UNASYN-S KIT for Intravenous Use(Ampicillin Sodium/Sulbactam Sodium)ユナシン-Sキット静注用1.5g/ユナシン-Sキット静注用3g
--------------------------------------------------------------------------------
作成又は改訂年月
** 2016年9月改訂(第9版)
* 2015年12月改訂
日本標準商品分類番号
876139
日本標準商品分類番号等
効能又は効果追加承認年月(最新)
2012年8月
国際誕生年月
1983年11月
薬効分類名
β-ラクタマーゼ阻害剤配合抗生物質製剤
承認等
販売名
ユナシン-Sキット静注用1.5g
販売名コード
6139504G1028
承認・許可番号
承認番号
21800AMX10866
商標名
UNASYN-S KIT for Intravenous Use 1.5g
薬価基準収載年月
2006年12月
販売開始年月
2006年12月
貯法・使用期限等
**貯法
室温保存、密封容器
本品は、プラスチック製水性注射剤容器を使用することができる
使用期限
最終年月を外箱等に記載
基準名
**日本薬局方
注射用アンピシリンナトリウム・スルバクタムナトリウム
規制区
処方箋医薬品注)
注)注意-医師等の処方箋により使用すること
組成
1キット中:
上室:有効成分
日局 アンピシリンナトリウム 1g(力価)
日局 スルバクタムナトリウム 0.5 g(力価)
下室:溶解液
日局 生理食塩液 100mL
1つのプラスチック容器に隔壁を設けて、上室に粉末抗生物質、下室に溶解液(生理食塩液)を充填した注射剤。
性状
本剤は白色~帯黄白色の粉末で、キット(プラスチック容器入り)の静注用製剤である。本剤はわずかに特異なにおいがあり、味はわずかに苦く、水又は生理食塩液に溶けやすい。
pH
8.0~10.0〔1.5g(力価)/10mL、水溶液〕
本剤を下記溶解液に溶解したときの浸透圧比は次のとおりである。
溶解液 日局 生理食塩液
濃度 1.5g(力価)/100mL
pH 9.2
浸透圧比注) 約1.3
注):生理食塩液に対する比
販売名
ユナシン-Sキット静注用3g
販売名コード
6139504G2024
承認・許可番号
承認番号
21800AMX10865
商標名
UNASYN-S KIT for Intravenous Use 3g
薬価基準収載年月
2006年12月
販売開始年月
2006年12月
貯法・使用期限等
**貯法
室温保存、密封容器
本品は、プラスチック製水性注射剤容器を使用することができる
使用期限
最終年月を外箱等に記載
基準名
**日本薬局方
注射用アンピシリンナトリウム・スルバクタムナトリウム
規制区分
処方箋医薬品注)
注)注意-医師等の処方箋により使用すること
組成
1キット中:
上室:有効成分
日局 アンピシリンナトリウム 2g(力価)
日局 スルバクタムナトリウム 1g(力価)
下室:溶解液
日局 生理食塩液 100mL
1つのプラスチック容器に隔壁を設けて、上室に粉末抗生物質、下室に溶解液(生理食塩液)を充填した注射剤。
性状
本剤は白色~帯黄白色の粉末で、キット(プラスチック容器入り)の静注用製剤である。本剤はわずかに特異なにおいがあり、味はわずかに苦く、水又は生理食塩液に溶けやすい。
pH
8.0~10.0〔1.5g(力価)/10mL、水溶液〕
本剤を下記溶解液に溶解したときの浸透圧比は次のとおりである。
溶解液 日局 生理食塩液
濃度 3g(力価)/100mL
pH 9.3
浸透圧比注) 約1.7
注):生理食塩液に対する比
禁忌
(次の患者には投与しないこと)
1.
本剤の成分によるショックの既往歴のある患者
2.
伝染性単核症の患者[アンピシリンの投与により発疹が高頻度に発現したとの報告がある。]
原則禁忌
(次の患者には投与しないことを原則とするが、特に必要とする場合には慎重に投与すること)
本剤の成分又はペニシリン系抗生物質に対し過敏症の既往歴のある患者
効能又は効果
<適応菌種>
本剤に感性のブドウ球菌属、肺炎球菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、大腸菌、プロテウス属、インフルエンザ菌
<適応症>
肺炎、肺膿瘍、膀胱炎、腹膜炎
用法及び用量
[肺炎、肺膿瘍、腹膜炎の場合]
通常成人にはスルバクタムナトリウム・アンピシリンナトリウムとして、1日6g(力価)を2回に分け、用時添付の溶解液にて溶解し、静脈内に点滴注入する。なお、重症感染症の場合は必要に応じて適宜増量することができるが、1回3g(力価)1日4回(1日量として12g(力価))を上限とする。
[膀胱炎の場合]
通常成人にはスルバクタムナトリウム・アンピシリンナトリウムとして、1日3g(力価)を2回に分け、用時添付の溶解液にて溶解し、静脈内に点滴注入する。
通常小児にはスルバクタムナトリウム・アンピシリンナトリウムとして、1日60~150mg(力価)/kgを3~4回に分け、用時添付の溶解液にて溶解し、静脈内に点滴注入する。
(溶解操作方法)
(1)
使用直前に外袋を開封する。
(2)
本キットを展開し、アルミカバーを剥がす。
(3)
溶解液部分を手で押して隔壁を開通させ、更に溶解液部分を繰り返し押すことで薬剤を完全に溶解させる。
(4)
溶解完了を確認し、輸液セットを装着する。このとき針を真っ直ぐ刺す。
なお、溶解後は速やかに使用すること。
用法及び用量に関連する使用上の注意
1.
本剤の使用にあたっては、耐性菌の発現等を防ぐため、β-ラクタマーゼ産生菌、かつアンピシリン耐性菌を確認し、疾病の治療上必要な最少限の期間の投与にとどめること。
2.
高度の腎障害のある成人患者に本剤を投与する場合は、本剤の投与量及び投与間隔を調節する等、慎重に投与すること[「慎重投与」及び「薬物動態」の項参照]。
使用上の注意
慎重投与
(次の患者には慎重に投与すること)
<スルバクタムナトリウム・アンピシリンナトリウムに関する注意>
(1)
セフェム系抗生物質に対し過敏症の既往歴のある患者
(2)
本人又は両親、兄弟に気管支喘息、発疹、蕁麻疹等のアレルギー反応を起こしやすい体質を有する患者
(3)
高度の腎障害のある患者[「用法・用量に関連する使用上の注意」及び「薬物動態」の項参照]
(4)
経口摂取の不良な患者又は非経口栄養の患者、全身状態の悪い患者[ビタミンK欠乏による出血傾向があらわれることがあるので観察を十分に行うこと。]
(5)
高齢者[「高齢者への投与」の項参照]
(6)
1歳以下の小児[「小児等への投与」の項参照]
<生理食塩液に関する注意>
(1)
心臓、循環器系機能障害のある患者[循環血液量を増やすことから心臓に負担をかけ、悪化するおそれがある。]
(2)
腎障害のある患者[水分、ナトリウムの過剰投与に陥りやすく、悪化するおそれがある。]
重要な基本的注意
1.
本剤によるショック、アナフィラキシーの発生を確実に予知できる方法がないので、次の措置をとること。
(1)
事前に既往歴等について十分な問診を行うこと。なお、抗生物質等によるアレルギー歴は必ず確認すること。
(2)
投与に際しては、必ずショック等に対する救急処置のとれる準備をしておくこと。
(3)
投与開始から投与終了後まで、患者を安静の状態に保たせ、十分な観察を行うこと。特に、投与開始直後は注意深く観察すること。
2.
本剤の投与に際しては、定期的に肝機能、腎機能、血液等の検査を行うことが望ましい。
3.
1歳以下の小児に投与する場合には、下痢・軟便の発生に注意し、慎重に投与すること[「小児等への投与」の項参照]。
相互作用
スルバクタム、アンピシリンともほとんど代謝されず、未変化体として主に尿中に排泄される[「薬物動態」の項参照]。
併用注意
(併用に注意すること)
1. 薬剤名等
アロプリノール
臨床症状・措置方法
アンピシリンとの併用により、発疹の発現が増加するとの報告がある1)。
機序・危険因子
機序不明だが薬剤性の発疹がアロプリノールとアンピシリンを併用していた67例の入院患者のうち22.4%に認められ、アンピシリン単独服用例の1,257例では7.5%に認められた。またアンピシリンを併用しないアロプリノール服用患者283例のうち2.1%が薬剤性発疹を経験したという報告がある。
2. 薬剤名等
抗凝血薬
臨床症状・措置方法
ペニシリン注射液が血小板の凝集・凝固に影響を与え、出血傾向を増強するおそれがある。
機序・危険因子
抗凝血作用とペニシリン注射液の血小板凝集抑制作用により相加的に出血傾向が増強される可能性がある。
3. 薬剤名等
経口避妊薬
臨床症状・措置方法
アンピシリンとの併用により避妊効果が減弱したとの報告がある。
機序・危険因子
本剤は腸内細菌叢を変化させる可能性があり、それにより経口避妊薬の腸肝循環による再吸収を抑制すると考えられている。
4. 薬剤名等
メトトレキサート
臨床症状・措置方法
ペニシリンとの併用により、メトトレキサートのクリアランスが減少するおそれがある。
機序・危険因子
メトトレキサートの尿細管分泌が阻害され、体内からの消失が遅延し、メトトレキサートの毒性が増強する可能性がある。
5. 薬剤名等
プロベネシド
臨床症状・措置方法
併用により、本剤の血中濃度上昇、血中濃度半減期の延長、本剤の持つ毒性リスクの上昇のおそれがある。
機序・危険因子
プロベネシドの尿細管分泌抑制作用により本剤の排泄が遅延するおそれがある。
副作用
副作用等発現状況の概要
本剤での臨床試験等、副作用発現頻度が明確となる調査は実施していないが、本剤はユナシン-S静注用と有効成分が同一であるため、ユナシン-S静注用の調査結果について以下に示す。
開発時
一般臨床試験及び比較臨床試験合計1,593例中265例(16.64%)に副作用又は臨床検査値異常が認められた。このうち、副作用は66例(4.14%)で、主なものは下痢(1.51%)、発疹(1.38%)、発熱(0.50%)等であった。臨床検査値異常は217例(13.62%)で、主なものはALT(GPT)上昇(6.48%)、AST(GOT)上昇(6.02%)、Al-P上昇(1.62%)等であった。2,3)
市販後における使用成績調査(再審査終了時)
3,566例中269例(7.54%)に副作用又は臨床検査値異常が認められ、主なものは肝機能異常(2.89%)、ALT(GPT)上昇(0.84%)、AST(GOT)上昇(0.81%)、発疹(0.67%)、下痢(0.59%)等であった。
1日用量12g(力価)を投与した一般臨床試験(承認事項一部変更承認時)
中等度から重度の市中肺炎患者を対象に、1日用量12g(力価)を投与した一般臨床試験では47例中10例(21.3%)に副作用又は臨床検査値異常が認められ、主なものはALT(GPT)上昇(10.6%)、AST(GOT)上昇(10.6%)、Al-P上昇(8.5%)、γ-GTP上昇(6.4%)、下痢(4.3%)等であった4)。
重大な副作用
1. ショック、アナフィラキシー
ショック、アナフィラキシーを起こすことがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと(自発報告のため頻度不明)。
2. 中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、急性汎発性発疹性膿疱症
中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群、急性汎発性発疹性膿疱症があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと(自発報告のため頻度不明)。
3. 血液障害
無顆粒球症、貧血(溶血性貧血を含む)(0.38%)、血小板減少(0.19%)等の重篤な血液障害があらわれることがあるので、定期的に検査を行うなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと(無顆粒球症は自発報告のため頻度不明)。
4. 急性腎不全、間質性腎炎
急性腎不全(0.1%未満)、間質性腎炎等の重篤な腎障害があらわれることがあるので、定期的に検査を行うなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと(間質性腎炎は自発報告のため頻度不明)。
5. 偽膜性大腸炎
偽膜性大腸炎等の血便を伴う重篤な大腸炎があらわれることがあるので、腹痛、頻回の下痢があらわれた場合には直ちに投与を中止するなど適切な処置を行うこと(自発報告のため頻度不明)。
6. 肝機能障害
肝機能障害(0.10%)があらわれることがあるので、定期的に検査を行うなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
7. 間質性肺炎、好酸球性肺炎
発熱、咳嗽、呼吸困難、胸部X線異常、好酸球増多等を伴う間質性肺炎(0.1%未満)、好酸球性肺炎があらわれることがあるので、このような症状があらわれた場合には投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと(好酸球性肺炎は自発報告のため頻度不明)。
その他の副作用
次のような副作用が認められた場合には、必要に応じ、減量、投与中止等の適切な処置を行うこと。
1. 皮膚注2)(0.1~1%未満)
発疹、そう痒感
2. 皮膚注2)(0.1%未満)
蕁麻疹
3. 皮膚注2)(頻度不明注1))
多形紅斑
4. 血液注3)(1%以上)
好酸球増多
5. 血液注3)(0.1~1%未満)
白血球減少
6. 肝臓(1%以上)
AST(GOT)上昇、ALT(GPT)上昇
7. 肝臓(0.1~1%未満)
Al-P上昇、LAP上昇、ビリルビン値上昇、γ-GTP上昇
8. 肝臓(0.1%未満)
黄疸
9. 消化器(0.1~1%未満)
下痢・軟便、悪心・嘔吐
10. 消化器(0.1%未満)
腹部不快感
11. 消化器(頻度不明注1))
黒毛舌
12. 中枢神経(頻度不明注1))
痙攣等の神経症状
13. 菌交代(頻度不明注1))
口内炎、カンジダ症
14. その他(0.1~1%未満)
発熱
15. その他(0.1%未満)
ビタミンK欠乏症状(低プロトロンビン血症、出血傾向等)
16. その他(頻度不明注1))
ビタミンB群欠乏症状(舌炎、口内炎、食欲不振、神経炎等)
注1):自発報告のため頻度不明。
注2):発現した場合には投与を中止すること。
注3):定期的に検査を行うなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
高齢者への投与
高齢者には、次の点に注意し、用量並びに投与間隔に留意するなど患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。
(1)
高齢者では一般的に生理機能が低下していることが多く副作用が発現しやすい。
(2)
高齢者ではビタミンK欠乏による出血傾向があらわれることがある。
妊婦、産婦、授乳婦等への投与
1.
アンピシリンの大量(3,000mg/kg/日)投与でラットに催奇形性が報告されているので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
2.
母乳中へ移行することが報告されているので5)、授乳中の婦人には投与しないことが望ましいが、やむを得ず投与する場合には授乳を中止させること。
小児等への投与
1.
低出生体重児に対する安全性は確立していない(使用経験が少ない)。
2.
新生児に対する安全性は確立していない(使用経験が少ない)。
3.
1歳以下の小児では下痢・軟便の発現頻度が高いので、慎重に投与すること。
臨床検査結果に及ぼす影響
1.
*本剤の投与により、ベネディクト試薬、あるいはフェーリング試薬による尿糖検査では偽陽性を呈することがあるので注意すること。
2.
妊婦へのアンピシリン投与により、総結合型エストリオール、エストリオール-グルクロニド、結合型エストロン、エストラジオールの一時的な血清中濃度の減少を呈することがあるので注意すること。
過量投与
β-ラクタム系抗生物質製剤の脳脊髄液中濃度が高くなると、痙攣等を含む神経系の副作用を引き起こすことが考えられるので、腎障害患者に過量投与された場合は血液透析を用いて体内から除去すること。
適用上の注意
1. 調製時
本剤の使用にあたっては、完全に溶解したことを確認し、溶解後は速やかに使用すること。残液は決して使用しないこと。
2. 投与時
静脈内投与により、血管痛、血栓又は静脈炎を起こすことがあるので、注射部位、注射方法等に十分注意し、注射速度をできるだけ遅くすること。
3.
配合変化としてアンピシリンとアミノグリコシド系抗生物質製剤(硫酸ジベカシン、硫酸アルベカシン等)を混合すると力価が低下したとの報告がある。
併用に際しては投与部位を変える及び1時間以上投与間隔をあけるなど投与方法に注意すること。
薬物動態
本剤での臨床試験は実施していないが、本剤はユナシン-S静注用と有効成分が同一であるため、ユナシン-S静注用の成績について以下に示す。
1. 血清中濃度
(1) 成人6)
健常成人6名に0.75g(力価)又は1.5g(力価)をクロスオーバー法により静注した時のスルバクタム及びアンピシリンの血清中濃度の推移(平均値)は下図のとおりであり、静注後5分で、0.75g(力価)投与時スルバクタム18.7μg/mL、アンピシリン39.2μg/mL、1.5g(力価)投与時スルバクタム40.0μg/mL、アンピシリン78.8μg/mLであった。
スルバクタムとアンピシリンの濃度半減期(t1/2)はいずれも約1時間であり、両薬物の血中動態は良く近似していた。
(2) 小児2)
小児患者16例に30mg(力価)/kgを静注した時の血清中濃度推移は下図のとおりであり、スルバクタム及びアンピシリンのt1/2は約1時間と、小児の場合の血中動態も成人の場合とほぼ同様であった。
2. 尿中排泄及び代謝
健常成人6名に0.75g(力価)又は1.5g(力価)を静注した時の投与後0~1時間の尿中濃度(平均値)は、0.75g投与でスルバクタム約2,000μg/mL及びアンピシリン約4,000μg/mL、1.5g投与でスルバクタム約4,000μg/mL及びアンピシリン約10,000μg/mLと、高い値を示した。投与後24時間までのスルバクタム、アンピシリンの累積尿中排泄率は0.75g投与、1.5g投与ともスルバクタム、アンピシリンいずれも約80%であった6)。スルバクタム、アンピシリンともほとんど代謝されず未変化体として主に尿中に排泄される7)。
3. 腎機能障害患者
(1)
海外の報告によれば、中等度ないし高度腎機能が低下している患者(10例)ではスルバクタム及びアンピシリンのt1/2が延長する8,9)。
(2)
日本人市中肺炎患者47例(クレアチニンクリアランス(CLcr):34.6~176mL/min)から得られた222点の血漿中スルバクタム及びアンピシリン濃度データを用いて、母集団薬物動態解析を行った。その結果、腎機能(CLcr)はスルバクタム及びアンピシリンのクリアランスの有意な変動因子であり、腎機能(CLcr)の低下によりスルバクタム及びアンピシリンのt1/2は延長し、濃度-時間曲線下面積(AUC)が上昇する傾向が認められた。腎機能が異なる患者に対して下表のとおり投与間隔を調整したとき、いずれの腎機能障害患者においても同様の最高濃度(Cmax)及びAUCの推定値が得られた10)。
(表1参照)
(3)
ナトリウム摂取制限患者へ投与する場合には、ユナシン-Sキット静注用1.5g及びユナシン-Sキット静注用3gの上室(薬剤部分)にナトリウムがそれぞれ115mg(5mEq)及び230mg(10mEq)含まれていることに留意すること。
4. 組織内移行
(1)
成人患者に1.5g(力価)を静注した時のスルバクタム及びアンピシリンの胆汁中濃度は、静注後1時間でそれぞれ平均3.6μg/mL、19.8μg/mLであった11)。
(2)
成人患者の喀痰12)、腹腔内滲出液13)、子宮・付属器組織14)、骨盤死腔滲出液14)、並びに小児患者の髄液15)、膿汁16)などへの移行は下表のとおりスルバクタム及びアンピシリンとも良好であることが認められた。
(表2参照)
表1
CLcr(mL/min) 投与間隔 スルバクタム
Cmax(μg/mL) スルバクタム
AUC0-48(μg・h/mL) スルバクタム
t1/2(h) アンピシリン
Cmax(μg/mL) アンピシリン
AUC0-48(μg・h/mL) アンピシリン
t1/2(h)
90~60 1日4回、6時間ごと 68.6~74.2 650~861 1.09~1.33 139~151 1260~1670 1.20~1.42
59~30 1日4回、6時間ごと 74.4~85.1 872~1380 1.34~1.96 151~173 1690~2690 1.43~2.02
59~30 1日3回、8時間ごと 73.3~81.5 655~1050 1.34~1.96 149~166 1270~2030 1.43~2.02
29~15 1日2回、12時間ごと 79.5~86.4 718~1120 2.00~3.03 162~176 1400~2190 2.06~3.06
14~5 1日1回、24時間ごと 83.1~90.7 599~1190 3.16~6.28 170~185 1160~2310 3.20~6.27
注):腎機能が異なる患者に本剤3g(力価)を30分かけて点滴静注したときの血漿中スルバクタム及びアンピシリン濃度推移シミュレーションから得られた薬物動態パラメータ(PKパラメータの下限値及び上限値は、それぞれCLcrの区分の上限値及び下限値に対応している)
表2 体液・組織への移行
体液・組織 投与量(力価) 薬物濃度(μg/mL又はμg/g)
スルバクタム 薬物濃度(μg/mL又はμg/g)
アンピシリン
喀痰 3g 2.40 1.50
腹腔内滲出液 1.5g 1.82 2.71
子宮・付属器 1.5g 7.06~15.4 6.60~27
骨盤死腔滲出液 1.5g 11.6~16.4 19.1~21.6
髄液(小児) 100mg/kg 17.2 16.0
膿汁(小児) 66.7mg/kg 1.34 2.66
臨床成績
本剤での臨床試験は実施していないが、本剤はユナシン-S静注用と有効成分が同一であるため、ユナシン-S静注用の成績について以下に示す。
(1) 臨床効果2~4)
一般臨床試験及び比較臨床試験が実施され、疾患別臨床効果は下記のとおりである。
これらの症例のうちブドウ球菌属、大腸菌、プロテウス属、インフルエンザ菌によるβ-ラクタマーゼ高度産生菌検出症例における臨床効果は、肺炎・肺化膿症96.7%(29/30)、腹膜炎88.9%(8/9)、膀胱炎89.2%(33/37)であった。
また、12g/日投与時の肺炎に対する有効率は94.6%(35/37)であった。検出菌別の臨床効果は、肺炎球菌で92.3%(12/13)、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリスで87.5%(7/8)であった。
(表3参照)
(2) 細菌学的効果2~4)
細菌学的検討が行われた1,289株の菌消失率は84.1%(1,084/1,289)でこれを適応菌種に限ると86.9%(423/487)注1)の菌消失率、さらにβ-ラクタマーゼ高度産生株に限ると84.2%(123/146)とほぼ同じ消失率であった。
また、12g/日投与時において細菌学的検討が行われた33株の菌消失率は84.8%(28/33)で、適応菌種に限ると82.8%(24/29)注2)、さらにβ-ラクタマーゼ高度産生株に限ると87.5%(7/8)の菌消失率であった。
すなわち、β-ラクタマーゼ高度産生株に対しても低度産生株や非産生株に対するのと同程度の効果を発揮することが示された。
(表4参照)
表3 疾患別臨床効果
疾患名 成人
3g/日 成人
4.5~6g/日 成人
12g/日 小児
60~150mg/kg/日
肺炎・肺化膿症 162/196(82.7%) 71/84(84.5%) 35/37注)(94.6%) 212/215(98.6%)
膀胱炎 141/200(70.5%) - - 2/2(100%)
腹膜炎 30/36(83.3%) 2/2(100%) - -
注):肺炎のみに対する臨床効果
( ):有効率〔有効以上〕
表4 用量別細菌学的効果
3~6g/日 12g/日
全分離菌 1,084/1,289(84.1%) 28/33(84.8%)
適応菌種 423/487(86.9%)注1) 24/29(82.8%)注2)
β-ラクタマーゼ高度産生株 123/146(84.2%) 7/8(87.5%)
株数
注1):ブドウ球菌属、大腸菌、プロテウス属、インフルエンザ菌
注2):注1)に加えて肺炎球菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス
薬効薬理
1. 抗菌作用
(1)
本剤は、ブドウ球菌属、大腸菌、プロテウス属、インフルエンザ菌のβ-ラクタマーゼ産生・アンピシリン耐性菌及び肺炎球菌に対し、強い抗菌力を示す17~19)。
(2)
本剤は、β-ラクタマーゼ高度産生のブドウ球菌属、大腸菌、又はプロテウス属によるマウス単一感染モデルにおいて、アンピシリンより強い治療効果を示す18)。また、β-ラクタマーゼ高度産生のアンピシリン耐性インフルエンザ菌とアンピシリン感受性肺炎球菌のマウス混合感染モデルにおいてアンピシリンよリ強い治療効果を示す19)。
2. 作用機序
本剤は、スルバクタムがβ-ラクタマーゼのIc、II、III及びIV型を強く、Ia及びV型を軽度に不可逆的に不活化するため20)、アンピシリンがこれらの酵素により加水分解されることを防ぎ、アンピシリン耐性菌にも抗菌力を示す。アンピシリンは、細菌のペプチドグリカン架橋形成を強く阻害して細胞壁合成を妨げ、殺菌的に作用する21)。
有効成分に関する理化学的知見
一般名
アンピシリンナトリウム(Ampicillin Sodium)
略号
ABPC
化学名
Monosodium(2S,5R,6R)-6-[(2R)-2-amino-2-phenylacetylamino]-3,3-dimethyl-7-oxo-4-thia-1-azabicyclo[3.2.0]heptane-2-carboxylate
分子式
C16H18N3NaO4S
分子量
371.39
構造式
力価
アンピシリンナトリウムの力価は、アンピシリン(C16H19N3O4S)としての量を質量(力価)で示す。
性状
アンピシリンナトリウムは白色~淡黄白色の結晶又は結晶性の粉末である。水に極めて溶けやすく、エタノール(99.5)にやや溶けにくい。
一般名
スルバクタムナトリウム(Sulbactam Sodium)
略号
SBT
化学名
Monosodium(2S,5R)-3,3-dimethyl-7-oxo-4-thia-1-azabicyclo[3.2.0]heptane-2-carboxylate 4,4-dioxide
分子式
C8H10NNaO5S
分子量
255.22
構造式
力価
スルバクタムナトリウムの力価は、スルバクタム(C8H11NO5S)としての量を質量(力価)で示す。
性状
スルバクタムナトリウムは白色~帯黄白色の結晶性の粉末である。水に溶けやすく、メタノールにやや溶けにくく、エタノール(99.5)に極めて溶けにくく、アセトニトリルにほとんど溶けない。
取扱い上の注意
1.
製品の品質を保持するため、本品を包んでいる外袋は使用時まで開封しないこと。
2.
次の場合には使用しないこと。
(1)
外袋が破損しているときや溶解液が漏出しているとき。
(2)
隔壁の開通前に薬剤が溶解しているとき。
(3)
薬剤が変色しているときや溶解液が着色しているとき。
3.
容器の液目盛りはおよその目安として使用すること。
包装
ユナシン-Sキット静注用1.5g:10キット
ユナシン-Sキット静注用3g:10キット
主要文献及び文献請求先
主要文献
1)
N Engl J Med 286(10):505,1972 [L19970603005]
2)
Jpn J Antibiot 42(3),1989:SULBACTAM/AMPICILLIN特集Iを中心に集計
3)
Chemotherapy(Tokyo)36(Suppl.8),1988:SULBACTAM・AMPICILLIN論文特集号を集計
4)
社内資料:市中肺炎を対象としたオープン非比較試験 [L20120703013]
5)
Matsuda,S.:Biol Res Pregnancy Perinatol 5(2):57,1984 [L19961115421]
6)
柴 孝也ほか:Chemotherapy(Tokyo)36(Suppl.8):149,1988 [L19961028119]
7)
下岡 釿雄ほか:Chemotherapy(Tokyo)36(Suppl.8):66,1988 [L19961028409]
8)
Blum,R.A.et al.:Antimicrob Agents Chemother 33(9):1470,1989 [L19961115425]
9)
Wright,N.et al.:J Antimicrob Chemother 11(6):583,1983 [L19961206448]
10)
社内資料:市中肺炎患者における母集団薬物動態 [L20120703012]
11)
由良 二郎ほか:Chemotherapy(Tokyo)36(Suppl.8):324,1988 [L19961028311]
12)
林 泉ほか:Chemotherapy(Tokyo)36(Suppl.8):120,1988 [L19961028113]
13)
菊山 成博ほか:Chemotherapy(Tokyo)36(Suppl.8):317,1988 [L19961115414]
14)
張 南薫ほか:Chemotherapy(Tokyo)36(Suppl.8):466,1988 [L19961029403]
15)
関口 隆憲ほか:Jpn J Antibiot 42(3):733,1989 [L19961113429]
16)
佐藤 吉壮ほか:Jpn J Antibiot 42(3):579,1989 [L19961029301]
17)
横田 健ほか:Chemotherapy(Tokyo)36(Suppl.8):1,1988 [L19961028405]
18)
五島 瑳智子ほか:Chemotherapy(Tokyo)36(Suppl.8):13,1988 [L19961028406]
19)
川崎 賢二ほか:Chemotherapy(Tokyo)36(Suppl.8):34,1988 [L19961113427]
20)
横田 健ほか:Chemotherapy(Tokyo)32(Suppl.4):11,1984 [L19961024102]
21)
横田 健ほか:Chemotherapy(Tokyo)33(Suppl.2):10,1985 [L19970530045]
文献請求先
「主要文献」に記載の社内資料につきましても下記にご請求ください。
ファイザー株式会社 製品情報センター
〒151-8589 東京都渋谷区代々木3-22-7
学術情報ダイヤル 0120-664-467
FAX 03-3379-3053
製造販売業者等の氏名又は名称及び住所
製造販売
ファイザー株式会社
東京都渋谷区代々木3-22-7