剤の投与にあたっては特に清潔な環境下で無菌的操作により行うと共に次のことに注意すること。
(1)
腹膜カテーテルの管理及び腹膜カテーテル出口部分の状態には十分注意すること。
(2)
腹膜炎が発生すると排液が濁るので、その早期発見のために、毎排液後、液の混濁状態を確認すること(腹膜炎発生時の液の混濁状態は正常排液2,000mLに対して牛乳1mLを添加した液の混濁状態を参考とすることができる)。排液の混濁が認められた場合、直ちに医師に報告すること。医師は抗菌薬投与の必要性を考慮すること。
(3)
本剤使用時に原因不明の排液混濁が認められた場合、直ちに本剤の使用を中止すること。使用中止により排液混濁が消失した場合、注意深い観察下においてのみ使用を再開すること。再開後に、再び原因不明の排液混濁が認められる場合は、本剤の使用を中止し、再投与しないこと。
6.
長期の腹膜透析実施において硬化性被嚢性腹膜炎(SEP)を合併することがある3)ので、発症が疑われたら直ちにCAPDを中止し、血液透析に変更すること。発症後は、経静脈的高カロリー輸液を主体とした栄養補給を行い、腸管の安静を保つ。嘔吐がある場合は胃チューブにより胃液を持続吸引する。本症は必ずイレウス症状を伴うが、診断には次の臨床症状、血液検査所見及び画像診断が参考になる。
臨床症状:
低栄養、るいそう、下痢、便秘、微熱、血性排液、局所性又はびまん性の腹水貯留、腸管ぜん動音低下、腹部における塊状物触知、除水能の低下、腹膜透過性の亢進
血液検査所見:
末梢白血球数の増加、CRP陽性、低アルブミン血症、エリスロポエチン抵抗性貧血、高エンドトキシン血症
画像診断:
X線検査、超音波検査、CT検査
7.
定期的に血液生化学検査及び血液学的検査等を実施すること。特に、本剤使用時には血清ナトリウム及びクロール値の低下並びにアルカリホスファターゼ値の上昇が認められるので注意すること。
副作用
副作用等発現状況の概要
海外臨床試験を含む対象537例(国内44例、海外493例)中、135例(25.1%)に臨床検査値の変動を含む副作用が報告された。その主なものは、発疹27例(5.0%)、低血圧17例(3.2%)、高血圧14例(2.6%)、血液浸透圧上昇13例(2.4%)、脱水10例(1.9%)、浮動性めまい9例(1.7%)、腹痛8例(1.5%)、剥脱性皮膚炎8例(1.5%)、そう痒症8例(1.5%)、低クロール血症4例(0.7%)等であった。(承認時)
重大な副作用
(心・血管障害)
急激な脱水による循環血液量減少、低血圧、ショック等があらわれることがあるので、このような場合には本剤の投与を中止し、輸血、生理食塩液、昇圧剤の投与等適切な処置を行うこと。
その他の副作用
皮膚および皮下組織障害
(5%以上)
発疹
皮膚および皮下組織障害
(5%未満)
皮膚障害、皮膚乾燥、皮膚潰瘍、湿疹、そう痒症、剥脱性皮膚炎、爪の障害、乾癬、水疱性皮膚炎、顔面浮腫
筋骨格系および結合組織障害
(5%未満)
筋痙攣、筋痛、頚部痛
神経系障害
(5%未満)
浮動性めまい、錯感覚、味覚消失、頭痛、構語障害、運動過多
耳および迷路障害
(5%未満)
耳鳴
精神障害
(5%未満)
不安、神経過敏、思考異常
胃腸障害
(5%未満)
口内乾燥、腹痛、腹膜炎、下痢、消化不良、悪心、嘔吐、便秘、胃腸障害、鼓腸、腹部膨満、胃炎、腸閉塞、胃潰瘍
内分泌障害
(5%未満)
副甲状腺障害
心臓障害
(5%未満)
肺水腫、頻脈、心臓血管疾患
血管障害
(5%未満)
低血圧、高血圧
呼吸器、胸郭および縦郭障害
(5%未満)
呼吸困難、肺障害、咳嗽増悪、しゃっくり
血液およびリンパ系障害
(5%未満)
貧血、白血球増加症、好酸球増加症
腎および尿路障害
(5%未満)
腎臓痛
全身障害および投与局所様態
(5%未満)
無力症、胸痛、疼痛、浮腫、末梢性浮腫、倦怠感、口渇、血性排液
全身障害および投与局所様態
(頻度不明)
発熱
代謝および栄養障害
(5%未満)
低ナトリウム血症、低クロール血症、低マグネシウム血症、低蛋白血症、高血糖、食欲不振、脱水、循環血液量減少、循環血液量増加、低血糖症
代謝および栄養障害
(頻度不明)
低カリウム血症
感染症および寄生虫症
(5%未満)
せつ、感染
傷害、中毒および処置合併症
(5%未満)
損傷、カテーテル機能不全
臨床検査
(5%未満)
アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加、アラニン・アミノトランスフェラーゼ増加、血中アルカリホスファターゼ増加、β2ミクログロブリン増加、血液浸透圧上昇、体重減少、体重増加、尿量減少
副作用が認められた場合には、投与の中止等必要に応じて適切な処置を行うこと。
妊婦、産婦、授乳婦等への投与
妊婦又は授乳婦に対する安全性は確立されていないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人、あるいは授乳婦には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
小児等への投与
低出生体重児、新生児、乳児、幼児又は小児に対する安全性は確立されていない。
臨床検査に及ぼす影響
1.
本剤の代謝物が血清アミラーゼの測定を妨害し低値を示す4)ので、本剤を使用中又は使用中止後2週間以内に膵機能検査を行う場合、血清アミラーゼ以外の血清リパーゼ等の検査を行うこと。
2.
グルコース脱水素酵素(GDH)法を用いた血糖測定法ではマルトースや本剤に含まれるイコデキストリン代謝物が測定結果に影響を与え、実際の血糖値よりも高値を示す場合があることが報告されている5)。インスリン投与が必要な患者においては、インスリンの過量投与につながり低血糖を来すおそれがあるので、本剤を投与されている患者の血糖値の測定には、イコデキストリンやマルトースの影響を受ける旨の記載がある血糖測定用試薬及び測定器は使用しないこと。なお、交差反応はグルコース脱水素酵素(GDH)法の中でもGDH-PQQ法(補酵素としてピロロキノリンキノンを使用した方法)で報告されている。
過量投与
24時間以内に2回以上投与した際に、血漿中総デキストリン及びイコデキストリン代謝物(マルトース等)濃度が増加すると考えられる。この場合には、イコデキストリンを含まない腹膜透析液又は血液