績のうち、化学療法既治療群と比較した場合、国内臨床試験の奏効率(著効+有効)は34%(9%+25%)であり、海外試験成績の30%(6%+24%)とほぼ同等であった。(【臨床成績】「単独経口投与での成績(海外臨床試験)」の項参照)
2. 単独経口投与での成績(海外臨床試験)19)
初回再発の退形成性星細胞腫患者を対象として、本剤単剤投与によるオープン試験を実施した。用いた用法・用量は28日を1クールとし、初回投与量として、化学療法既治療群では本剤1回150mg/m2を、化学療法未治療群では1回200mg/m2を1日1回5日間経口投与し、23日間休薬とした。第2クール以降は用量調整基準に従い、本剤1回100、150又は200mg/m2を1日1回5日間経口投与し、6クール施行後に有効性を評価した。投与は最長2年間にわたって実施された。その結果、奏効率(著効+有効)は、化学療法既治療群では30%(6%+24%)、化学療法未治療群で43%(11%+32%)であった。(表2参照)
3. 放射線との併用療法での成績(海外臨床試験)20)
初発の膠芽腫と診断された患者573名を対象に、放射線単独療法を対照群(n=286、RT群)とし、本剤と局所放射線併用療法(n=287、RT+TMZ群)による初発時の膠芽腫患者を対象とした第III相臨床試験を実施した。局所放射線療法は1日1回2Gy週5日間の6週間照射とした。放射線照射時は本剤1日1回75mg/m2を6週間連日経口投与し(最長49日)、放射線療法終了後4週間の休薬期間を設けた。その後、第1クールでは本剤1回150mg/m2、第2クール以降は、100、150又は200mg/m2/日を1日1回5日間経口投与後、23日間休薬の計28日を1クールとし、6クール施行した。局所放射線療法との併用期間中はニューモシスチス肺炎に対する予防処置(ペンタミジンの吸入又はトリメトプリム・スルファメトキサゾール製剤の投与)を全例で実施し、リンパ球減少が認められた患者には、これが回復する(CTC Grade 1以下)まで予防処置を継続することとした。なお、局所放射線との併用前には、5-HT3受容体拮抗薬又はメトクロプラミドによる制吐予防療法が推奨された。また、本剤単独の投与中にも5-HT3受容体拮抗薬による制吐予防療法が必要とされた。その結果、本剤との併用群は放射線単独群に比べ、全生存期間(Overall Survival:OS)を有意に延長させた。中央値は本剤との併用群で14.6ヵ月、放射線単独群で12.1ヵ月であった(p<0.0001)。ハザード比は、放射線単独群に対して1.59(95%信頼区間=1.33~1.91)であり、2年生存率は本剤との併用群で26%、放射線単独群で10%であった。また、無増悪生存(PFS)期間の中央値は本剤との併用群で6.9ヵ月、放射線単独群で5.0ヵ月であった(p<0.0001)。
臨床成績の表
表2
単独投与での成績(海外臨床試験)19)
臨床試験 患者 n 奏効率
(著効+有効)
95%信頼区間 無増悪生存(PFS)
中央値
(月) 無増悪生存(PFS)
6ヵ月生存率
95%信頼区間
国内第II相
臨床試験 全登録患者
(FAS) 32 34%
18.6%~53.2% 4.1 40.6%
23.6%~57.6%
国内第II相
臨床試験 退形成性星
細胞腫患者 22 27%
10.7%~50.2% 3.9 31.8%
12.4%~51.3%
海外第II相
臨床試験 全登録患者
(ITT) 162 35%
28%~43% 5.4 46%
38%~54%
海外第II相
臨床試験 化学療法
既治療群 97 30%
21%~40% 4.8 44%
34%~54%
海外第II相
臨床試験 化学療法
未治療群 65 43%
31%~56% 6.2 50%
38%~63%
海外第II相
臨床試験 退形成性星
細胞腫患者 111 35%
26%~45% 5.5 48%
39%~58%
海外第II相
臨床試験 化学療法
既治療群 69 26%
16%~38% 4.8 45%
33%~57%
海外第II相
臨床試験 化学療法
未治療群 42 50%
34%~66% 6.3 54%
39%~69%
薬効薬理
テモゾロミドは一価アルキル化薬であり、生理的pH条件下で非酵素的にMTICに分解され、メチルジアゾニウムイオンとなり、DNAをメチル化することにより抗腫瘍作用を示す。
1. 抗腫瘍作用21~23)
テモゾロミドはin vitroにおいてヒト悪性神経膠腫由来細胞に対して細胞増殖抑制作用を示した。また、テモゾロミドはヒト悪性神経膠腫由来細胞頭蓋内移植マウスにおいて生存日数を延長させた(in vivo)。
2. 作用機序24、25)
テモゾロミドはDNAのグアニンの6位の酸素原子をメチル化することによりDNA損傷を引き起こし、細胞周期の停止及びアポトーシスを誘導することにより細胞増殖抑制作用を示す(in vitro)。
有効成分に関する理化学的知見
一般名
テモゾロミド(JAN)
Temozolomide(JAN)
化学名
3-Methyl-4-oxo-3,4-dihydroimidazo[5,1-d][1,2,3,5]tetrazine-8-carboxamide
構造式
分子式
C6H6N6O2
分子量
194.15
性状
白色~微紅色又は淡黄褐色の粉末で、ジメチルスルホキシドにやや溶けにくく、水、メタノール、アセトン、又はアセトニトリルに溶けにくく、エタノール(95) に極めて溶けにくい。
融点
約206℃(分解)
分配係数(1-オクタノール/水系)
20.8~22.4
0.1mol/Lリン酸塩緩衝液(pH 7.0)
22.0
0.1mol/L塩酸試液
20.8
水
22.4
承認条件
国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積さ