おそれがある。
機序・危険因子
凝固因子製剤は凝固系を活性化させることにより止血作用を発現する。一方、本剤は線溶系を阻害することにより止血作用を発現する。
副作用
副作用等発現状況の概要
総症例数2,972例中報告された主な副作用は悪心0.07%(2件)、嘔吐0.17%(5件)、食欲不振0.03%(1件)、下痢0.07%(2件)、眠気0.03%(1件)等であった。〔文献集計による(再審査対象外)〕
重大な副作用
1. ショック
頻度不明注)
ショックを起こすことがあるので観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと。
2. **痙攣
頻度不明注)
人工心肺を用いた心臓大血管手術の周術期に本剤を投与した患者において、術後に痙攣があらわれることがある。また、人工透析患者において痙攣があらわれたとの報告がある。観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
注)自発報告又は海外において認められている副作用のため頻度不明。
その他の副作用
1. 過敏症
0.1%未満
そう痒感、発疹等
2. 消化器
0.1~1%未満
悪心、嘔吐
3. 消化器
0.1%未満
食欲不振、下痢
4. 眼
頻度不明注)
一過性の色覚異常(静脈内注射時)
5. その他
0.1%未満
眠気、頭痛
上記の副作用があらわれることがあるので、異常が認められた場合には必要に応じ投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
注)自発報告又は海外において認められている副作用のため頻度不明。
高齢者への投与
一般に高齢者では生理機能が低下しているので減量するなど注意すること。
適用上の注意
1. 静脈内注射時:
ゆっくり静脈内に投与すること(急速に投与すると、まれに悪心、胸内不快感、心悸亢進、血圧低下等があらわれることがある)。
2. 筋肉内注射時:
筋肉内注射にあたっては、組織・神経等への影響を避けるため下記の点に注意すること。
(1)
注射部位については、神経走行部位を避けて慎重に投与すること。
(2)
くりかえし注射する場合には、左右交互に注射するなど、同一部位を避けること。なお、低出生体重児・新生児・乳児・幼児・小児には特に注意すること。
(3)
注射針を刺入したとき、激痛を訴えたり、血液の逆流をみた場合は、直ちに針を抜き、部位をかえて注射すること。
3. 開封時:
アンプルカット時の異物混入を避けるため、エタノール消毒綿等で清拭しカットすること。
その他の注意
イヌに長期・大量投与したところ網膜変性があらわれたとの報告がある。
薬物動態
1. 血中濃度1)
健康成人にトラネキサム酸500mgを単回筋肉内投与又は1,000mgを単回静脈内投与した場合、血漿中濃度推移は次のとおりであった。
トラネキサム酸単回静脈内投与及び単回筋肉内投与時の血漿中濃度推移
2. 分布
参考(動物実験)
マウスに14C-トラネキサム酸を単回静脈内投与及び単回筋肉内投与した場合の組織内分布は、肝、腎、肺で高く、膵、副腎、脾、前立腺、結腸、子宮、心、筋肉がこれに次ぎ、脳では低かった。
3. 代謝、排泄1)
健康成人にトラネキサム酸500mgを単回筋肉内投与又は1,000mgを単回静脈内投与した場合、トラネキサム酸は速やかに吸収され、投与後24時間以内に投与量のそれぞれ80%及び76%が未変化体として尿中に排泄された。
単回静脈内投与及び単回筋肉内投与におけるトラネキサム酸の薬物動態パラメーター
投与量 投与法 Tmax
(hr) Cmax
(μg/mL) t1/2
(hr) Vd
(L)
500mg 筋注 0.5 21.2 2.0 -
1,000mg 静注 - 60.0注) 1.9 42.4
注)投与15分後
臨床成績
1.
抗出血作用
全身性線溶亢進が関与すると考えられる白血病、再生不良性貧血、紫斑病等の出血傾向、及び局所線溶亢進が関与すると考えられる肺出血、鼻出血、性器出血、腎出血、前立腺手術中・術後の異常出血に対する止血効果について、709例を対象とした一般臨床試験の結果、83.8%(594例)に効果が認められた。
2.
抗炎症作用
湿疹及び類症、蕁麻疹等の皮膚疾患の患者283例を対象とした一般臨床試験において、77.7%(220例)に改善が認められた。
薬効薬理
線維素溶解現象(線溶現象)は生体の生理的ならびに病的状態において、フィブリン分解をはじめ、血管の透過性亢進等に関与し、プラスミンによって惹起される生体反応を含め、種々の出血症状やアレルギー等の発生進展や治癒と関連している。
トラネキサム酸は、このプラスミンの働きを阻止し、抗出血・抗アレルギー・抗炎症効果を示す。
(1) 抗プラスミン作用2~6)
トラネキサム酸は、プラスミンやプラスミノゲンのフィブリンアフィニティー部位であるリジン結合部位(LBS)と強く結合し、プラスミンやプラスミノゲンがフィブリンに結合するのを阻止する。このため、プラスミンによるフィブリン分解は強く抑制される。更に、α2-マクログロブリン等血漿中アンチプラスミンの存在下では、トラネキサム酸の抗線溶作用は一段と強化される。
(2) 止血作用2)
異常に亢進したプラスミンは、血小板の凝集阻止、凝固因子の分解等を起こすが、軽度の亢進でも、フィブリン分解がまず特異的に起こる。したがって一般の出血の場合、トラネキサム酸は、このフィブリン分解を阻害することによって止血すると考えられる。
(3) 抗アレルギー・抗炎症作用7~10)
トラネキサム酸は、血管透過性の亢進、アレルギーや炎症性病変の原因になっているキニンやその他の活性ペプタイド等のプラスミンによる産生を抑制する(モルモット、ラット)。
有効