、幼児又は小児に対する安全性は確立していない。[使用経験がない。]
過量投与
ヒトにおけるグラゾプレビルの過量投与の経験は限られている。本剤の過量投与に対する解毒剤はない。過量投与時には、患者の状態を十分観察し、適切な対症療法を実施すること。
グラゾプレビルの血漿蛋白結合率は高いため、透析はグラゾプレビルの血中濃度を低下させるのに有効ではない。
適用上の注意
薬剤交付時:PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。[PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することが報告されている。]
薬物動態
1. 血中濃度及び薬物動態パラメータ
(1) 反復投与時の薬物動態パラメータ
日本人C型慢性肝炎患者にグラゾプレビル100mg及びエルバスビル50mgを1日1回12週間反復経口併用投与した際、定常状態(投与4週)におけるグラゾプレビルの血漿中薬物動態パラメータは表1の通りであった2)。
(表1 グラゾプレビル100mg1日1回投与時の定常状態における薬物動態パラメータ参照)
母集団薬物動態解析
日本人C型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変患者324例を含む日本人及び非日本人被験者から得られたグラゾプレビルの血漿中薬物濃度データを用いて、母集団薬物動態解析を実施した。グラゾプレビル100mgを投与された日本人C型慢性肝炎患者の定常状態における薬物動態パラメータの推定値[幾何平均(90%信頼区間)]は、AUC0-24hrが4.54(4.19, 4.92)μM・hr、Cmaxが0.63(0.59, 0.70)μM及びCtroughが40.3(36.3, 44.3)nMであった3)。
定常状態におけるグラゾプレビルのAUC0-24hrの推定値は、日本人C型代償性肝硬変患者では日本人C型慢性肝炎患者に比べ高く、1.75倍であった4)。
非日本人C型慢性肝炎患者での定常状態におけるグラゾプレビルのAUC0-24hrの推定値は、非重度腎機能障害者と比較して、透析をしていない重度腎機能障害者では1.35倍であり、末期腎不全透析者では0.99倍であった4)。
(2) 食事の影響
日本人健康成人にグラゾプレビル100mg及びエルバスビル50mgを単回併用経口投与した際、食後投与では空腹時投与に比べ、グラゾプレビルの血漿中AUC0-∞及びCmaxはそれぞれ48%及び80%増加した5)。
2. 分布
(1)
グラゾプレビルはヒト血漿蛋白に対し高い結合率を示し(98.8%)、ヒト血清アルブミン及びα1-酸性糖蛋白と結合した。また、腎機能障害者あるいは肝機能障害者で血漿蛋白結合率は健康被験者と同程度であった(≧97.8%)6)。(in vitro及び外国人データ)
(2)
非臨床試験において、グラゾプレビルはOATP1Bによる能動的な肝取込みを介して主に肝臓に分布した7)。
3. 代謝及び排泄
(1)
グラゾプレビルの一部は主としてCYP3Aによる酸化的代謝により消失する。血漿中に代謝物は検出されなかった8)。(in vitro及び外国人データ)
(2)
グラゾプレビルの主要な消失経路は糞中排泄で、投与放射能の90%超が糞中に排泄されるが、尿中排泄は1%未満であった9)。(外国人データ)
4. 肝機能障害者
Child-Pugh分類に基づく軽度(Child-Pugh A)、中等度(Child-Pugh B)及び重度(Child-Pugh C)のHCVに感染していない肝機能障害者にグラゾプレビルを1日1回10日間空腹時反復経口投与した際のAUC0-24hr(幾何平均)は、健康成人よりいずれも高く、それぞれ1.7倍、5倍及び12倍であった10)。(外国人データ)
5. 腎機能障害者
グラゾプレビルをエルバスビルとの併用によりHCVに感染していない被験者に1日1回10日間空腹時反復経口投与した際、グラゾプレビルのAUC0-24hr(幾何平均)は、腎機能正常者(糸球体濾過量が80mL/min/1.73m2超)と比較して、透析をしていない重度腎機能障害者(糸球体濾過量が30mL/min/1.73m2未満)では1.65倍、末期腎不全透析者では同程度であった(0.85倍)11)。(外国人データ)
4時間の血液透析により透析液中に回収されたグラゾプレビルは投与量の0.5%未満で、血液透析により除去されなかった11)。(外国人データ)
6. 薬物相互作用
(1) In vitro試験
In vitroデータより、グラゾプレビルはCYP3A、P-gp及びOATP1Bの基質であることが示された。また、グラゾプレビルは腸管のCYP3A及びBCRPを阻害する可能性がある。グラゾプレビルがCYP3A以外のCYP分子種、UGT1A1、エステラーゼ[カルボキシルエステラーゼ(CES)1、CES2及びカテプシンA(CatA)]、P-gp、OATP1B、有機アニオントランスポーター(OAT)1、OAT3及び有機カチオントランスポーター(OCT)2に関連した薬物相互作用を引き起こす可能性は低いと考えられる。In vitroデータからグラゾプレビルはCYPで代謝される薬物の代謝を誘導しないと考えられる12)、13)。
(2) 臨床薬物相互作用試験(外国人データ)
臨床薬物相互作用試験で認められたグラゾプレビルの血漿中薬物動態が併用薬から受ける影響及びグラゾプレビルが併用薬の薬物動態に及ぼす影響についてそれぞれ表2及び表3に示す14)~31)。
臨床薬物相互作用試験の結果より、グラゾプレビルは、CYP3A及びOATP1Bの基質であり、グラゾプレビルの吸収における腸管でのP-gpの関与は小さいことが示唆された。また、CYP3A及びBCRPの阻害作用は弱く、CYP2C8(IC50が最も低いCYP分子種)及びOATP1Bの阻害薬ではないことが示された14)、15)、27)、29)。
(表2 グラゾプレビルの薬物動態に及ぼす併用薬の影響参照)
(表3 併用薬の薬物動態に及ぼすグラゾプレビルの影響参照)
7. 心電図に及ぼす影響(外国人データ)
健康成人を対象に、グラゾプレビルがQTc間隔に及ぼす影響をプラセボ及び陽性対照とTQT試験で比較検討した。グラゾプレビル1600mgの単回投与では、プラセボで調整したQTc(Fridericiaの補正)に臨床的に有意な変化はなかった。また、グラゾプレビルの血漿中濃度とQTc変化との間に有意な相関はなかった32)。
注)本剤の承認された用法及び用量は、グラゾプレビルとして100mgを1日1回経口投与である。
表1 グラゾプレビル100mg1日1回投与時の定常状態における薬物動態パラメータ
薬物動態パラメータ 例数 AUC0-24hr
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