性ARC患者320例を対象とした二重盲検比較試験において、ジドブジン300mgを1日2回12時間毎に投与した群(1日2回投与群)は162例で、100mgを1日6回4時間毎に投与した群(1日6回投与群)は158例であった。
1)
48週間の試験期間中に発現した死亡症例数及び日和見感染症発症例数等について、両群間に差は認められなかった(表-3)。
2)
副作用発現頻度について、両群間に差は認められなかった(表-4)。
表-2 12週間投与後の投与開始時からの血漿中HIV RNA量の平均変化量
ジドブジン/ラミブジン
併用投与群 本剤投与群 95%信頼区間
Intent-to-treat analysis
例数
HIV RNA量の平均変化量
(log10copies/mL) 38
-1.36 33
-1.36 〔-0.301、0.298〕※
Per-protocol analysis
例数
HIV RNA量の平均変化量
(log10copies/mL) 33
-1.37 30
-1.41 〔-0.364、0.283〕※
※:95%信頼区間において0を含む場合は有意(p<0.05)でないとみなした。
表-3 死亡症例数及び日和見感染症発症例数等
1日2回投与群(n=162) 1日6回投与群(n=158)
死亡症例数 5 5
日和見感染症発症例数 33 29
平均体重増加量(第20週)(kg) 1.9 3.2
CD4リンパ球数増加量(/mm3) 22(最高値、第4週)※ 29(最高値、第8週)※
※両群共に16-24週の間にベースラインまで減少し、以降更に減少した。
表-4 副作用発現頻度
1日2回投与群(n=162) 1日6回投与群(n=158)
貧血(Hgb<8.0g/dL) 14% 16%
好中球減少(<1000/mm3) 42% 42%
嘔気 15% 18%
頭痛 12% 11%
無力症 6% 5%
筋肉痛 1% 5%
嘔吐 4% 4%
薬効薬理
<ジドブジン>
(1) 作用機序31)
ジドブジン(AZT)はHIV感染細胞内でリン酸化され、活性型の三リン酸化体(AZTTP)となる。AZTTPはHIV逆転写酵素を競合的に阻害し、またデオキシチミジン三リン酸の代わりにウイルスDNA中に取り込まれて、DNA鎖伸長を停止することによりウイルスの増殖を阻害する。AZTTPのHIV逆転写酵素に対する親和性は、正常細胞のDNAポリメラーゼに比べて約100倍強いので、選択性の高い抗ウイルス作用を示す(ヒトリンパ球系H9細胞増殖に対するin vitroでのID50値は267μg/mL(1000μM))。
(2) 抗ウイルス作用
1)
ジドブジンのHIVに対するin vitroにおけるID50値は、CD4リンパ球系細胞を用いた系では0.13μg/mL(0.49μM)以下であった32)。
2)
マウスにマウスレトロウイルス(Rauscherマウス白血病ウイルス)を接種し、接種4時間目より、ジドブジンを1.0mg/mLの割合で飲用水に混入して投与した実験では、平均脾臓重量、脾臓細胞感染率、及び血中ウイルス力価が対照群に比し著しく低下した。また感染後生存日数も延長した33)。
3)
*In vitroでジドブジンとアバカビル、ラミブジン、ジダノシン等の抗HIV薬あるいはインターフェロンαとの相加又は相乗作用が認められた。
(3) 薬剤耐性
ジドブジンを含むチミジンアナログに対する耐性は、HIV逆転写酵素の41、67、70、210、215及び219番目のアミノ酸の変異によって生じ、これらのうち41番目と215番目の変異あるいは4個以上の変異によってウイルスは表現型として耐性を示す34),35)。なお、これらチミジンアナログの変異を有するウイルスは高度の交差耐性を示さない36)。
また、62、75、77、116及び151番目のアミノ酸の変異、並びに69番目のアミノ酸のスレオニンからセリンへの変異とそれに加えて同じ個所への6塩基対の挿入により、ウイルスはジドブジンを含むヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬に対し多剤耐性を示す37)~39)。
なお、in vitroで、ジドブジン耐性ウイルスはジドブジン及びラミブジンの投与によりラミブジンに対して耐性を獲得すると、ジドブジンに対して感受性は回復する。また、抗HIV薬の治療経験のない患者にジドブジンとラミブジンを併用することによりジドブジン耐性ウイルスの出現が遅延する40)。
<ラミブジン>
(1) 作用機序
ラミブジンは細胞内でリン酸化され、HIVを感染させた細胞内での半減期が約12時間の5'-三リン酸化体に変換される41)。ラミブジン5'-三リン酸化体はHIVの逆転写酵素によりウイルスDNA鎖に取り込まれ、DNA鎖の伸長を停止することによりHIVの複製を阻害する42)。また、ラミブジン5'-三リン酸化体はHIVの逆転写酵素を競合的に阻害する42)。一方、in vitroで、ヒト末梢血リンパ球、リンパ球系・単球-マクロファージ系の株化細胞43)及び種々のヒト骨髄前駆細胞に対するラミブジンの細胞毒性は弱かった。
(2) 抗ウイルス作用
In vitroでのラミブジンのHIV-1(RF、GB8、U455及びIIIB)に対するIC50値は670nM以下、HIV-2 RODに対するIC50値は40nMであった。In vitroでアバカビル、ジダノシン、ネビラピン、ザルシタビン及びジドブジンとの相加又は相乗作用が認められた。また、ラミブジンは単独で、ジドブジン耐性臨床分離株の平均p24抗原量を薬物無処置群に比べ66~80%低下させた。
(3) 薬剤耐性
ラミブジンを含む抗HIV薬で治療を受けたHIV-1感染患者で発現するラミブジン耐性HIV-1には、ウイルス逆転写酵素の活性部位に近い184番目のアミノ酸のメチオニンからバリンへの変異(M184V)がみられる44)。このM184V変異の結果、ウイルスのラミブジンに対する感受性は著明に低下し44),45)、in vitroでのウイルスの複