態
1. 血清中濃度
1~7歳の小児患者に3mg(力価)/kgを食後単回経口投与したときのセフカペンの血清中濃度及び薬物動態パラメータを図1・表1に示す 1)。
表1 薬物動態パラメータ参照
2. 分布
〔参考:フロモックス錠(成人)のデータ〕
喀痰,肺組織,胸水,扁桃組織,中耳分泌液,上顎洞粘膜・貯留液,皮膚組織,胆汁・胆嚢組織,女性性器組織,抜歯創貯留液,口腔内嚢胞壁等への移行は良好であった。
なお,乳汁中への移行は認められなかった 2)。
3. 代謝
セフカペン ピボキシル塩酸塩水和物は吸収時に腸管壁のエステラーゼにより加水分解され,抗菌活性体であるセフカペンとピバリン酸及びホルムアルデヒドになる。セフカペンはほとんど代謝されることなく主として腎から排泄される。ピバリン酸はカルニチン抱合を受け,ほぼ100%がピバロイルカルニチンとして速やかに尿中に排泄される。ホルムアルデヒドは大部分が二酸化炭素として呼気中に排泄される 3)~5)。
4. 排泄
セフカペンは主として糸球体ろ過及び尿細管分泌により腎から尿中に排泄される 6)。小児4例に3mg(力価)/kgを食後単回経口投与したときの尿中回収率は0~8時間で約20~30%であった 1)。
5. その他
〔参考:フロモックス錠(成人)のデータ〕
血清蛋白結合率:健康成人での血清蛋白結合率は,血清中濃度1~4μg/mLの範囲で約45%とほぼ一定であった 7)。
薬物動態の表
表1 薬物動態パラメータ
投与量
〔mg(力価)/kg〕 n Cmax
(μg/mL) Tmax
(hr) AUC0-∞
(μg・hr/mL) T1/2
(hr)
3 5 1.03±0.48 2.4±1.5 3.99±2.77 1.27±0.65
(測定法:bioassay)(mean±S.D.)
臨床成績
承認時における一般臨床試験での有効性評価対象例は251例であり,有効率は95.6%(240例)であった 1)。
表2 臨床成績参照
臨床成績の表
表2 臨床成績
疾患 有効例数/有効性評価対象例数 有効率(%)
皮膚科領域感染症 29/33 87.9
呼吸器感染症 152/157 96.8
尿路感染症 19/21 90.5
耳鼻科領域感染症 9/9 -
猩紅熱 31/31 100
薬効薬理
1. 薬理作用
抗菌作用
(1) セフカペン ピボキシル塩酸塩水和物は吸収時に腸管壁のエステラーゼにより加水分解を受け 3),活性体であるセフカペンとして抗菌力を示す 8)。
(2) セフカペンは試験管内では好気性及び嫌気性のグラム陽性菌からグラム陰性菌まで幅広い抗菌スペクトルを有する 8),9)。
また,ペニシリン耐性肺炎球菌及びアンピシリン耐性インフルエンザ菌に対しても抗菌力を示す 10),11)。
(3) セフカペンは試験管内では各種細菌の産生するβ-ラクタマーゼに安定である 8),12)。
(4) 抗菌作用は試験管内では殺菌的であり,最小殺菌濃度は最小発育阻止濃度とほぼ一致している 8)。
2. 作用機序
セフカペンは細菌の細胞壁合成を阻害することにより抗菌作用を発揮し,その作用は殺菌的である。黄色ブドウ球菌では致死標的といわれているPBP(ペニシリン結合蛋白)1,2,3のすべてに高い結合親和性を示した。また,大腸菌及びプロテウス・ブルガリスでは隔壁合成に必須な酵素であるPBP3に高い結合親和性を示した 10),12)。
有効成分に関する理化学的知見
一般的名称:
セフカペン ピボキシル塩酸塩水和物(JAN)[日局]
Cefcapene Pivoxil Hydrochloride Hydrate
略号:
CFPN-PI
化学名:
2,2-Dimethylpropanoyloxymethyl (6R,7R)-7-[(2Z)-2-(2-aminothiazol-4-yl)pent-2-enoylamino]-3-carbamoyloxymethyl-8-oxo-5-thia-1-azabicyclo[4.2.0]oct-2-ene-2-carboxylate monohydrochloride monohydrate
分子式:
C23H29N5O8S2・HCl・H2O
分子量:
622.11
化学構造式:
性状:
白色~微黄白色の結晶性の粉末又は塊で,わずかに特異なにおいがある。
N,N-ジメチルホルムアミド又はメタノールに溶けやすく,エタノール(99.5)にやや溶けやすく,水に溶けにくく,ジエチルエーテルにほとんど溶けない。
融点:
約135 ℃(分解)
分配係数:
104[pH7,1-オクタノール/緩衝液]
取扱い上の注意
瓶入り-乾燥剤付きの瓶包装としている。
使用の都度密栓すること。
包装
フロモックス小児用細粒100mg:瓶100g
フロモックス小児用細粒100mg:SP120包(0.5g×120包)
主要文献及び文献請求先
主要文献名
〔文献請求番号〕
1) 藤井良知ほか:Jpn.J.Antibiot.,1995,48(7),921〔199500753〕
2) 塩野義製薬集計;山崎透ほか:Chemotherapy,1993,41(S-1),358〔199302549〕を含む計28文献
3) 木村靖雄ほか:Chemotherapy,1993,41(S-1),163〔199302526〕
4) Totsuka,K.et al.:Antimicrob.Agents Chemother.,1992,36(4),757〔