与
1.
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には,治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[複数の妊婦において本剤とサニルブジンとの併用投与による致死性の乳酸アシドーシスが報告されている。]
2.
授乳婦に投与する場合には,授乳を中止させること。[動物実験(ラット)で,乳汁中に移行することが報告されている。]
小児等への投与
低出生体重児,新生児,乳児,幼児,小児に対する安全性は確立していない。(小児等に対する国内での使用経験がない。)
その他の注意
1.
変異原性試験(突然変異試験,染色体異常試験,形質転換試験)では,変異原性が陽性であった。
2.
マウス,ラットへの90日以上の投与では,骨格筋に対する毒性が認められているが,ヒトでのミオパシーとの関連性は明らかではない。
3.
本剤とヒドロキシウレアが併用されたHIV感染患者で,死亡を含む重篤な膵炎,肝障害及び高度の末梢神経障害が発現したとの報告がある。
薬物動態
1. 血漿中濃度1),2)
日本人健常成人男子(11例)にカプセル剤400mgを経口投与した時の最高血漿中濃度は1.67時間後に1,641.06ng/mLを示し,血漿中半減期は約1.6時間,AUCは4,064.69ng・hr/mLであった。
ジダノシンのin vitroでのヒト血清蛋白結合率は5%以下であった。
2. 食事の影響3)(外国人における成績)
健常成人(20例)にカプセル剤400mgを食後に経口投与した時の最高血漿中濃度は45.7%減少,AUCは18.7%減少,Tmaxは約3時間延長した。
3. カプセル剤/錠剤の生物学的同等性4),5)(外国人における成績)
健常成人及びHIV感染症患者において,カプセル剤の体内動態は錠剤に比べ,最高血漿中濃度が約40%減少,Tmaxが延長し,吸収が遅いことが示された。血漿中半減期及びAUCは同等であった。
4. 腎機能障害患者への投与法(外国人における成績)
腎障害のある患者では,本剤の消失半減期が延長し,副作用が強くあらわれるおそれがあるので,クレアチニンクリアランスにより投与量を調節するなど慎重に投与すること。(「【使用上の注意】慎重投与」の項参照)
臨床成績
〈海外の臨床試験-カプセル剤の最終成績-〉6),7)
HIV感染症患者を対象とした比較臨床試験(AI454-152,-158)における成績を示す。
試験番号:AI454-152(13カ国)
試験方法:
無作為化オープン比較試験
目的:
ジダノシンカプセル/サニルブジン/ネルフィナビル(ddIEC群)とコンビビル(ジドブジン・ラミブジン)/ネルフィナビル(Combivir群)の比較
1日1回48週投与
対象:
HIV感染症例
症例数:
511例
ddIEC群:258例
Combivir群:253例
試験番号:AI454-158(米国)
試験方法:
無作為化オープン比較試験
目的:
ジダノシンカプセル/サニルブジン/ネルフィナビル(ddIEC群)とジダノシン錠/サニルブジン/ネルフィナビル(ddI錠群)の比較
1日1回48週投与
対象:
HIV感染症例
症例数:
138例
ddIEC群:72例
ddI錠群:66例
1. 抗ウイルス活性
両試験においてddIEC群と対照薬群のHIVウイルス量は経時的に減少し,群間に有意差は認められなかった。
2. 免疫応答
両試験ともddIEC群と対照薬群はいずれも経時的にCD4陽性リンパ球数を増加させた。
薬効薬理
1. 作用機序8),9)
ジダノシンは天然ヌクレオシドであるデオキシアデノシンの3位水酸基を水素に置換した合成ヌクレオシド誘導体である。細胞内において細胞性酵素により活性代謝物のジデオキシアデノシン5-三リン酸に変換される。ジデオキシアデノシン5-三リン酸は,天然基質のデオキシアデノシン5-三リン酸との競合により,またウイルスDNAに取り込まれることによりウイルスDNA鎖の伸長を停止させ,HIV-1の逆転写酵素活性を阻害する。
2. 細胞培養アッセイにおける抗ウイルス活性10)
各種HIV-1感染リンパ芽球性細胞及び単球/マクロファージ細胞を用いて,ジダノシンの抗HIV-1活性を検討した。その結果,ジダノシンのウイルス複製の50%阻害濃度(EC50値)は,リンパ芽球性細胞で2.5~10μM及び単球/マクロファージ細胞で0.01~0.1μMであった(1μMは0.24μg/mLに相当)。
3. 耐性10)
ジダノシンに対して低感受性のHIV-1分離株がin vitroで選択されたほか,ジダノシン投与患者からも分離されている。ジダノシン投与患者の分離株の解析では,アミノ酸をコードしている遺伝子の点突然変異による,逆転写酵素の65番目のアミノ酸がリジンからアルギニンへ,74番目のアミノ酸がロイシンからバリンへ,また184番目のアミノ酸のメチオニンからバリンへの置換が確認された。臨床分離株では74番目のアミノ酸のロイシンからバリンへの置換が最も頻回に観察された。ジダノシンを6~24カ月単独投与した患者60例(ジドブジンの投与を受けたことのある患者を含む)から採取したジダノシン誘発突然変異をもつHIV-1分離株のジダノシンに対する感受性をin vitroで検討した結果,感受性が1/10に低下した患者が10例観察された。ジダノシン感受性の低下した臨床分離株は,1つ若しくはそれ以上のジダノシン耐性関連の置換を有していた。
4. 交差耐性10)
2年以上にわたりジダノシンとジドブジンの併用療法を受けた患者39例中2例から分離されたHIV-1分離株の感受性をin vitroで検討した結果,ジドブジン,ジダノシン,ザルシタビン,サニルブジン及びラミブジンに対して感受性が低下していた。(交差耐性を示した。)これらの分離株の解析では,アミノ酸をコードしている遺伝子の点突然変異による,逆転写酵素の62番目のアミノ酸がアラニンからバリンへ,75番目のアミノ酸がバリンからイソロイシンへ,77番目のアミノ酸がフェニルアラニンからロイシンへ,116番目のアミノ酸がフェニルアラニンからチロシンへ,また151番目のアミノ酸がグルタミンからメチオニンへと5ヵ所の置換が確認された。臨床試験の結果より,チミジン誘導体によるアミノ酸置換(41番目のメチオニンがロイシン,67番目のアスパラギン酸がアスパラギン,210番目のロイシンがトリプトファン,215番目のスレオニンがチロシン,219番目のリジンがグルタミン)が存在する場合にはジダノシンに対する感受性が低下することが示された。
有効成分に関する理化学的知見
一般名:
ジ