血球増多剤の投与、発熱を伴う場合には適切な抗生剤の投与、その他必要に応じて適切な感染症対策を行うこと。
(2) 下痢
本剤の投与により排便回数の増加、水様便又は腹痛を伴うような場合は、継続投与により下痢が強く発現することがある。また、腹痛を有する患者に本剤を投与した場合、高度な下痢があらわれることがある。したがって、このような場合には症状の回復を待って投与を行うこと。
下痢が発現した場合には、以下の事項に留意すること。
〇高度な下痢の持続により、脱水及び電解質異常等をきたし、特に重篤な白血球・好中球減少を伴った場合には、致命的な経過をたどることがあるので、次のような処置を行うこと。
・ロペラミド塩酸塩等の止瀉剤の投与を行うこと(ただし、腸管麻痺を引き起こすことがあるので、ロペラミド塩酸塩等の予防的投与や、漫然とした投与は行わないこと)。
・脱水を認めた場合には、輸液、電解質補充を行うこと。
・重篤な白血球・好中球減少を伴った場合には、適切な抗生剤の投与を考慮すること。
〇高度な下痢や嘔吐に伴いショック(循環不全)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、呼吸困難、血圧低下等が認められた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと。
なお、本剤による下痢に関しては、以下の2つの機序が考えられている。
早発型:
本剤投与中あるいは投与直後に発現する。コリン作動性と考えられ、高度である場合もあるが多くは一過性であり、副交感神経遮断剤の投与により緩和することがある。
遅発型:
本剤投与後24時間以降に発現する。主に本剤の活性代謝物(SN-38)による腸管粘膜傷害に基づくものと考えられ、持続することがある。
4.
重症感染症、播種性血管内凝固症候群(DIC)、出血傾向、腸管穿孔、消化管出血、腸閉塞、腸炎及び間質性肺炎の発現又は増悪に十分注意すること。
5.
悪心・嘔吐、食欲不振等の消化器症状が高頻度にあらわれるので、観察を十分に行い、適切な処置を行うこと。
6.
投与初期又は比較的低用量の投与でも副作用があらわれることがあるので、使用上の注意に十分注意すること。
7.
小児及び生殖可能な年齢の患者に投与する必要がある場合には性腺に対する影響を考慮すること。
8.
Gilbert症候群のようなグルクロン酸抱合異常の患者においては、本剤の代謝が遅延することにより骨髄機能抑制等の重篤な副作用が発現する可能性が高いため、十分注意すること。
9.
本剤の活性代謝物(SN-38)の主な代謝酵素であるUDP-グルクロン酸転移酵素(UDP-glucuronosyltransferase、UGT)の2つの遺伝子多型(UGT1A1*6、UGT1A1*28)について、いずれかをホモ接合体(UGT1A1*6/*6、UGT1A1*28/*28)又はいずれもヘテロ接合体(UGT1A1*6/*28)としてもつ患者では、UGT1A1のグルクロン酸抱合能が低下し、SN-38の代謝が遅延することにより、重篤な副作用(特に好中球減少)発現の可能性が高くなることが報告されているため、十分注意すること(「薬物動態」、「臨床成績」の項参照)。
10.
小児悪性固形腫瘍に本剤を使用する際には、関連文献(「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議 公知申請への該当性に係る報告書:イリノテカン塩酸塩水和物(小児悪性固形腫瘍)」等)を熟読すること。
相互作用
併用禁忌
(併用しないこと)
薬剤名等
アタザナビル硫酸塩
(レイアタッツ)
臨床症状・措置方法
骨髄機能抑制、下痢等の副作用が増強するおそれがある。
機序・危険因子
本剤の活性代謝物(SN-38)は、主に肝のUDP-グルクロン酸転移酵素1A1(UGT1A1)によりグルクロン酸抱合体(SN-38G)となる。UGT阻害作用のあるアタザナビル硫酸塩との併用により、本剤の代謝が遅延することが考えられる。
併用注意
(併用に注意すること)
1. 薬剤名等
他の抗悪性腫瘍剤
放射線照射
臨床症状・措置方法
骨髄機能抑制、下痢等の副作用が増強するおそれがある。
患者の状態を観察しながら、減量するか又は投与間隔を延長する。
機序・危険因子
併用により殺細胞作用が増強される。
2. 薬剤名等
末梢性筋弛緩剤
臨床症状・措置方法
末梢性筋弛緩剤の作用が減弱するおそれがある。
機序・危険因子
本剤は、動物実験で筋収縮増強作用が認められている。
3. 薬剤名等
CYP3A4阻害剤
アゾール系抗真菌剤(ケトコナゾール、フルコナゾール、イトラコナゾール、ミコナゾール等)
マクロライド系抗生剤(エリスロマイシン、クラリスロマイシン等)
リトナビル
ジルチアゼム塩酸塩
ニフェジピン
モザバプタン塩酸塩等
グレープフルーツジュース
臨床症状・措置方法
骨髄機能抑制、下痢等の副作用が増強するおそれがある。
患者の状態を観察しながら、減量するか又は投与間隔を延長する。
機序・危険因子
本剤は、主にカルボキシルエステラーゼにより活性代謝物(SN-38)に変換されるが、CYP3A4により一部無毒化される。CYP3A4を阻害する上記薬剤等との併用により、CYP3A4による無毒化が阻害されるため、カルボキシルエステラーゼによるSN-38の生成がその分増加し、SN-38の全身曝露量が増加することが考えられる。
4. 薬剤名等
CYP3A4誘導剤
フェニトイン
カルバマゼピン
リファンピシン
フェノバルビタール等
セイヨウオトギリソウ(St. John’s Wort:セント・ジョーンズ・ワート)含有食品
臨床症状・措置方法
本剤の活性代謝物(SN-38)の血中濃度が低下し、作用が減弱するおそれがある。
本剤投与期間中は上記薬剤・食品との併用を避けることが望ましい。
機序・危険因子
本剤は、主にカルボキシルエステラーゼにより活性代謝物(SN-38)に変換されるが、CYP3A4により一部無毒化される。CYP3A4を誘導する上記薬剤等との併用により、CYP3A4による無毒化が促進されるため、カルボキシルエステラーゼによるSN-38の生成がその分減少し、SN-38の全身曝露量が減少することが考えられる。
5. 薬剤名等
ソラフェニブトシル酸塩
臨床症状・措置方法
骨髄機能抑制