婦人には投与しないこと[動物実験(マウス、ラット、ウサギ)で胎児あるいは出生児において筋骨格系の異常、性腺の発育障害、体重・体長の減少及び生殖機能への影響が認められたとの報告がある4)]。
2.
授乳婦に投与する場合には授乳を中止させること[授乳中の投与に関する安全性は確立していない]。
小児等への投与
小児55例(年齢0~18歳未満)を対象とした海外臨床試験において、小児に特徴的な副作用と考えられる症状等は認められなかった(「副作用」の項参照)。本剤を前治療薬として用いた造血幹細胞移植を小児に施行するにあたっては、成長障害等の可能性を十分に考慮した上で行うこと。
過量投与
本剤の過量投与に関する情報は乏しく、本剤に対する解毒剤あるいは過量投与に対する確立された処置方法はないため、用法・用量に定められている投与量を超えて投与しないこと。なお、ブスルファンは透析により除去可能であるとの報告があることから、過量投与の場合透析を考慮すること5)。
適用上の注意
1. 投与経路
直接末梢静脈に投与すると薬液の漏出による局所の組織障害を起こすことがあるので、必ず中心静脈からの点滴静脈内投与とし、皮下、筋肉内には投与しないこと。
2. 調製時
(1)
本剤は10倍量の生理食塩液又は5%ブドウ糖液に添加し、十分に混和して使用すること。
(2)
本剤は室温(約25℃)で用時調製し、調製から8時間以内に投与を終了すること。
(3)
調製後に混濁又は結晶が認められる場合は使用しないこと。
(4)
ポリカーボネート製の容器・シリンジ等及びポリエーテルスルホン製のシリンジフィルターは使用しないこと。
3. 投与時
(1)
他の注射剤との配合又は混注は行わないこと。
(2)
中心静脈カテーテルを留置して投与すること。
(3)
インラインフィルターを用いて、又は点滴用セットにフィルターを装着して本剤を投与する場合は、ポリエーテルスルホン製、ポリスルホン製又はポリエステル製のフィルターのものを使用すること。
(4)
ポリカーボネート製の三方活栓や延長チューブ等を使用した場合、そのコネクター部分にひび割れが発生し、血液及び薬液漏れ、空気混入等の可能性があるので注意すること。
4. 投与速度
本剤の投与においては希釈調製された全量が1回2時間で投与されるよう、持続注入ポンプを用いて点滴静脈注射すること(急速静脈内投与を行わないこと)。
その他の注意
1.
ブスルファンは、遺伝毒性が報告されている4)。
2.
添加物であるN,N-ジメチルアセトアミド(DMA)については、海外臨床試験において、肝トランスアミナーゼの上昇を伴う肝毒性及び幻覚等の神経毒性が報告されている6)。また、ラットでのDMA 2g/kgの単回腹腔内投与、1g/kgの経皮投与において胎児への催奇形性が認められたとの報告がある7)。
3.
ブスルファン投与により、動物実験において雄ラットの不妊の誘発、精子形成阻害、また、マウスの卵母細胞の減少が認められたとの報告がある4)。
4.
ブスルファン投与により、動物実験(マウス、ラット)においてがん原性が示唆されたとの報告がある8)。また、ブスルファンを投与した患者に二次発がんが認められたとの報告がある8)。
薬物動態
1. 血漿中濃度
(1) 国内臨床試験
悪性腫瘍患者に、1回0.8mg/kgの用量で6時間毎に1日4回、4日間静脈内投与したときの血漿中未変化体濃度は、投与時間の経過とともに上昇し、投与終了直前でCmaxが観察され、投与終了後速やかに減少した。
血漿中ブスルファン濃度の推移(平均値±標準偏差)
薬物動態パラメータは以下のとおりであり、反復投与による薬物動態の変動はみられなかった。他の報告においても、同様の薬物動態パラメータの値が示されている9), 10)。
薬物動態表1(ブスルファンの薬物動態パラメータ(平均値±標準偏差))参照
(2) 海外臨床試験(小児)
悪性腫瘍又は非悪性腫瘍患者に、1回0.8~1.2mg/kgの用量で6時間毎に1日4回、4日間静脈内投与したときの血漿中未変化体濃度を用いて算出した薬物動態パラメータは以下のとおりである。反復投与による薬物動態の変動はみられなかった11)。
薬物動態表2(ブスルファンの薬物動態パラメータ(平均値±標準偏差))参照
2. 代謝(外国人によるデータ)
ブスルファンは、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)によるグルタチオン抱合を第一段階とする代謝あるいは内因性物質との非特異的アルキル化による共有結合生成によって不活化される12), 13)。
薬物動態の表
1. 薬物動態表1
投与回数 |
例数 |
Cmax(ng/mL) |
t1/2(hr) |
AUC*1(μmol・min/L) |
CL/ABW*2(mL/min/kg) |
VZ/ABW(L/kg) |
1回目 |
29 |
994±123 |
2.66±0.40 |
1171±220 |
2.66±0.44 |
0.60±0.05 |
9回目 |
28*3 |
1311±192 |
2.86±0.38 |
1242±206 |
2.46±0.37 |
0.60±0.07 |
*1 投与1回目はAUC0-∞を、投与9回目はAUCSSをそれぞれ示す。
*2 ABWは実体重を示す。
*3 投与9回目のCmaxについては29例である。
2.
薬物動態表2