への移行がみられており,また,類似化合物(ハロペリドール)でヒト母乳中への移行が報告されている.〕
小児等への投与
小児等に対する安全性は確立していない.〔使用経験がない.〕
過量投与
症状
主な症状は,低血圧,過度の鎮静,重症の錐体外路症状(筋強剛,振戦,ジストニア症状)等である.また,呼吸抑制および低血圧を伴う昏睡状態や心電図異常(Torsades de pointesを含む)があらわれることがある.
処置
特異的な解毒剤はないので,維持療法を行う.呼吸抑制があらわれた場合には,気道の確保,人工呼吸等の適切な処置を行う.低血圧や循環虚脱があらわれた場合には,輸液,血漿製剤,アルブミン製剤,ノルアドレナリン等の昇圧剤(アドレナリンは禁忌)等の投与により血圧の確保等の処置を行う.また,QT延長,不整脈等の心電図異常に注意すること.重症の錐体外路症状に対しては,抗パーキンソン剤を投与する.〔「重要な基本的注意」の項参照〕
適用上の注意
1. 投与経路
筋肉内注射にのみ使用し,深部に注射すること.
2. 筋肉内注射時
組織・神経等への影響を避けるため,下記の点に注意すること.
(1)
同一部位への反復注射は避けること.また,小児には特に注意すること.
(2)
神経走行部位を避けるよう注意すること.
(3)
注射針を刺入したとき,激痛を訴えたり血液の逆流をみた場合には,直ちに針を抜き,部位をかえて注射すること.
(4)
局所の発赤,腫脹,疼痛,硬結等がみられることがある.
3. アンプルカット時
異物の混入を避けるため,エタノール綿等で清拭することが望ましい.
その他の注意
1.
本剤による治療中,原因不明の突然死が報告されている.
2.
外国で実施された認知症に関連した精神病症状(承認外効能・効果)を有する高齢患者を対象とした17の臨床試験において,非定型抗精神病薬投与群はプラセボ投与群と比較して死亡率が1.6~1.7倍高かったとの報告がある.また,外国での疫学調査において,定型抗精神病薬も非定型抗精神病薬と同様に死亡率の上昇に関与するとの報告がある.
3.
類似化合物(ハロペリドール)を雌マウスに長期間経口投与した試験において,臨床最大通常用量の10倍(1.25mg/kg/日)以上で乳腺腫瘍の発生頻度が,また,40倍(5mg/kg/日)以上で下垂体腫瘍の発生頻度が,対照群に比し高いとの報告がある.
薬物動態
1. 血清中濃度1)
下記の表を参照。
2. 血清蛋白結合率1)
90.9%(統合失調症患者,血清中ハロペリドール濃度7~23ng/mL,平衡透析法)
3. 主な代謝産物および代謝経路2, 3)
ハロペリドールデカン酸エステルは筋肉内投与後ハロペリドールとなり,カルボニル基の還元化のほか,酸化的脱アルキル化,グルクロン酸抱合等により代謝される.代謝産物である還元型ハロペリドールも酸化的脱アルキル化およびグルクロン酸抱合を受け,またハロペリドールへ逆酸化される.
4. 排泄経路および排泄率
排泄経路4)(参考)
尿中および糞便中(ラット)
排泄率2)
投与後14日間の尿中には,4-フルオロフェニルアセツール酸,ハロペリドールのグルクロン酸抱合体等の代謝物が計18.4%排泄された.〔健康成人,10mg(ハロペリドールとして)1回筋肉内投与〕
5. 代謝酵素5, 6)
チトクロームP-450分子種
CYP2D6,CYP3A4(ハロペリドール)
薬物動態の表
〔統合失調症患者,100mg(ハロペリドールとして)1回筋肉内投与〕
Tmax(日) Cmax(ng/mL) t1/2(日)
5~14 1.0~3.8 27.2
臨床成績
二重盲検比較試験を含む総計619例についての臨床成績は下表のとおりである7~14).
また,二重盲検比較試験において,経口投与によるハロペリドールの1日量の20倍を1回投与量として,本剤を4週間に1回,計6回投与した場合,ハロペリドール経口剤の24週間連続投与と同等の有用性が認められた14).
臨床成績の表
対象疾患 改善率
中等度改善以上 改善率
軽度改善以上
統合失調症 30%(187/619) 60%(371/619)
薬効薬理
1. 薬理作用
ハロペリドールデカン酸エステルは,それ自体ではハロペリドールのもつ薬理活性を示さず,筋肉内投与後加水分解され,血中にハロペリドールを徐々に放出することにより,ハロペリドールとしての薬理作用をもたらす.
(1)
ハロペリドールデカン酸エステル自体は,ラット線条体への3H-スピペロンの結合抑制をみたin vitro試験では,ハロペリドールの1/40の活性を示したのみであり,またマウスの脳室内投与による脳内ドパミン代謝物増加作用についても,ほとんど影響を与えなかった15).
(2)
マウスおよびラットに筋肉内投与した実験で,条件回避反応に対する持続的な抑制作用15)が,またイヌに筋肉内投与した実験で,アポモルヒネ誘発嘔吐に対する持続的な抑制作用16)が認められた.
(3)
本剤の活性成分であるハロペリドールは,次のような行動薬理作用を示すことが動物実験で認められており,その作用はフェノチアジン系のクロルプロマジンよりも強く,特に抗アポモルヒネ作用,抗アンフェタミン作用はクロルプロマジンの約30~40倍の強さである.(下表参照)
2. 作用機序
ハロペリドールの作用機序については,中枢神経系におけるドパミン作動系,ノルアドレナリン作動系等に対する抑制作用が想定されている20~22).
薬効薬理の表
作用の種類 動物種 ED50(mg/kg)
ハロペリドール ED50(mg/kg)
クロルプロマジン
抗アポモルヒネ作用
gnawing ラット17) 0.20 6.5
抗アポモルヒネ作用
vomiting イヌ18) 0.018 0.70
抗アンフェタミン作用 ラット17) 0.038 1.1
条件回避反応抑制作用
(ジャンピングボックステスト) ラット17) 0.058 0.93
自発運動抑制作用 マウス19) 0.9 7.0
ヘキソバルビタール睡眠増強