実験(ラット、ウサギ)において、ラットで全胚吸収の増加、発育遅延、骨化遅延、ウサギで骨格変異等が認められた(安全域※:ラット胎児で約4.4倍、ウサギ胎児で約0.9倍)。また、出生前及び出生後の発生並びに母動物の機能に関する動物実験(ラット)において、妊娠期間中における母動物の体重増加の減少、出生後の出生児の生存率低下、出生時体重減少、出生児の成長遅延等の影響が認められた(安全域※:約4.0倍)。]
※:ヒトに本剤を投与(90mg1日2回投与)したときの血漿中濃度との比較による
2.
授乳中の婦人には本剤投与中は授乳を避けさせること。[動物実験(ラット)で乳汁中に移行することが報告されている。]
小児等への投与
低出生体重児、新生児、乳児、幼児又は小児に対する安全性は確立していない(国内での使用経験がない)。
過量投与
本剤の過量投与における特異的な解毒薬はなく、チカグレロル及びその主代謝物であるAR-C124910XXは蛋白結合率が高いため、血液透析は有用な除去法ではないと考えられる。
健康成人において血小板輸血はチカグレロルによって阻害された血小板作用を回復させることなく、血小板輸血が出血発現例において臨床的ベネフィットをもたらす可能性は低いと考えられる1)。
本剤の過量投与により、出血時間延長及び出血が生じるおそれがある。出血が認められた場合には、対症療法を行うこと。また、胃腸障害、呼吸困難、及びR-R間隔延長が発現する可能性があるため、過量投与した場合には、これらの症状にも注意し、心電図によるモニタリングを考慮すること。
適用上の注意
薬剤交付時:
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。[PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔を起こして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することが報告されている。]
薬物動態
1. 血中濃度
(1) 単回投与
チカグレロル90mgを日本人健康成人男性12名に単回経口投与したとき、チカグレロル及び主代謝物AR-C124910XX(P2Y12受容体拮抗作用を有する)の薬物動態パラメータ及び血漿中濃度推移は以下のとおりであった2)。
薬物動態の表参照
図 日本人健康成人男性にチカグレロル90mgを単回経口投与したときのチカグレロル及び代謝物AR-C124910XXの血漿中濃度推移(n=12、算術平均及び標準偏差)
(2)
反復投与
日本人健康成人男性各15例及び14例にそれぞれチカグレロル100mg及び300mgを1日2回反復投与したときのチカグレロルの累積係数はそれぞれ1.4及び1.8であり、消失半減期から類推される予測値と概ね一致していた。また、AR-C124910XXの累積係数についても予測値と一致し、それぞれ1.9及び2.7であった3)。(承認外用量)
2.
吸収
チカグレロルの絶対バイオアベイラビリティの平均は約36%(範囲25.4~64.0%)であった(外国人データ)4)。チカグレロル及びAR-C124910XXのCmax及びAUCは用量30~1,260mgの範囲で概ね用量に比例して増加した5,6,7)。チカグレロル及びAR-C124910XXはP-糖蛋白質の基質8)であり、また弱い阻害剤でもある9)。(承認外用量を含む)
3.
分布
チカグレロルの定常状態分布容積は87.5Lであった(外国人データ)4)。チカグレロル及びAR-C124910XXのヒト血漿中の蛋白結合率(in vitro)はそれぞれ99.4%及び99.9%と高かった10)。
4.
代謝
チカグレロルは主に肝代謝によって血中より消失する。CYP3Aはチカグレロルの代謝とAR-C124910XXの形成に関わる主要な代謝酵素である11)。また、チカグレロル及びAR-C124910XXとCYP3Aの基質との相互作用は基質によって異なり、活性化又は阻害作用を示す12)。
チカグレロルの主代謝物はAR-C124910XXであり、血小板を用いたin vitroのP2Y12受容体結合試験において活性を示した。AR-C124910XXの全身曝露量はチカグレロルで認められる全身曝露量の概ね30~40%であった(外国人データ)6)。
5.
排泄
放射能標識したチカグレロルを投与したとき、平均で約84%の放射能が回収され、糞中には57.8%及び尿中には26.5%が回収された。尿中のチカグレロルとAR-C124910XXの回収率はともに投与された放射能の1%未満であった13)。AR-C124910XXの主要な消失経路は胆汁排泄であった(外国人データ)。
6.
性差の影響(外国人データ)
チカグレロル及びAR-C124910XXの曝露量は男性と比較して女性で高く、チカグレロルのCmax及びAUCはそれぞれ52%及び37%高く、AR-C124910XXのCmax及びAUCはそれぞれ56%及び55%高かった14)。
7.
加齢の影響(外国人データ)
高齢者におけるチカグレロル及びAR-C124910XXのCmaxは若年者と比べてそれぞれ約60%高く、AUCでは約50%高かった14)。
8.
腎機能障害の影響(外国人データ)
重度の腎機能障害者(クレアチニンクリアランス30mL/min未満)10名にチカグレロル180mgを経口投与したとき、腎機能が正常な被験者(クレアチニンクリアランス80L/min以上)と比べ、重度の腎機能障害者におけるチカグレロルのAUCは約20%低く、AR-C124910XXのAUCは約17%高かった。チカグレロルの血小板凝集阻害活性は腎機能障害者と腎機能が正常な被験者とで類似していた15)。
9.
肝機能障害の影響(外国人データ)
軽度の肝機能障害者(Child-pugh分類A)10例にチカグレロル90mgを経口投与したとき、軽度肝障害者におけるチカグレロルのCmax及びAUCは健康被験者と比べてそれぞれ12%及び23%高かったが、チカグレロルの血小板凝集阻害作用は類似していた16)。
10. 薬物相互作用(外国人データ)
(1) ケトコナゾール
健康成人男女14例にチカグレロル90mgをケトコナゾール200mgと併用投与したとき、チカグレロルのCmax及びAUCはそれぞれ135%及び632%増加した。AR-C124910XXのCmax及びAUCはそれぞれ89%及び56%低下した17)。
(2) ジルチアゼム
健康成人男女17例にチカグレロル90mgをジルチアゼム240mgと併用投与したとき、チカグレロルのCmax及びAUCはそれぞれ69%及び174%増加した。AR-C124910XXのCmaxは38%減少したが、AUCには変化は認められなかった。ジルチアゼムの血漿中濃度に対してチカグレロル併用投