の時点で定量下限未満であった4)5)。更に、便秘型過敏性腸症候群患者446例に本剤0.0625~0.5mgを1日1回4週間または8週間投与したときの本剤及び脱チロシン体血漿中濃度は、すべての時点で定量下限未満であった6)。この結果より、本剤の吸収性は非常に低いと推察された。
(注)本剤の承認された1日通常用量は0.5mgである。
2. 代謝
本剤は腸液において、タンパク質分解酵素により、活性代謝物である脱チロシン体に代謝され、更に小ペプチドや天然型アミノ酸に代謝された(in vitro試験)7)。
3. 相互作用
本剤はCYPの基質にはならず8)、また、本剤並びに活性代謝物である脱チロシン体はCYP分子種(CYP1A2、2B6、2C8、2C9、2C19、2D6、2E1及び3A4/5)に対する阻害作用は弱く、CYP1A2、2B6及び3A4/5に対する誘導作用も示さなかった9)~11)(in vitro試験)。
本剤はP-gpの基質にはならず、排出又は取り込みトランスポーターのうち、OATP2B1に対して阻害作用(10μmol/Lにて55%の阻害)を示したが、P-gp、BCRP、MRP2、MRP3、MRP4、OATP1B1、OATP1B3、PEPT1及びOCTN1に対しては阻害作用を示さなかった(IC50値>10μmol/L)12)13)。また、脱チロシン体は排出又は取り込みトランスポーターに対して阻害作用を示さなかった(IC50値>10μmol/L)13)(in vitro試験)。
臨床成績
国内で実施された便秘型過敏性腸症候群患者を対象とした第III相プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験及び長期投与試験における成績は以下のとおりであった14)。
1. 第III相プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験14)
本剤0.5mgもしくはプラセボを1日1回12週間、朝食前に経口投与したときの結果は、2つの主要評価項目である12週間における過敏性腸症候群症状の全般改善効果のレスポンダー率及び12週間における完全自然排便のレスポンダー率に関して、本剤0.5mg群はプラセボ群を上回り有意な差が認められた。(「臨床成績の表」表1、表2参照)
2. 長期投与試験14)
上記の第III相プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験を完了した被験者のうち、移行基準を満たした症例を対象として、本剤0.5mgを1日1回朝食前に、プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験を含めて52週間経口投与した。本剤が52週間投与された164例における過敏性腸症候群症状の全般改善効果の週間レスポンダー率及び完全自然排便の週間レスポンダー率は、本剤投与開始後、経時的に上昇し、その後、概ね一定に推移した。
臨床成績の表
表1 12週間における過敏性腸症候群症状の全般改善効果のレスポンダー率
投与群 症例数 レスポンダー率 両側95%信頼区間:下限 両側95%信頼区間:上限 P値※ プラセボとの差
プラセボ 251 17.5% 13.0 22.8 <0.001 16.2%
本剤0.5mg 249 33.7% 27.9 40.0 <0.001 16.2%
※:Fisher's exact検定(有意水準:0.05)
表2 12週間における完全自然排便のレスポンダー率
投与群 症例数 レスポンダー率 両側95%信頼区間:下限 両側95%信頼区間:上限 P値※ プラセボとの差
プラセボ 251 19.1% 14.4 24.5 <0.001 15.8%
本剤0.5mg 249 34.9% 29.0 41.2 <0.001 15.8%
※:Fisher's exact検定(有意水準:0.05)
薬効薬理
1. 薬理作用
(1) グアニル酸シクラーゼC(GC-C)受容体親和性
本剤は、受容体結合実験において、ヒトGC-C受容体に高い親和性を示した15)。
(2) GC-C受容体刺激作用
本剤は、ヒト結腸上皮細胞において、細胞内サイクリックGMP濃度を増加させた16)。
(3) 腸管分泌及び腸管輸送能に対する作用
本剤は、ラット及びマウスにおいて、腸管分泌を促進するとともに、小腸輸送能を促進させた17)~20)。
(4) 大腸痛覚過敏に対する作用
本剤は、ラット及びマウスにおいて、ストレスや大腸炎によって引き起こされる大腸痛覚過敏を抑制した21)~23)。
2. 作用機序
本剤の腸管分泌及び腸管輸送能促進作用並びに大腸痛覚過敏改善作用が、便秘型過敏性腸症候群における排便異常及び腹痛・腹部不快感の改善に寄与すると考えられる。
有効成分に関する理化学的知見
一般名
リナクロチド(Linaclotide)
本質
リナクロチドは、グアニル酸シクラーゼC受容体アゴニストであり、14個のアミノ酸残基からなる合成ペプチドである。化学名は以下のとおりである。
L-Cysteinyl-L-cysteinyl-L-α-glutamyl-L-tyrosyl-L-cysteinyl-L-cysteinyl-L-asparaginyl-L-prolyl-L-alanyl-L-cysteinyl-L-threonylglycyl-L-cysteinyl-L-tyrosine cyclic (1→6),(2→10),(5→13)-tris(disulfide)
構造式
分子式
C59H79N15O21S6
分子量
1526.74
性状
リナクロチドは白色の粉末である。ジメチルスルホキシドに溶けやすく、水及びエタノール(99.5)に溶けにくい。
取扱い上の注意
注意:
錠剤は防湿及び乾燥機能を有するアルミ包装により品質保持をはかっている。服用直前に錠剤を取り出すこととし、無包装状態、あるいは別容器に移しての保存はしないこと。
承認条件
医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
包装
100錠(10錠×