量投与
徴候・症状
海外臨床試験において、1680mgを投与後にGrade 4注)の肝酵素上昇(AST(GOT)及びALT(GPT))が報告されている。また、1回420mgを超える用量を投与した際に、敗血症、ヘモグロビン減少、白血球数減少、疲労、下痢、悪心、便秘、消化不良、胃食道逆流性疾患、喀血、挫傷等が認められている。
処置
本剤に対する特別な解毒剤はない。過量投与した場合には、十分に観察を行い、必要に応じて適切な支持療法を行うこと。
注)CTCAE(Common Terminology Criteria for Adverse Events)version 4.0に準じる。
適用上の注意
薬剤交付時
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。[PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することが報告されている。]
その他の注意
イブルチニブの血中濃度の上昇に伴い、出血事象の発現率が高くなる傾向が認められたとの報告がある。
薬物動態
1. 吸収・血漿中濃度
(1) 単回及び反復投与1)
再発又は難治性成熟B細胞性腫瘍患者にイブルチニブ140mg~560mg注)を単回又は反復経口投与したとき、血漿中イブルチニブ濃度は用量によらず、投与後1~2時間(中央値)に最高濃度に達し、4~9時間(平均値)の消失半減期で消失した。血漿中イブルチニブのCmax及びAUCは個体間変動が大きいが、用量の増加に伴って増加した。反復経口投与による累積率は1.6未満であった。
再発又は難治性成熟B細胞性腫瘍患者にイブルチニブ420mgを単回(Day 1)又は反復(Day 8)経口投与したときの血漿中イブルチニブ濃度推移
(平均値+標準偏差)
(2) 絶対的バイオアベイラビリティ及び食事の影響(外国人成績)
健康成人にイブルチニブ560mg注)を絶食時※及び食前30分に経口投与し、経口投与の2時間後に13C-イブルチニブ(100μg)を静脈内投与したときの絶対的バイオアベイラビリティはそれぞれ、2.9%(90%CI:2.1~3.9%)及び7.6%(90%CI:6.4~9.0%)であった2)。
健康成人にイブルチニブ420mgを経口投与したときのCmax及びAUClastは、食前30分、食後30分又は食後2時間に投与したときと比較して絶食時※にはそれぞれ約30~40%及び約60%に低下した3)。再発又は難治性慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫患者にイブルチニブ420mgを経口投与したときのCmax及びAUC0-24hは、食事の30分以上前又は2時間以上後に経口投与(modified fasting投与)したときと比較して絶食時※にはそれぞれ約40%及び約60~70%に低下した4)。
※一晩絶食後にイブルチニブを経口投与し、その後4時間絶食
2. 分布(外国人成績)
イブルチニブのヒト血漿蛋白結合率は97.3%であり、検討された濃度域(in vitro、50~1000ng/mL)で概ね一定であった5)。健康成人に13C-イブルチニブ(100μg)を静脈内投与したときの定常状態における分布容積は683L2)、再発又は難治性慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫患者にイブルチニブ420mgを単回経口投与したときのみかけの分布容積(Vdz/F)は10837Lであった4)。
3. 代謝
イブルチニブは主にCYP3A4/5により代謝される(in vitro)6),7)。主な代謝物であるジヒドロジオール体は、ブルトンチロシン型キナーゼ(BTK)に対してイブルチニブの約1/15の阻害活性を示す8)。ジヒドロジオール体の定常状態における曝露量は、イブルチニブと同程度であった1)。
4. 排泄(外国人成績)
健康成人に14C-イブルチニブ1480kBqを含むイブルチニブ140mg注)を単回経口投与したとき、放射能の約90%が168時間以内に回収され、糞中では80%、尿中では10%以下であった。イブルチニブの回収率は、糞中で1%、尿中には認められなかった9)。
健康成人に13C-イブルチニブ(100μg)を静脈内投与したときの全身クリアランス(CL)は、絶食時及び食前30分においてそれぞれ62及び76L/hであった2)。健康成人にイブルチニブ560mg注)を経口投与したときのみかけの全身クリアランス(CL/F)は、絶食時及び食前30分においてそれぞれ1572及び875L/hであった2)。
5. 肝機能障害患者(外国人成績)10)
軽度の肝機能障害(Child-Pugh分類A)患者6例、中等度の肝機能障害(Child-Pugh分類B)患者10例及び重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)患者8例にイブルチニブ140mg注)を単回経口投与したときのAUClastの幾何平均値は正常肝機能被験者と比較して2.7、8.2及び9.8倍高かった。また、非結合分画も肝機能障害の程度に応じてわずかに増加し、非結合型イブルチニブのAUClastはそれぞれ4.1、9.8及び13倍増加すると推定される。
6. 相互作用
<ケトコナゾール>(外国人成績)11)
健康成人(18例)にCYP3Aの阻害作用を有するケトコナゾール(経口剤:国内未発売)400mg(4~9日目に投与)とイブルチニブ120mg及び40mg注)(それぞれ1日目及び7日目に投与)を併用投与(絶食時)したとき、イブルチニブのCmax及びAUCはそれぞれ約29及び24倍増加した。
<リファンピシン>(外国人成績)12)
健康成人(18例)にCYP3Aの誘導作用を有するリファンピシン600mg(4~13日目に投与)とイブルチニブ560mg注)(1日目及び11日目に投与)を併用投与(絶食時)したとき、イブルチニブのCmax及びAUCはそれぞれ約1/13及び1/10以下に減少した。
<グレープフルーツジュース>(外国人成績)2)
健康成人(8例)にCYP3Aの阻害作用を有するグレープフルーツジュースとイブルチニブ140mg注)を併用投与(非絶食時)したとき、イブルチニブのCmax及びAUCはそれぞれ約3.6及び2.1倍増加した。
<生理学的薬物動態モデルによるシミュレーション>13)
イブルチニブ140mg注)とCYP3A阻害作用を有するイトラコナゾール、クラリスロマイシン、ボリコナゾール、エリスロマイシン及びジルチアゼムを併用投与(非絶食時)した場合、イブルチニブのAUCはそれぞれ、約15、11、7.6、7.1及び4.4倍増加することが推定された。
イブルチニブ560mg注)とCYP3A阻害作用を有するフルボキサミン及びアジスロマイシンを併用投与(非絶食時)した場合、イブルチニブのAUCはそれぞれ、約1.7及び1.5倍増加することが推定された。