回投与分の規定量を充填したプレフィルドシリンジである。シリンジから気泡を除去する際に薬液を減じるおそれがあるので、気泡を除去しないことが望ましいが、もし除去する場合には、薬液を減じないよう注意すること。
薬物動態
1. 血中濃度
健康成人にフォンダパリヌクスナトリウム0.75、2.5、8mgを単回皮下投与した時の薬物動態パラメータ及び血中濃度推移は以下のとおりであった。フォンダパリヌクスは皮下投与後速やかに吸収され、投与後約2時間で最高血中濃度に達し、消失半減期は約14~17時間であった(表-1)。
フォンダパリヌクスナトリウム0.75~8mgの単回皮下投与において、フォンダパリヌクスの薬物動態はほぼ線形性を示した。また、高齢者に1日1回反復皮下投与した結果、フォンダパリヌクスは投与3日目に定常状態に到達し、反復投与による薬物動態の変化はみられなかった。
急性肺血栓塞栓症患者及び急性深部静脈血栓症患者にフォンダパリヌクスナトリウム5mg(体重50kg未満)、7.5mg(体重50~100kg)を1日1回反復皮下投与した時の定常状態の血中フォンダパリヌクス濃度は、病態及び投与量間による大きな違いはなく、投与前及び投与後2±1時間で、それぞれ、0.485±0.164mg/L及び1.183±0.326mg/L(Mean±SD:病態別、投与量別のデータを併合)であった。
なお、急性肺血栓塞栓症患者及び急性深部静脈血栓症患者(体重100kg超)に10mgを1日1回反復皮下投与した時の定常状態の血中フォンダパリヌクス濃度は、5mg(体重50kg未満)、7.5mg(体重50~100kg)の成績と大きな違いはなかった(外国人データ)。
2. 代謝・排泄
フォンダパリヌクスナトリウムは皮下投与後、投与量の大部分が未変化体のまま尿中に排泄される。健康成人に単回皮下投与した時の投与後120時間までのフォンダパリヌクスの尿中排泄率(投与量に対する%)は、約80%であった。
下肢整形外科手術施行患者を対象とした海外臨床試験における母集団薬物動態解析の結果、フォンダパリヌクスの全身クリアランスは体重の低下に伴って低下する傾向がみられた。
フォンダパリヌクスナトリウムはCYP1A2、2A6、2C9、2C19、2D6、2E1及び3A4活性を阻害しない(in vitro)2)。
3. 腎障害患者における薬物動態(外国人データ)
腎障害患者にフォンダパリヌクスナトリウム4mgを単回静脈内投与※した結果、クレアチニンクリアランスの低下に伴いフォンダパリヌクスのAUC0-∞が増加し、消失半減期は延長した(表-2)。
下肢整形外科手術施行患者を、クレアチニンクリアランスを指標として3段階(50mL/min未満、50mL/min以上80mL/min以下、80mL/min超)に分け母集団薬物動態解析した結果、80mL/min超の患者に対する全身クリアランスは、50mL/min以上80mL/min以下の患者で20~28%、50mL/min未満の患者で37~57%低下した。
また、深部静脈血栓症患者の成績でも同様に、クレアチニンクリアランス50mL/min以上80mL/min未満の患者及び30mL/min以上50mL/min未満の患者の全身クリアランスは、80mL/min以上の患者に比べ、21%及び35%減少した。なお、30mL/min未満の患者では、80mL/min以上の患者に比べ64%減少し、血中濃度の上昇が示唆された。
4. 肝障害患者における薬物動態(外国人データ)
中等度肝障害患者にフォンダパリヌクスナトリウム7.5mgを単回皮下投与した時の薬物動態は、肝機能による影響を受けなかった。
5. 高齢者における薬物動態
高齢者にフォンダパリヌクスナトリウム2.5mgを単回皮下投与した時の薬物動態は、健康成人とほぼ類似していた。
6. 相互作用(外国人データ)
ワルファリン、アスピリン、ピロキシカム(NSAID)、又はジゴキシンと併用投与した時、フォンダパリヌクスナトリウムはいずれの併用薬物の血液凝固系の薬力学活性パラメータにも影響を及ぼさず、またジゴキシンの薬物動態にも影響を与えなかった。また、フォンダパリヌクスの薬物動態は、いずれの併用薬物による影響も受けなかった。
7. その他の薬物速度論的パラメータ
フォンダパリヌクスナトリウム2.5mgを単回皮下投与した時の絶対的生物学的利用率は101%であった。
臨床血中濃度(2μg/mL以下)での血漿蛋白結合率は97~98.6%であり、フォンダパリヌクスは主に血漿中のアンチトロンビンIII(ATIII)と結合した3)。
表-1 単回皮下投与した時の薬物動態パラメータ
投与量 Cmax
(mg/L) tmax
(hr) AUC0-∞
(mg・hr/L) t1/2
(hr)
0.75mg 0.127±0.015 1.8(1.5-2.5) -注1) 17.4±4.47
2.5mg 0.335±0.030 2.0(1.5-2.5) 6.62±1.10注2) 16.1±2.50
8mg 0.971±0.125 2.0(1.5-2.0) 16.8±1.54 13.8±0.660
Mean±SD、n=6、tmax:中央値(範囲)、注1)算出できず、注2)n=5
表-2 4mg単回静脈内投与時の腎機能別の薬物動態パラメータ
クレアチニンクリアランス(mL/min)(被験者数) >90
(n=5) 61-90
(n=5) 31-60
(n=5) 10-30
(n=5)
Cmax(mg/L) 0.914±0.207 1.063±0.240 1.052±0.179 1.009±0.175
AUC0-∞(mg・hr/L) 7.6±1.2 11.5±2.0 18.3±4.7 43.8±8.7
t1/2(hr) 13.1±3.6 17.9±0.94 28.7±7.5 71.5&plusm