前に担当医に相談すること。
2.
本剤は,CYP3Aの選択的阻害薬であるコビシスタットを含有するため,CYP3Aにより主として代謝される薬剤と併用する場合には,併用薬の血中濃度モニタリングや診察回数を増やす,また必要に応じて併用薬の減量を考慮するなど慎重に投与すること(「相互作用」の項及び「薬物動態」の項参照)。
3.
本剤は,HIV-1感染症に対して1剤で治療を行うものであるため,他の抗HIV薬と併用しないこと。また,コビシスタットと類似の薬理作用を有しているリトナビルを含む製剤,及びエムトリシタビンと類似の薬剤耐性,ウイルス学的特性を有しているラミブジンを含む製剤と併用しないこと。
4.
エムトリシタビン又はテノホビル ジソプロキシルフマル酸塩を含む核酸系逆転写酵素阻害薬の単独投与又はこれらの併用療法により,重篤な乳酸アシドーシス及び脂肪沈着による重度の肝腫大(脂肪肝)が,女性に多く報告されているので,乳酸アシドーシス又は肝細胞毒性が疑われる臨床症状又は検査値異常(アミノトランスフェラーゼの急激な上昇等)が認められた場合には,本剤の投与を一時中止すること。特に肝疾患の危険因子を有する患者においては注意すること。
5.
本剤を含む抗HIV薬の多剤併用療法を行った患者で,免疫再構築症候群が報告されている。投与開始後,免疫機能が回復し,症候性のみならず無症候性日和見感染(マイコバクテリウムアビウムコンプレックス,サイトメガロウイルス,ニューモシスチス等によるもの)等に対する炎症反応が発現することがある。また,免疫機能の回復に伴い自己免疫疾患(甲状腺機能亢進症,多発性筋炎,ギラン・バレー症候群,ブドウ膜炎等)が発現するとの報告があるので,これらの症状を評価し,必要時には適切な治療を考慮すること。
6.
本剤投与前にクレアチニンクリアランス,尿糖及び尿蛋白の検査を実施すること。また,本剤投与後も定期的な検査等により患者の状態を注意深く観察し,腎機能障害のリスクを有する患者には血清リンの検査も実施すること。腎毒性を有する薬剤との併用は避けることが望ましい。
7.
本剤の臨床試験で,144週投与の結果において,腰椎と大腿骨頸部の骨密度の減少が認められている。また,テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩の144週投与の結果においても,腰椎と大腿骨頸部の骨密度の減少及び骨代謝マーカー(骨型アルカリホスファターゼ,血清オステオカルシン,血清I型コラーゲン架橋C-テロペプチド及び尿中I型コラーゲン架橋N-テロペプチド)の増加が認められ,骨代謝回転の亢進が示唆されている。また,血清副甲状腺ホルモン及び1,25ビタミンDの増加も認められている。病的骨折の既往のある患者又はその他の慢性骨疾患を有する患者では,十分な観察を行い,異常が認められた場合には,投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
8.
アジア系人種におけるエムトリシタビンの薬物動態は十分に検討されていないが,少数例の健康成人及びB型慢性肝炎のアジア系人種において,Cmaxの上昇を示唆する成績が得られているので,HBV感染症合併患者を含め,副作用の発現に注意すること。
9.
抗HIV薬の使用により,体脂肪の再分布/蓄積があらわれることがあるので,異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。
10.
エムトリシタビン製剤の試験において皮膚変色が発現し,その発現頻度は有色人種で高いことが示唆されている。その原因は現在のところ不明である。
相互作用
相互作用の概略
エルビテグラビル
CYP3Aで代謝され,CYP2C9に対する弱い誘導作用を有する1)。
コビシスタット
CYP3A及び一部がCYP2D6で代謝され,CYP3A及びCYP2D6を阻害し2),またP-糖蛋白,BCRP,OATP1B1及びOATP1B3を含むトランスポーターを阻害する3)。
テノホビル及びエムトリシタビン
糸球体ろ過と能動的な尿細管分泌により腎排泄される4)5)。また,テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩はCYP1Aをわずかに阻害する6)。
併用禁忌
(併用しないこと)
1.
薬剤名等
*カルバマゼピン
(テグレトール等)
フェノバルビタール
(フェノバール等)
フェニトイン
(アレビアチン等)
ホスフェニトイン
(ホストイン)
リファンピシン
(リファジン等)
セイヨウオトギリソウ
(St. John's Wort:セント・ジョーンズ・ワート)含有食品
臨床症状・措置方法
エルビテグラビル及びコビシスタットの血中濃度が著しく低下する可能性がある。
機序・危険因子
これら薬剤はCYP3Aを誘導するため。
2.
薬剤名等
ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩
(ジヒデルゴット)
エルゴタミン酒石酸塩
(クリアミン)
エルゴメトリンマレイン酸塩
(エルゴメトリン)
メチルエルゴメトリンマレイン酸塩
(メテルギン)
臨床症状・措置方法
これら薬剤の血中濃度が上昇し,重篤な又は生命に危険を及ぼすような事象(末梢血管攣縮,四肢及びその他組織の虚血等)が起こる可能性がある。
機序・危険因子
コビシスタットのCYP3Aに対する阻害作用が考えられる。
3.
薬剤名等
アスナプレビル
(スンベプラ)
臨床症状・措置方法
アスナプレビルの血中濃度が上昇し,肝臓に関連した有害事象が発現し,また重症化する可能性がある。
機序・危険因子
コビシスタットのCYP3Aに対する阻害作用が考えられる。
4.
薬剤名等
バニプレビル
(バニヘップ)
臨床症状・措置方法
バニプレビルの血中濃度が上昇し,悪心,嘔吐,下痢の発現が増加する可能性がある。
機序・危険因子
コビシスタットのCYP3Aに対する阻害作用が考えられる。
5.
薬剤名等
シンバスタチン
(リポバス)
臨床症状・措置方法
シンバスタチンの血中濃度が上昇し,重篤な有害事象(横紋筋融解症を含むミオパチー等)が起こる可能性がある。
機序・危険因子
コビシスタットのCYP3Aに対する阻害作用が考えられる。
6.
薬剤名等
ピモジド
(オーラップ)
臨床症状・措置方法
ピモジドの血中濃度が上昇し,重篤な又は生命に危険を及ぼすような事象(不整脈等)が起こる可能性がある。
機序・危険因子
コビシスタットのCYP3Aに対する阻害作用が考えられる。