3. ラミブジン単独投与での成績
(1) 血漿中濃度23)~25)
成人HIV感染者に2mg/kgを1日2回15日間経口投与したとき、初回投与時では投与1.5時間後に最高血中濃度の1.5μg/mLに達し、半減期は2.6時間であり、15日間投与後では血中濃度は定常状態に達し、最高血中濃度は1.9μg/mLであった。また、成人HIV感染者に0.25~8mg/kgを単回経口投与したときの生物学的利用率は約82%であった。
(2) 分布26)
成人HIV感染者に4~10mg/kgを1日2回2週間以上反復経口投与したとき、投与2時間後の脳脊髄液中濃度は血中濃度の約6%であった。
(3) 代謝・排泄27)
ヒトでの主代謝体はトランス-スルホキシド体(1-[(2R,5S)-trans-2-hydroxymethyl-1,3-oxathiolan-3-oxide-5-yl]cytosine)であった。成人HIV感染者に2mg/kgを経口投与したとき、投与後12時間尿中にトランス-スルホキシド体が投与量の5.2%排泄された。また、血中濃度が定常状態での未変化体の尿中排泄率は投与量の約73%であり、腎排泄がラミブジンの体内からの除去の主要な経路であることが示された。
(4) 腎機能障害を有する成人における薬物動態28)
腎機能の低下したHIV患者にラミブジンを300mg単回経口投与したとき、クレアチニンクリアランスの低下につれてAUC及び最高血中濃度が増加し、半減期が延長し、見かけの全身クリアランスが減少した。
薬物動態の表
表-1 薬物動態パラメータ(6例の平均値±標準偏差)
Cmax(μg/mL) Tmax(h) t1/2(h) AUC0-6(μg・h/mL) AUC0-12(μg・h/mL)
ジドブジン 0.549±0.261 0.8±0.3 1.1±0.1 0.858±0.266 ―
ラミブジン 1.547±0.302 1.3±0.6 2.3±0.6 5.089±1.692 6.165±2.312
臨床成績
本剤を用いた日本人における臨床試験成績は得られていないため、参考までに、HIV感染症を対象としたジドブジン100mg1日4回及びラミブジン150mg1日2回の併用投与を行った国内臨床試験の結果を示す18)。
試験開始前のCD4リンパ球数が100~400/mm3の12歳以上のHIV感染者42例を対象とした多施設共同オープン試験(ラミブジン150mg1日2回とジドブジン100mg1日4回を併用投与)で、有効性評価対象症例37例での臨床評価の概要は次のとおりである。
CD4リンパ球数は、試験開始時の平均220.8/mm3から4週後には約25/mm3増加し、8週後から24週後までの増加量は4.6~34.0/mm3で推移した。CD4リンパ球数の推移を図-2に示した。
CD4パーセントは、開始時の18.81%から4週後には20.03%へ有意に増加し、8週後から24週後まではほとんど変動なく約20%で推移した。血漿中HIV RNA量は、試験開始時の平均3.8log10 copies/mLから4週後には1.6log10 copies/mL有意に減少し、8週後から24週後までは0.7~1.2log10 copies/mL減少した。血漿中HIV RNA量の推移を図-3に示した。
<海外において実施された臨床試験の成績>
(1) 本剤を用いた臨床試験(試験B3027)(社内資料)
抗レトロウイルス薬による治療経験のないウイルス量が10000copies/mL以上、及びCD4リンパ球数が200/mm3以上の診断が確定したHIV感染症患者75例を対象とした無作為多施設オープン試験において、ジドブジン200mg1日3回及びラミブジン150mg1日2回の併用投与又は本剤(ジドブジン300mg/ラミブジン150mg1日2回)の単独投与を12週間行い有効性を比較した。投与開始12週後における血漿中HIV RNA量の平均変化量を表-2に示した。両群において血漿中HIV RNA量の平均変化量に有意な差は認められなかった。
(2) ジドブジンとラミブジンの併用療法によるHIV感染症の進展に関する比較検討29)
欧米で行われた4つの二重盲検比較試験についてmeta-analysisを行った。
ジドブジン200mg1日3回にラミブジン150mg又は300mg1日2回を併用投与した群(ラミブジン併用群)における症例数は569例、ジドブジン200mg1日3回の単独投与又はジドブジンにザルシタビンを併用投与した群(比較対照群)は316例で、両群の患者背景には差を認めなかった。試験期間中、CDC分類のB/Cあるいは新たなB/C症状に進展した患者数は計118例、また、Cへの進展は計28例に認められた。meta-analysisの結果、ラミブジン併用群は比較対照群に比し、CDC分類のB/Cへの進展は49%減少し(p<0.0001)、CDC分類Cへの進展は66%減少した(p=0.003)。
(3) HIV感染症に対するジドブジンとラミブジン又はラミブジンとloviride注1)の併用とジドブジン単独投与注2)の無作為二重盲検比較試験(試験B3007 CAESAR試験)30)
CD4リンパ球数が25~250/mm3かつkarnofsky scoreが70以上のHIV感染症患者1840例を対象とした二重盲検比較試験において、ジドブジン1日500~600mgとプラセボを併用投与した群(プラセボ併用群)は471例、ジドブジンにラミブジン150mg1日2回を併用投与した群(ラミブジン併用群)は907例、ジドブジンにラミブジンとloviride100mg1日3回を併用投与した群(ラミブジン/loviride併用群)は462例であった。52週間の試験期間中に、AIDS若しくは死亡へ進行した患者(Intent-to-treat解析)は、プラセボ併用群で95例(20%)、ラミブジン併用群で86例(9%)、ラミブジン/loviride併用群で42例(9%)であり、ラミブジンが併用された群では、いずれもプラセボ併用群に比較して有意にAIDS若しくは死亡への進行が抑えられた(p<0.0001)。
注1)国内では未承認の非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤
注2)ジドブジンにザルシタビン又はジダノシンの併用投与は可能とした。
(4) エイズ患者又は進展したARC患者に対するジドブジンの用法変更に関する臨床試験(ジドブジンの単独投与による成績)(社内資料)
エイズ患者及び進行