テコラミンに対する心筋の感受性を高める麻酔剤,例えばハロタンなどを使用したときには,本剤投与は麻酔剤投与中止後少なくとも10分間間隔をあけるべきである。
使用上の注意
慎重投与
(次の患者には慎重に投与すること)
1.
脳浮腫患者[脳血管収縮・脳血流の減少を起こすことがある。]
2.
気管支痙攣患者[症状を悪化させるおそれがある。]
3.
重症の頻脈,不整脈および心不全の患者[症状を悪化させるおそれがある。]
4.
甲状腺機能亢進症の患者[症状を悪化させるおそれがある。]
5.
高血圧症の患者[症状を悪化させるおそれがある。]
6.
褐色細胞腫の患者[急激な昇圧発作を起こすおそれがある。]
7.
胃潰瘍疾患患者および胃の手術を受ける患者[基礎胃液分泌を刺激するおそれがある。]
**重要な基本的注意
<すべての効能・効果に関する注意>
(1)上気道閉塞のないことを確認すること。
(2)呼吸仕事量が増加し,その結果,酸素消費量が増加するので,特に点滴静注の際には,酸素を同時に投与することが必要である。
(3)静脈内注射により血栓性静脈炎を起こすことがあるので同一注射部位への長期使用は避けること。
(4)他の薬剤とともに静脈内注射する場合は,十分注意して,適切な静脈に注射し,浸潤や不注意な動脈注射は避けること。
(5)酸性溶液であるので,アルカリ溶液と混合しないこと。
(6)定期的な血液ガスの監視により避けられることであるが,過換気によるPaCO2の低下は脳血管収縮と脳血流を減少させる可能性があるので注意すること。
<麻酔時に関する注意>
(1)患者の昏睡状態が一時的に改善し,その後,再びもとの状態に戻る場合があるので,30分から1時間,十分な観察を行うこと(1回静注における効果の持続時間5~12分)。
<急性ハイパーカプニアを伴う慢性肺疾患に関する注意>
(1)慢性肺疾患による症状が感染などの誘因により,急性に増悪し,さらに高度の低酸素血症と,高炭酸ガス血症(急性ハイパーカプニア)をきたす。この急性増悪時には低酸素血症の改善のために酸素投与を行うが,酸素吸入による低酸素刺激の消失により低換気を生じPaCO2が更に上昇する。本剤は,この酸素治療下における低換気を防ぎ,PaCO2の上昇を予防するために用いる。
(2)本剤投与開始後1~2時間は動脈血液ガス分圧を30分毎に測定し,血液ガスの改善がみられないか,悪化する場合にはレスピレータの使用を考慮する。たとえば,PaO2が50Torr以上に維持できないとき,PaCO2の低下が認められずpHが7.25以下にとどまるとき又は意識レベルが悪化するときなどである。本剤投与により血液ガスの改善がみられ,重篤な副作用が生じなければ投与を継続してもよい。動脈血液ガス分圧の測定は適宜行い,血液ガスが適当なレベルに達したら投与を中断し,酸素吸入は必要に応じて継続する。本剤注入中断後,PaCO2が上昇した場合には,本剤の再投与を考慮する。
(3)本剤とレスピレータを同時に使用しないこと。
<早産・低出生体重児における原発性無呼吸(未熟児無呼吸発作)に関する注意>
(1)生後1週未満の患児,高ビリルビン血症のため光線療法を施行中の患児,肝機能障害又は腎機能障害のある患児等では,ドキサプラム及びその代謝物の血中濃度が上昇する可能性があり1-4),壊死性腸炎等の重篤な胃腸障害を含む副作用が発現するおそれがあるので,慎重に投与すること。(「重大な副作用」,「過量投与」の項参照)
**相互作用
相互作用の概略
本剤の代謝にはチトクロームP450(CYP)3A4/5が関与する。(「薬物動態」の項参照)
CYP3A4/5を阻害する薬剤との併用により,本剤の代謝が阻害されドキサプラムの血中濃度が上昇する可能性がある。また,CYP3A4/5を誘導する薬剤との併用により,本剤の代謝が促進されドキサプラムの血中濃度が低下する可能性がある。
併用注意
(併用に注意すること)
薬剤名等
交感神経興奮薬
モノアミン酸化酵素阻害剤
臨床症状・措置方法
血圧上昇をきたすので用量を調節するなど慎重に投与すること。
機序・危険因子
本剤と相乗的に作用を増強させる。
**副作用
<麻酔時,中枢神経系抑制剤による中毒時における呼吸抑制ならびに覚醒遅延,遷延性無呼吸の鑑別診断,急性ハイパーカプニアを伴う慢性肺疾患>
内科領域においては,本剤が投与された605例のうち175例(28.93%)に副作用がみられた。主なものは熱感・ほてり119件(19.67%),発汗80件(13.22%),振戦22件(3.64%),血圧上昇22件(3.64%)であった。
麻酔科領域においては,本剤が投与された2681例のうち227例(8.47%)に副作用がみられた。主なものは血圧上昇84件(3.13%),興奮状態45件(1.68%),嘔気・嘔吐30件(1.12%),頻脈29件(1.08%)であった。
重大な副作用
<すべての効能・効果>
興奮状態(1.70%),振戦(0.76%),間代性痙攣(頻度不明),筋攣縮(頻度不明),テタニー(頻度不明),声門痙攣(頻度不明)があらわれることがある。
このような症状が認められた場合には減量,投与速度の低減,休薬など適切な処置を行うこと。
<早産・低出生体重児における原発性無呼吸(未熟児無呼吸発作)>
壊死性腸炎(頻度不明),胃穿孔(頻度不明),胃腸出血(頻度不明)があらわれることがある。
本剤投与中は全身状態を十分に観察し,このような症状が認められた場合には直ちに投与を中止した上で,適切な処置を行うこと。
その他の副作用
<麻酔時,中枢神経系抑制剤による中毒時における呼吸抑制ならびに覚醒遅延,遷延性無呼吸の鑑別診断,急性ハイパーカプニアを伴う慢性肺疾患>
次のような症状が認められた場合には減量,投与速度の低減,休薬など適切な処置を行うこと。
循環器
0.1~5%未満
頻脈,不整脈,血圧上昇
血液
頻度不明
赤血球数減少,ヘマトクリット値減少
消化器
0.1~5%未満
嘔気・嘔吐
消化器
0.1%未満
下痢
肝臓
頻度不明
AST(GOT)上昇,ALT(GPT)上昇
泌尿器
頻度不明
尿蛋白,BUN上昇
泌尿器
0.1%未満
尿意
過敏