て十分に説明し理解させ、避妊を徹底するよう指導すること。
[米国において投与中に妊娠した1例で流産の報告がある。]
3.
授乳婦に投与する場合には授乳を中止させること。
[ヒ素は、乳汁中に移行するため授乳中の乳児に対する重篤な副作用の可能性がある。]
小児等への投与
低出生体重児、新生児、乳児、幼児又は小児に対する安全性は確立していない。
過量投与
1. 徴候・症状
重篤な急性ヒ素中毒(例:痙攣、筋脱力感、錯乱状態等)
2. 処置
重篤な急性ヒ素中毒を示唆する症状が発現した場合は、本剤の投与を速やかに中止し、キレート治療等を検討すること。
参考
通常のキレート療法はジメルカプロール1回2.5mg/kgを最初の2日間は4時間ごとに1日6回、3日目には1日4回、以降10日間あるいは回復するまで毎日2回筋肉内注射する。その後、ペニシラミン250mgを経口で最高1日4回(≦1,000mg/day)まで投与してもよい。
適用上の注意
1.
本剤は10mLの使い切りアンプルである。残った溶液をその後の投与に使用しないこと。
2.
投与に際して本剤が血管外に漏出した場合は、直ちに投与を中止し可能な限り局所から残薬を回収すること。
3.
他の薬剤又は輸液と混合しないこと。
その他の注意
変異原性・がん原性・生殖発生毒性
三価のヒ素は染色体異常に起因する遺伝毒性を誘発する3)。疫学的にヒトに対するヒ素の発がん作用が知られているが、ヒ素の発がんメカニズムの詳細については不明である。生殖発生毒性に関しては、ヒ素は胎盤を通過することが知られており、母体に影響を及ぼす投与量において、奇形を含む発育毒性を誘発すると考えられている。また、動物で雄性生殖能に及ぼす影響が認められている。
薬物動態
1. *血漿中濃度注1)
(1)日本人14名の再発又は難治性APL患者での治療研究において、本剤0.15mg/kgを1日1回最大60日間反復投与(2時間の持続注入)した12名の患者でのヒ素の形態別(無機ヒ素及びメチル化ヒ素)血漿中濃度を分離定量した。初回投与後、無機ヒ素[ヒ素(三価)+ヒ素(五価)]は投与終了直後にCmax(平均22.6 ng/mL;米国での測定値に近似)に達し、その後二相性に消失したが、代謝物のメチル化ヒ素(メチルアルソン酸及びジメチルアルシン酸)は遅れて血中に出現し、24時間まで徐々に上昇した。また、反復投与期間中の無機ヒ素のCmax値はほぼ一定で推移したが、メチル化ヒ素濃度は投与回数に伴って上昇した4)。無機ヒ素の薬物動態パラメータは以下のとおりであった。
(薬物動態の表1参照)
(2)米国のPhaseI/II試験で12例の再発又は難治性APL患者に本剤0.06~0.20mg/kgを投与した時の総ヒ素の薬物動態パラメータは以下のとおりであった。
(薬物動態の表2参照)
注1)本剤の承認された1回用量は0.15mg/kgである。
2. 代謝
三酸化二ヒ素の代謝はヒ素(五価)←→ヒ素(三価)→メチルアルソン酸→ジメチルアルシン酸である5)。メチル化の主な部位は肝臓である6)。
3. 分布
ヒ素は血流の多い組織に迅速に分布し、肝臓、腎臓、脾臓等で高濃度となる。爪や毛髪には他の組織に比べてより長期にわたって残存するが、顕著な蓄積を示す臓器は認められない。
4. *排泄
日本人の再発又は難治性APL患者に本剤0.15mg/kgを1日1回反復投与し、ヒ素の形態別の尿中排泄率(% of dose)を測定した。投与初日(0~24hr)の排泄率は、ヒ素(三価)とヒ素(五価)でそれぞれ約6%、メチルアルソン酸とジメチルアルシン酸で約3~5%であり、無機ヒ素及びメチル化ヒ素の総排泄率は約20%であった4)。
5. *薬物相互作用
他の薬剤との薬物相互作用については評価されていない。三酸化二ヒ素を代謝する酵素はメチルトランスフェラーゼであり、チトクロームP450に属する酵素ではない。三酸化二ヒ素は、15μg/mLの濃度でヒト肝ミクロソームの主なP450分子種を阻害しなかった。
薬物動態の表
表1
Day Cmax
(ng/mL) Tmax
(hr) t1/2
(hr) AUC0-t
(ng・hr/mL) AUC0-∞
(ng・hr/mL)
初日注2) 22.6±11.4 1.9±0.7 15.4±9.2 138.6±32.4 211.8±55.1
4週後注3) 23.2±10.2 2.0±0.3 24.2±12.5 233.3±92.8 474.8±192.6
注2)平均値±標準偏差(n=11~12)
注3)平均値±標準偏差(n=6)
表2
投与量
(mg/kg) Cmax
(ng/mL) tmax
(hr) t1/2
(hr) AUC0-24hr
(ng・hr/mL)
0.15±0.04 27.4±9 3.2±1.9 100±72 450±119
平均値±標準偏差
臨床成績
米国のPhseIII試験7)では40例の再発又は難治性APL患者に、国内の治療研究8)では14例のトレチノイン難反応性/再発・難治APL患者に0.15mg/kgを投与した。
(臨床成績の表参照)
また、米国のPhaseI/II試験9)では0.06~0.20mg/kgが12名の再発又は難治性APL患者に投与され、完全寛解率は75%(9/12)※であった。
臨床成績の表
完全寛解率
米国PhaseIII試験 70%(28/40)※
国内治療研究 78%(11/14)
※FDAによる再解析結果
薬効薬理
本剤の作用メカニズムは完全には解明されていない。三酸化二ヒ素はin vitroでヒト前骨髄球性白血病細胞NB4の形態学的変化、アポトーシスに特徴的なDNA断片化を引き起こす10)。また、三酸化二ヒ素は融