日目は1回400mgを1日2回経口投与 (800mg/400mgBID)注9)したとき、投与3日目のCmax及びAUCは、健康成人に同様の用法及び用量で投与した場合と比べて、それぞれ約2.1倍及び約6.3倍であった。
注9)本剤の承認用法及び用量は、「1日目は1回1600mgを1日2回、2日目から5日目は1回600mgを1日2回経口投与」
6. 薬物相互作用3)4) In vitro:本剤はIn vitroで濃度及び時間依存的にAO活性を不可逆的に阻害し、また、濃度依存的にCYP2C8を阻害した。一方、本剤のXOに対する阻害作用は認められず、CYP1A2、2C9、2C19、2D6、2E1及び3A4に対する阻害作用も弱かった。本剤の代謝物である水酸化体のCYP1A2、2C8、2C9、2C19、2D6、2E1及び3A4に対する阻害作用は弱かった。
本剤のCYPに対する誘導作用は認められなかった。
(表2参照のこと)
(表3参照のこと)
薬物動態の表
表1 本剤の薬物動態パラメータ
投与方法 Cmax注2)
(μg/mL) AUC注2)注3)
(μg・hr/mL) Tmax注4)
(hr) t1/2注5)
(hr)
1600mg/600mg BID 1日目 64.56
[17.2] 446.09
[28.1] 1.5
[0.75, 4] 4.8±1.1
1600mg/600mg BID 6日目 64.69
[24.1] 553.98
[31.2] 1.5
[0.75, 2] 5.6±2.3
注2)幾何平均[変動係数%]
注3)1日目はAUC0-∞、6日目はAUCτ
注4)中央値[最小値,最大値]