透析等で対処すること。また、脱水症状が認められた場合には、水分の補給を行う等の適切な処置をすること。
適用上の注意
1.
静脈内に投与しないこと。
2.
下痢、腹痛、悪寒等の予防のため、本剤をあらかじめ体温程度に温めてから注入すること。
3.
本剤はカリウムを含まないため、血清カリウム値が正常あるいは低値の場合、またジギタリス治療中の患者では症状に応じて本剤中のカリウム濃度が1~4mEq/Lになるように補正して使用すること。
4.
インスリン依存性糖尿病の患者は本剤投与開始後、インスリンの用量の変更が必要となることがある。血糖値の定期的なモニターを行い、インスリンの用量を必要に応じて調整すること。
5.
インスリンの投与経路として腹腔内投与は認められておらず、本剤との混合によりインスリンの力価が変動するため、インスリンを本剤と混合して投与しないこと。
その他の注意
1.
本剤の長時間貯留により、腹腔内圧が上昇し腰痛の増悪・腹膜壁ヘルニアの発症等の可能性があるため、限外濾過量の増加に注意を払うこと。(「薬効薬理」の項参照)
薬物動態
海外データ6)では、本剤2Lを腹膜透析療法施行中の慢性腎不全患者13例に12時間、単回腹腔内貯留した時、血漿中総デキストリン濃度は速やかに上昇し、腹腔内貯留開始後12.8時間で最高値に到達した。血漿中総デキストリンの消失半減期は、12時間の貯留終了後15.2時間であった(下表)。反復投与による蓄積性は認められなかった。
単回腹腔内貯留時の血漿中総デキストリン濃度パラメータ
(平均値±標準誤差、n=13)
クリアランス
(L/hr) Tmaxa)
(hr) Cmaxb)
(g/L) AUCc)
(g・hr/L) T1/2d)
(hr)
1.0946±0.1413 12.77±0.15 2.2949±0.1647 125.28±13.43 15.20±0.89
a)12時間の貯蓄開始後Cmax時間
b)血漿中最高濃度
c)血漿中濃度曲線下面積
d)12時間の貯蓄終了後血漿中濃度半減期到達時間
臨床成績
国内で実施された臨床試験7)における本剤使用時の限外濾過量は、8時間貯留で421mL(n=25)と1.36及び2.27%ブドウ糖含有腹膜透析液と比較して有意に高く、12時間貯留では392mL(n=18)であった。負の限外濾過量を認めた患者数は、1.36及び2.27%ブドウ糖含有腹膜透析液と比較して有意に少なかった。また、8時間貯留時の腹膜透析クレアチニンクリアランス及び尿素窒素クリアランスは、1.36及び2.27%ブドウ糖含有腹膜透析液と比較して有意に高かった。
薬効薬理
本剤は、浸透圧物質として7.5%イコデキストリン(グルコースポリマー)を含有する腹膜透析液である。本剤の特長として、慢性腎不全患者において長時間にわたり過剰な体内水分を持続的に除去(限外濾過)する。大分子物質であるイコデキストリンは、腹膜を介してコロイド(膠質)浸透圧較差を形成することにより限外濾過をもたらすとされている8、9)。本剤及びブドウ糖含有腹膜透析液それぞれの貯留時間と除水量の関係を下図に示した。なお、データは文献及びシミュレーションによる参考値である。また本剤は、腹膜を介する濃度較差に基づく拡散作用によりクレアチニン、尿素、尿酸等の老廃物を持続的に除去する。更に本剤は、生理的レベルの電解質を含有するため血清電解質バランスを正常に維持し、アルカリ化剤として乳酸を含有するため酸塩基平衡を是正する。
図 本剤とブドウ糖含有腹膜透析液の除水カーブ7, 9, 10, 11)
有効成分に関する理化学的知見
本剤は、浸透圧物質としてイコデキストリンを含有する腹膜透析液である。イコデキストリンは、トウモロコシデンプンを加水分解して製造及び精製されたもので、α(1-4)グリコシド結合からなる主鎖にα(1-6)グリコシド結合による分岐を有するグルコースポリマーである。重量平均分子量は13,000~19,000、数平均分子量は5,000~6,500である。イコデキストリンの化学構造式を以下に示す。
取扱い上の注意
1.
誤用を避けるため、他の外箱カートンへ入れ替えないこと。
2.
幼児の手の届かないところへ保管すること。
3.
外袋は水蒸気の過度の透過を防ぐためのものであるため、万一破れている場合は使用しないこと。
4.
外袋内に水滴が観察されるが、蒸気滅菌のためであり、液漏れによるものではない。
5.
フランジブルシールは折れやすいので取扱いに注意すること。また、使用前に折れている場合は使用しないこと。
6.
ポートやチューブをバッグからはがす時に、バッグを破り液漏れを起こすおそれがあるので丁寧にはがすこと。
7.
バッグにスパイクを挿入する際には、ポートを突き破ることがないように注意して行うこと。
8.
低温で注液をすると腹痛を起こすおそれがあるため、製品は専用の医療用加温器を用いて、体温程度に用時加温すること。
9.
注液準備手順及びツインバッグ操作方法の概略(操作手順については必ず対象医療機器の取扱い説明書及び操作手順マニュアルを参照のこと)
(1)
交換準備がすべて整ってから、外袋を破って開封し、本剤を取り出す。
(2)
液が無色~微黄色の澄明で異常が認められないこと、及び各部の接合が完全であることを確認すること。そうでない場合は無菌性が損なわれているおそれがあるので使用しないこと。
(3)
バッグを強く押して漏れの有無を調べること。また、同時にチューブに亀裂がないか確認すること。万一漏れやチューブの亀裂がみられる場合には無菌性が損なわれているおそれがあるので使用しないこと。
(4)
容器下部の注入口から保護キャップを取り除き、患者側チューブ又は対象医療機器の注・排液セットと接続する。
(5)
バッグ上部の穴を用いて、容器をつり下げ注液する。
(6)
ツインバッグの注・排液方法は次のとおり行う。
患者側の接続チューブ先端のキャップを外す。本品の接続チューブコネクターを患者側の接続チューブ先端と接続する。腹腔内貯留液を本品の排液側チューブ経由で排液バッグに排出する。排出後、患者側の接続チューブをクランプし、本品の薬液充填バッグの液流出口のフランジブルシールを開放し、新しい透析液で回路内を洗浄し、排液側チューブ経由で排液バッグに流す。その際、チューブの亀裂や漏れがみられる場合には、使用を中止し