神経系の副作用を引き起こすことが考えられるので、腎障害患者に過量投与された場合は血液透析を用いて体内から除去すること。
適用上の注意
1. 調製時
溶解後は速やかに使用すること(特にグルコース、フルクトース、キシリトール、マルトース等の糖質含有溶解液に溶解した場合にはアンピシリンの力価が低下するので、速やかに使用し、保存しないこと)。
2. 投与時
静脈内投与により、血管痛、血栓又は静脈炎を起こすことがあるので、注射部位、注射方法等に十分注意し、注射速度をできるだけ遅くすること。
3.
配合変化としてアンピシリンとアミノグリコシド系抗生物質製剤(硫酸ジベカシン、硫酸アルベカシン等)を混合すると力価が低下したとの報告がある。
併用に際しては投与部位を変える及び1時間以上投与間隔をあけるなど投与方法に注意すること。
薬物動態
1. 血清中濃度
(1) 成人6)
健常成人6名に本剤0.75g(力価)又は1.5g(力価)をクロスオーバー法により静注した時のスルバクタム及びアンピシリンの血清中濃度の推移(平均値)は下図のとおりであり、静注後5分で、0.75g(力価)投与時スルバクタム18.7μg/mL、アンピシリン39.2μg/mL、1.5g(力価)投与時スルバクタム40.0μg/mL、アンピシリン78.8μg/mLであった。
スルバクタムとアンピシリンの濃度半減期(t1/2)はいずれも約1時間であり、両薬物の血中動態は良く近似していた。
(2) 小児2)
小児患者16例に本剤30mg(力価)/kgを静注した時の血清中濃度推移は下図のとおりであり、スルバクタム及びアンピシリンのt1/2は約1時間と、小児の場合の血中動態も成人の場合とほぼ同様であった。
2. 尿中排泄及び代謝
健常成人6名に本剤0.75g(力価)又は1.5g(力価)を静注した時の投与後0~1時間の尿中濃度(平均値)は、0.75g投与でスルバクタム約2,000μg/mL及びアンピシリン約4,000μg/mL、1.5g投与でスルバクタム約4,000μg/mL及びアンピシリン約10,000μg/mLと、高い値を示した。投与後24時間までのスルバクタム、アンピシリンの累積尿中排泄率は0.75g投与、1.5g投与ともスルバクタム、アンピシリンいずれも約80%であった6)。スルバクタム、アンピシリンともほとんど代謝されず未変化体として主に尿中に排泄される7)。
3. 腎機能障害患者
(1)
海外の報告によれば、中等度ないし高度腎機能が低下している患者(10例)ではスルバクタム及びアンピシリンのt1/2が延長する8,9)。
(2)
日本人市中肺炎患者47例(クレアチニンクリアランス(CLcr):34.6~176mL/min)から得られた222点の血漿中スルバクタム及びアンピシリン濃度データを用いて、母集団薬物動態解析を行った。その結果、腎機能(CLcr)はスルバクタム及びアンピシリンのクリアランスの有意な変動因子であり、腎機能(CLcr)の低下によりスルバクタム及びアンピシリンのt1/2は延長し、濃度-時間曲線下面積(AUC)が上昇する傾向が認められた。腎機能が異なる患者に対して下表のとおり投与間隔を調整したとき、いずれの腎機能障害患者においても同様の最高濃度(Cmax)及びAUCの推定値が得られた10)。
(表1参照)
(3)
ナトリウム摂取制限患者へ投与する場合には、ユナシン-S静注用1.5gにナトリウムが115mg(5mEq)含まれていることに留意すること。
4. 組織内移行
(1)
成人患者に本剤1.5g(力価)を静注した時のスルバクタム及びアンピシリンの胆汁中濃度は、静注後1時間でそれぞれ平均3.6μg/mL、19.8μg/mLであった11)。
(2)
成人患者の喀痰12)、腹腔内滲出液13)、子宮・付属器組織14)、骨盤死腔滲出液14)、並びに小児患者の髄液15)、膿汁16)などへの移行は下表のとおりスルバクタム及びアンピシリンとも良好であることが認められた。
(表2参照)
薬物動態の表
表1
CLcr(mL/min) 投与間隔 スルバクタム
Cmax(μg/mL) スルバクタム
AUC0-48(μg・h/mL) スルバクタム
t1/2(h) アンピシリン
Cmax(μg/mL) アンピシリン
AUC0-48(μg・h/mL) アンピシリン
t1/2(h)
90~60 1日4回、6時間ごと 68.6~74.2 650~861 1.09~1.33 139~151 1260~1670 1.20~1.42
59~30 1日4回、6時間ごと 74.4~85.1 872~1380 1.34~1.96 151~173 1690~2690 1.43~2.02
59~30 1日3回、8時間ごと 73.3~81.5 655~1050 1.34~1.96 149~166 1270~2030 1.43~2.02
29~15 1日2回、12時間ごと 79.5~86.4 718~1120 2.00~3.03 162~176 1400~2190 2.06~3.06
14~5 1日1回、24時間ごと 83.1~90.7 599~1190 3.16~6.28 170~185 1160~2310 3.20~6.27
注):腎機能が異なる患者に本剤3g(力価)を30分かけて点滴静注したときの血漿中スルバクタム及びアンピシリン濃度推移シミュレーションから得られた薬物動態パラメータ(PKパラメータの下限値及び上限値は、それぞれCLcrの区分の上限値及び下限値に対応している)
表2 体液・組織への移行
体液・組織 投与量(力価) 薬物濃度(μg/mL又はμg/g)
スルバクタム 薬物濃度(μg/mL又はμg/g)
アンピシリン
喀痰 3g 2.40 1.50
腹腔内滲出液 1.5g 1.82 2.71
子宮・付属器 1.5g 7