概要 に関する項目
1.開発の経緯
ゼルヤンツ(一般名:トファシチニブクエン酸塩)は、米国ファイザー社にて創製されたヤヌスキナ
ーゼ(JAK:Janus Kinase)阻害剤である。
関節リウマチ患者(以下、RA 患者)を対象に海外では 2002 年から臨床試験が開始され、これまでに
日本で実施された試験を含む 13 試験が実施された(2011 年 12 月承認申請時)。
日本では、日本人における RA 患者の臨床推奨用量を国内のブリッジング試験で確認し、外国データを
外挿した。また、長期投与試験において、日本人の長期投与における安全性及び有効性の維持に関し
て確認を行った。
これらの日本人及び外国臨床試験成績から、「既存治療で効果不十分な関節リウマチ」を効能・効果
として 2013 年 3 月に承認された。
2.製品の治療学的・製剤学的特性
1) 関節リウマチ領域における世界初のヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤
2) 細胞内シグナル伝達に着目した新しい作用機序
JAK Pathway を利用するサイトカインによる、細胞内のシグナル伝達を阻害する。
3) 低分子 の分子標的治療薬で、経口投与を実現
1 日 2 回の経口投与で、RA 症状・徴候の改善効果を示す。
4) 約 4,000 例のエビデンス
ゼルヤンツの有効性と安全性は、約 4,000 例 の RA 患者を対象とした臨床試験で評価されている。
5) 約 4,000 例 の治療実績で、安全性を検討
承認時までに国内外で実施された第Ⅲ相試験の試験開始から 3 ヵ月までに本剤が投与された総症例
2430 例(日本人 94 例を含む)中 765 例(31.5%)において副作用が認められた。主な副作用は、頭
痛 61 例(2.5%)、上気道感染 51 例(2.1%)、下痢 44 例(1.8%)、悪心 36 例(1.5%)等であ
った。日本人患者では 94 例中 51 例(54.3%)に副作用が認められ、主な副作用は、鼻咽頭炎 10 例
(10.6%)、発熱 4 例(4.3%)、帯状疱疹 4 例(4.3%)等であった。
また、承認時に国内外で実施中の長期投与試験において、本剤が投与された総症例 3227 例中 1365 例
(42.3%)において副作用が認められた。主な副作用は、鼻咽頭炎 215 例(6.7%)、上気道感染 129
例(4.0%)、帯状疱疹 112 例(3.5%)、気管支炎 84 例(2.6%)等であった。国内で実施中の長期
投与試験では、本剤が投与された総症例 427 例中 375 例(87.8%)において副作用が認められた。主
な副作用は、鼻咽頭炎 182 例(42.6%)、帯状疱疹 51 例(11.9%)、高脂血症 35 例(8.2%)、高
血圧 30 例(7.0%)等であった。(承認時)
重大な副作用として感染症、消化管穿孔(0.1%)、好中球減少(0.4%)、リンパ球減少(0.2%)、
ヘモグロビン減少(0.3%)、肝機能障害、黄疸、間質性肺炎(0.1%)が報告されている。
※1:トファシチニブクエン酸塩の分子量 504.49
※2:第Ⅱ、Ⅲ相試験でゼルヤンツを投与された患者
I.概要に関する項目
1
II.名称 に関する項目
1.販売名
(1)和名
®
ゼルヤンツ 錠 5mg

(2)洋名
®
XELJANZ Tablets 5mg
(3)名称の由来
特になし
2.一般名
(1)和名(命名法)
トファシチニブクエン酸塩 [JAN]
(2)洋名(命名法)
Tofacitinib Citrate [JAN]
tofacitinib [INN]
(3)ステム
チロシンキナーゼ阻害剤:-tinib
医薬品名:ゼルヤンツ錠5mg
一般名:トファシチニブクエン酸塩 メーカー:ファイザー
販売:武田薬品 先発品
28片一盒
3.構造式又は示性式
4.分子式及び分子量
分子式:C16 20 6H N O•C6H8O7
分子量:504.49
II.名称に関する項目
2
5.化学名(命名法)
3-{(3R,4R )-4-Methyl-3-[methyl(7H -pyrrolo[2,3-d]pyrimidin-4-yl)amino]piperidin-
1-yl}-3-oxopropanenitrile monocitrate (IUPAC)
6.慣用名、別名、略号、記号番号
治験薬コード:CP-690,550(遊離塩基コード)
CP-690,550-10
7.CAS登録番号
540737-29-9
II.名称に関する項目
3
III .有 効成分に関する項目
1.物理化学的性質
(1)外観・性状
白色の粉末
(2)溶解性
N、N-ジメチルアセトアミドに溶けやすく、水に溶けにくく、エタノール(99.5)に極めて溶けにくい。
(3)吸湿性
25℃、相対湿度 0~95%の条件下で非吸湿性であった。
(4)融点(分解点)、沸点、凝固点
該当資料なし
(5)酸塩基解離定数
pKa=5.07
(6)分配係数
14.3(1-オクタノール/0.05mol/L リン酸緩衝液、pH7.3)
(7)その他の主な示性値
比旋光度[α]546:+10.3°ジメチルスルホキシド溶液(1→100)
2.有効成分の各種条件下における安定性
試験
長期保存試験
加 速 試 験
苛酷試験(光)
保存条件
25℃/60%RH
40℃/75%RH
白色蛍光ランプ
及び近紫外蛍光
ランプ
保存形態
ポリエチレン袋/ポリ
エチレンドラム
シャーレ(曝光)
保存期間
24 ヵ月
6 ヵ月
120 万 lx・hr
及 び 200W・
hr/m
試験結果
変化なし
3.有効成分の確認試験法
赤外吸収スペクトル測定法
III.有効成分に関する項目
4
4.有効成分の定量法
液体クロマトグラフィー
II.有効成分に関する項目
5IV.製剤 に関する項目
1.剤形
(1)剤形の区別、規格及び性状
販売名
色調等
ティング錠
(2)製剤の物性
該当資料なし
(3)識別コード
ゼルヤンツ 錠 5mg:上面 JKI 5 下面 pfizer
(4)pH、浸透圧比、粘度、比重、無菌の旨及び安定な pH 域等
該当しない
http://www.takedamed.com/content/medicine/pdf/155-130524.pdf
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001nfao-att/2r9852000001nfdx.pdf
ファイザー株式会社(本社:東京都渋谷区、社長:梅田一郎 以下、ファイザー)は本日、「ゼルヤンツ®錠 5mg」(一般名:トファシチニブ クエン酸塩、以下「ゼルヤンツ」)について、既存治療薬で効果不十分な成人の関節リウマチの治療薬として厚生労働省より製造販売承認を取得いたしました。ゼルヤンツは、過去の治療において、メトトレキサートをはじめとする少なくとも1剤の抗リウマチ薬(DMARD)等による適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな症状が残る場合に投与する関節リウマチの治療薬です。通常、1回5mgを1日2回経口投与します。
ゼルヤンツは、薬価収載後にファイザーと武田薬品工業株式会社によってコ・プロモーションのもと販売を開始します。ファイザーと武田薬品は現在、関節リウマチ薬のエンブレル®(一般名:エタネルセプト)についてもコ・プロモーションを行っています。
ゼルヤンツは、JAK(ヤヌスキナーゼ)阻害剤と呼ばれる新しい薬剤クラスでは国内で初めて承認された経口治療薬です。なお本品については発売当初、全症例を対象とする製造販売後調査を実施いたします。
ファイザー株式会社スペシャリティ・ケア事業部門長のマーク・スウィンデルは、「関節リウマチは、身体障害を伴う深刻な疾患であり、既存の治療薬では十分な効果が得られない患者さんも多く、さらなる治療薬の登場が強く望まれています。ファイザーは、日本において炎症性疾患の充実した治療薬ポートフォリオを有していますが、このたびのゼルヤンツ承認により、関節リウマチ患者さんにさらに新たな革新的治療薬を提供できるようになったことを嬉しく思います」と述べています。
ゼルヤンツは、細胞外でサイトカインを標的とする生物学的製剤とは異なり、細胞内のシグナル伝達を標的とします。ゼルヤンツは、関節リウマチに伴う炎症に重要な役割を果たす細胞内のシグナル伝達経路であるJAK(ヤヌスキナーゼ)Pathwayを阻害します。
ゼルヤンツは、様々な背景の関節リウマチ患者さん約5,000人を対象に行った複数の試験から構成される臨床開発プログラムの結果を根拠として、日本においても承認されました。日本におけるゼルヤンツの承認申請には、日本人のデータを含む2つの第Ⅱ相試験と1つの第Ⅲ相試験、さらに現在実施中の長期継続投与試験のデータも含まれています。5つの主要な国際共同試験では、既存のDMARDまたは生物学的製剤(TNF阻害剤)で効果不十分な患者さんに対して、単剤またはメトトレキサートなどのDMARDとの併用で、ゼルヤンツ 5 mg、1日2回投与の有効性が明らかにされました。
ゼルヤンツは、既存の治療薬で効果不十分な関節リウマチの治療薬として承認を取得しました。トファシチニブ(ゼルヤンツ)の関節リウマチ臨床研究プログラムで観察された主な有害事象には、結核や帯状疱疹などの重篤または重大な感染症、リンパ腫などの悪性腫瘍、胃腸穿孔、好中球減少とリンパ球減少および脂質上昇が含まれます。重篤な有害事象として最も多く見られたものは、重篤な感染症でした。また最も多く報告された有害事象は、上気道感染症、頭痛、鼻咽頭炎と下痢でした。
ゼルヤンツ®の概要
製品名 |
ゼルヤンツ®錠 5mg (XELJANZ® Tablets 5mg) |
一般名 |
トファシチニブ クエン酸塩 (Tofacitinib Citrate) |
製造販売承認取得日 |
2013年3月25日 |
製造販売元 |
ファイザー株式会社 |
販売 |
武田薬品工業株式会社 |
効能・効果 |
既存治療で効果不十分な関節リウマチ
[効能・効果に関連する使用上の注意]
過去の治療において、メトトレキサートをはじめとする少なくとも1剤の抗リウマチ薬等による適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな症状が残る場合に投与する。 |
用法・用量 |
通常、トファシチニブとして1回5 mgを1日2回経口投与する。 |
特性 |
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関節リウマチ領域における世界初のヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬。
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細胞内シグナル伝達に着目した新しい作用機序。JAK Pathwayを利用するサイトカインによる、細胞内のシグナル伝達を阻害します。
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低分子の分子標的治療薬で、経口投与を実現。1日2回の経口投与で、関節リウマチ症状・徴候の改善効果を示します。
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関節リウマチについて
関節リウマチは慢性の炎症性自己免疫疾患であり、手と足にその症状が表れるのが典型的ですが、滑膜のあるどの関節でも発症する可能性があります。日本では約70~80万人1、全世界では約2,370万人2の患者さんが関節リウマチに罹患しています。既存の治療薬は複数ありますが、治療効果が十分でない患者さんも少なからずいます。実際に、患者さんの3分の1では治療が十分に奏効せず、約半数は5年以内に特定のDMARDに反応しなくなります3,4,5,6,7,8。依然として、さらなる治療薬の登場が望まれています。