エクジェイド懸濁用錠125mg/エクジェイド懸濁用錠500mg
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作成又は改訂年月
** 2013年3月改訂(第7版)
* 2012年7月改訂
日本標準商品分類番号
873929
日本標準商品分類番号等
国際誕生年月
2005年11月
薬効分類名
鉄キレート剤
承認等
販売名
エクジェイド懸濁用錠125mg
販売名コード
3929008X1029
承認・許可番号
承認番号
22000AMX01596000
商標名
EXJADE Dispersible Tablets
薬価基準収載年月
2008年6月
販売開始年月
2008年6月
貯法・使用期限等
貯法
室温保存
使用期限
包装に表示の使用期限内に使用すること
規制区分
劇薬
処方せん医薬品
(注意-医師等の処方せんにより使用すること)
組成
成分・含量
1錠中デフェラシロクス 125mg
添加物
クロスポビドン、乳糖、セルロース、ポビドン、ラウリル硫酸ナトリウム、無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム
性状
性状
白色~微黄白色の素錠
外形
識別コード
NVR J125
大きさ(約)
直径:12mm 厚さ:3.6mm 質量:0.425g
販売名
エクジェイド懸濁用錠500mg
販売名コード
3929008X2025
承認・許可番号
承認番号
22000AMX01597000
商標名
EXJADE Dispersible Tablets
薬価基準収載年月
2008年6月
販売開始年月
2008年6月
貯法・使用期限等
貯法
室温保存
使用期限
包装に表示の使用期限内に使用すること
規制区分
劇薬
処方せん医薬品
(注意-医師等の処方せんにより使用すること)
組成
成分・含量
1錠中デフェラシロクス 500mg
添加物
クロスポビドン、乳糖、セルロース、ポビドン、ラウリル硫酸ナトリウム、無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム
性状
性状
白色~微黄白色の素錠
外形
識別コード
NVR J500
大きさ(約)
直径:20mm 厚さ:5.6mm 質量:1.70g
一般的名称
デフェラシロクス懸濁用錠
警告
本剤の投与により、重篤な肝障害、腎障害、胃腸出血を発現し死亡に至った例も報告されていることから、投与開始前、投与中は定期的に血清トランスアミナーゼや血清クレアチニン等の血液検査を行うこと。これらの副作用は、特に高齢者、高リスク骨髄異形成症候群の患者、肝障害又は腎障害のある患者、血小板数50,000/mm3未満の患者で認められる。
禁忌
(次の患者には投与しないこと)
1.
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
2.
高度の腎機能障害のある患者〔腎機能障害が悪化するおそれがある。〕
3.
全身状態の悪い高リスク骨髄異形成症候群の患者〔重篤な副作用が発現するおそれがある。〕
4.
全身状態の悪い進行した悪性腫瘍の患者〔重篤な副作用が発現するおそれがある。〕
効能又は効果
輸血による慢性鉄過剰症(注射用鉄キレート剤治療が不適当な場合)
効能又は効果に関連する使用上の注意
1.
輸血による慢性鉄過剰症の治療は、まず注射用鉄キレート剤による治療を考慮し、本剤は血小板減少や白血球減少を併発していて注射による出血や感染のおそれがある患者、あるいは頻回の通院治療が困難な場合など、連日の鉄キレート剤注射を実施することが不適当と判断される患者に使用すること。
2.
本剤は、原疾患の支持療法のために現在及び今後も継続して頻回輸血を必要とする患者に使用すること。
3.
本剤による治療を開始するにあたっては、下記の総輸血量及び血清フェリチンを参考にすること。
(1)
人赤血球濃厚液約100mL/kg以上(成人では約40単位以上に相当)の輸血を受けた場合。
(2)
輸血による慢性鉄過剰症の所見として、血清フェリチンが継続的に高値を示す場合。(「重要な基本的注意」7.の項参照)
用法及び用量
通常、デフェラシロクスとして20mg/kgを1日1回、水100mL以上で用時懸濁し、空腹時に経口投与する。
なお、患者の状態により適宜増減するが、1日量は30mg/kgを超えないこと。
用法及び用量に関連する使用上の注意
1.
本剤の薬物動態は食事の影響を受けやすいため空腹時に服用し、服用後30分間は食事をしないこと。(【薬物動態】の「2.食事の影響」の項参照)
2.
1ヵ月あたりの輸血量が人赤血球濃厚液7mL/kg未満(成人では4単位/月未満に相当)の場合は、初期投与量(1日量)として10mg/kgを投与することを考慮すること。
3.
高度(Child-Pugh分類クラスC)の肝機能障害のある患者への投与は避けることが望ましい。なお、中等度(Child-Pugh分類クラスB)の肝機能障害のある患者では、開始用量を約半量に減量すること。(「慎重投与」2.、【薬物動態】の「7.肝機能障害患者における薬物動態」の項参照)
4.
投与開始後は血清フェリチンを毎月測定すること。用量調節にあたっては、患者の血清フェリチンの推移を3~6ヵ月間観察し、その他の患者の状態(安全性、輸血量等)及び治療目的(体内鉄蓄積量の維持又は減少)も考慮して5~10mg/kgの間で段階的に増減を行うこと。なお、本剤投与により血清フェリチンが継続して500ng/mLを下回った患者での使用経験は少ないので、本剤による過剰な鉄除去には注意すること。
5.
本剤投与によって血清クレアチニンの増加があらわれることがあるので、投与開始前に血清クレアチニンを2回測定し、投与開始後は4週毎に測定すること。腎機能障害のある患者や、腎機能を低下させる薬剤を投与中の患者では、腎機能が悪化するおそれがあるので、治療開始又は投与量変更後1ヵ月間は毎週血清クレアチニンを測定すること。本剤投与後、成人患者では、連続2回の来院時において、治療前の平均値の33%を超える本剤に起因した血清クレアチニンの増加が認められた場合には、デフェラシロクスとして10mg/kg減量すること。減量後も更に血清クレアチニンが増加し、かつ施設基準値を超える場合には休薬すること。小児患者では、連続2回の来院時において血清クレアチニンが基準範囲の上限を超えている場合には、デフェラシロクスとして10mg/kg減量すること。減量後も更に血清クレアチニンの増加が認められる場合には休薬すること。
6.
本剤投与によって肝機能検査値異常があらわれることがあるので、投与開始前、投与開始後1ヵ月間は2週毎、投与開始1ヵ月以降は4週毎に血清トランスアミナーゼ、ビリルビン、ALPの測定を行うこと。本剤に起因した血清トランスアミナーゼ等の持続的な上昇が認められた場合には休薬し、適切な処置を行うこと。肝機能検査値異常の原因が本剤によらないと判明し、肝機能検査値が正常化した場合に本剤による治療を再開する際には、本剤を減量して治療を再開すること。
使用上の注意
慎重投与
(次の患者には慎重に投与すること)
1.
腎機能障害のある患者及び腎機能を低下させる薬剤を投与中の患者〔腎機能が悪化するおそれがある。〕
2.
肝機能障害のある患者〔肝機能障害が悪化するおそれがある。また、血中濃度の上昇が報告されている。〕(〈用法及び用量に関連する使用上の注意〉3.、【薬物動態】の「7.肝機能障害患者における薬物動態」の項参照)
3.
血小板数50,000/mm3未満の患者〔重篤な胃腸出血が発現するおそれがある。〕
4.
高齢者〔重篤な副作用が発現するおそれがある。〕
5.
高リスク骨髄異形成症候群の患者〔重篤な副作用が発現するおそれがある。〕
6.
進行した悪性腫瘍の患者〔重篤な副作用が発現するおそれがある。〕
重要な基本的注意
1.
本剤は難治性貧血の治療について十分な知識・経験を持つ医師が使用すること。また、本剤の投与にあたっては、最新の情報1)を参考にし、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ本剤を投与すること。
2.
尿蛋白を4週毎に測定し、尿蛋白/クレアチニン比が1.0mg/mgを超えた場合は休薬すること。
3.
下痢又は嘔吐を発現した場合は、腎機能が悪化するおそれがあるので、十分な水分補給を行うこと。
4.
本剤投与によって難聴及び水晶体混濁、視神経炎が報告されているので、投与開始前及び投与後は定期的(6ヵ月毎)に聴力検査及び眼科的検査(眼底検査を含む)を行い、異常が認められた場合には減量又は休薬し、適切な処置を行うこと。
5.
本剤と他の鉄キレート剤療法との併用は、安全性が確立されていないため、推奨されない。
6.
本剤投与中にめまい、視覚・聴力障害があらわれることがあるので、患者に注意喚起し、本剤投与中は自動車の運転等危険を伴う機械の操作に注意させること。
7.
血清フェリチンが1,000又は2,500ng/mLを超えた場合には、臓器障害や生存期間に影響することが示唆されている。2~4)
相互作用
本剤は主にUGT1A1及びUGT1A3により代謝されるので、本剤の血中濃度はUGTに影響を及ぼす薬剤により影響を受ける可能性がある。
本剤はCYP3A4の弱い誘導作用を有することから、CYP3A4で代謝される薬剤の血中濃度を低下させる可能性がある。また、本剤はCYP1A2及びCYP2C8の阻害作用を有することから、CYP1A2又はCYP2C8で代謝される薬剤の血中濃度を上昇させる可能性がある。
併用注意
(併用に注意すること)
1. 薬剤名等
アルミニウム含有制酸剤
臨床症状・措置方法
両剤の作用が減弱する可能性がある。
機序・危険因子
本剤とキレートを形成する。
2. 薬剤名等
CYP3A4で代謝される薬剤(シクロスポリン、シンバスタチン、ミダゾラム、経口避妊薬等)
臨床症状・措置方法
これらの薬剤の作用が減弱するおそれがある。
健康成人に本剤とミダゾラム(経口投与、国内未承認の用法)を併用投与した場合、ミダゾラムのAUCが17%低下したとの報告がある。
機序・危険因子
本剤の弱いCYP3A4誘導作用により、これらの薬剤の代謝が促進されると考えられる。
3. 薬剤名等
レパグリニド
臨床症状・措置方法
健康成人に本剤を反復投与後にレパグリニドを併用投与した場合、レパグリニドのAUCが131%、Cmaxが62%増加したとの報告がある。
機序・危険因子
本剤のCYP2C8阻害作用により、レパグリニドの代謝が抑制されると考えられる。
4. 薬剤名等
テオフィリン
臨床症状・措置方法
健康成人に本剤とテオフィリンを併用投与した場合、テオフィリンのAUCが84%上昇したとの報告がある。テオフィリンの作用を増強させる可能性があるので、併用する場合にはテオフィリンの血中濃度を測定し、テオフィリンの用量を調節すること。
機序・危険因子
本剤のCYP1A2阻害作用により、テオフィリンの代謝が阻害されると考えられる。
5. 薬剤名等
UDP-グルクロノシルトランスフェラーゼ(UGT)を強力に誘導する薬剤(リファンピシン、フェニトイン、フェノバルビタール、リトナビル等)
臨床症状・措置方法
健康成人にリファンピシンを反復投与後に本剤を併用投与した場合、本剤のAUCが44%低下したとの報告がある。
機序・危険因子
これらの薬剤のUGT誘導作用により、本剤の代謝が促進されると考えられる。
6. 薬剤名等
消化管潰瘍を誘発する可能性のある薬剤(非ステロイド性消炎鎮痛剤、副腎皮質ステロイド剤、経口ビスホスホネート等)
臨床症状・措置方法
本剤投与中に胃潰瘍(多発性潰瘍)、十二指腸潰瘍、胃腸出血があらわれたとの報告がある。
機序・危険因子
胃腸刺激のリスクが高まる可能性がある。
7. 薬剤名等
抗凝血剤
臨床症状・措置方法
胃腸出血があった場合、併用により出血が助長されたとの報告がある。
機序・危険因子
抗凝血剤の作用による。
8. 薬剤名等
コレスチラミン
臨床症状・措置方法
健康成人において本剤投与4時間及び10時間後にコレスチラミンを投与した場合、本剤のAUCが45%低下したとの報告がある。
機序・危険因子
コレスチラミンの吸着作用により本剤の吸収が阻害されるおそれがある。
副作用
国内第I相臨床試験において、本剤の単回投与を受けた輸血による鉄過剰症患者(原疾患:骨髄異形成症候群、再生不良性貧血等)26例中4例(15.4%)に、1週間投与を受けた26例中6例(23.1%)に、1年間の継続投与を受けた21例中11例(52.4%)に副作用(臨床検査値の異常を含む)が認められた。単回投与で認められた主な副作用は、下痢2例(7.7%)であった。1週間投与で認められた主な副作用は、下痢2例(7.7%)、悪心2例(7.7%)、血中クレアチニン増加2例(7.7%)であった。継続投与で認められた主な副作用は、血中クレアチニン増加6例(28.6%)、尿中β2ミクログロブリン増加4例(19.0%)、血中ALP増加3例(14.3%)であった。
海外第II相臨床試験及び第III相臨床試験において、本剤の投与を受けたβサラセミア患者421例中169例(40.1%)に副作用が認められた。主な副作用は、血中クレアチニン増加48例(11.4%)、発疹36例(8.6%)、腹痛35例(8.3%)、悪心27例(6.4%)、下痢23例(5.5%)、便秘12例(2.9%)、トランスアミナーゼ上昇11例(2.6%)、嘔吐11例(2.6%)等であった。
海外第II相臨床試験において、本剤の投与を受けた骨髄異形成症候群やダイヤモンド・ブラックファン貧血等の難治性貧血患者99例中64例(64.6%)に副作用が認められた。主な副作用は、下痢25例(25.3%)、悪心19例(19.2%)、血中クレアチニン増加16例(16.2%)、嘔吐11例(11.1%)、腹痛11例(11.1%)、消化不良5例(5.1%)、発疹5例(5.1%)、頭痛4例(4.0%)、腹部膨満3例(3.0%)、便秘3例(3.0%)、胃炎3例(3.0%)、疲労2例(2.0%)、蛋白尿2例(2.0%)等であった。
海外第II相臨床試験において、本剤の投与を受けた鎌状赤血球貧血患者132例中51例(38.6%)に副作用が認められた。主な副作用は、悪心16例(12.1%)、下痢12例(9.1%)、嘔吐7例(5.3%)、血中クレアチニン増加6例(4.5%)、腹痛5例(3.8%)、上腹部痛5例(3.8%)、腹部不快感4例(3.0%)、そう痒症3例(2.3%)、頭痛3例(2.3%)、発疹3例(2.3%)等であった。(承認時までの集計)
重大な副作用
1. ショック、アナフィラキシー様症状(いずれも頻度不明)
ショック、アナフィラキシー様症状があらわれることがあるので、観察を十分に行い、血管神経性浮腫、アナフィラキシー等の異常が認められた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。
2. 急性腎不全(頻度不明)、腎尿細管障害(0.1%~1%未満)
急性腎不全、腎尿細管障害(ファンコニー症候群)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には休薬するなど適切な処置を行うこと。
3. 肝炎(0.1%~1%未満)、肝不全(頻度不明)
肝硬変や多臓器不全等を合併している患者で、肝不全が認められているので、定期的に肝機能検査を行い、異常が認められた場合は休薬し、適切な処置を行うこと。
4. 胃潰瘍(多発性潰瘍を含む)、十二指腸潰瘍、胃腸出血(いずれも0.1%~1%未満)
胃潰瘍(多発性潰瘍を含む)、十二指腸潰瘍、胃腸出血があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には休薬するなど適切な処置を行うこと。
5. 皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、多形紅斑(いずれも頻度不明)
皮膚粘膜眼症候群、多形紅斑があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
6. 聴力障害(難聴)(0.1%~1%未満)
難聴等の聴力障害があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には減量又は休薬するなど適切な処置を行うこと。
7. 水晶体混濁(初期の白内障)(0.1%~1%未満)、視神経炎(0.01%~0.1%未満)
水晶体混濁、視神経炎があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には減量又は休薬するなど適切な処置を行うこと。
その他の副作用
1. 代謝及び栄養障害
(頻度不明注2))
食欲不振
2. 精神障害
(0.1%~1%未満)
不安、睡眠障害
3. 神経系障害
(1%~10%未満)
頭痛
4. 神経系障害
(0.1%~1%未満)
浮動性めまい
5. 眼障害
(0.1%~1%未満)
黄斑症
6. 呼吸器系障害
(0.1%~1%未満)
咽喉頭痛
7. 胃腸障害
(1%~10%未満)
下痢、便秘、嘔吐、悪心、腹痛、腹部膨満、消化不良
8. 胃腸障害
(0.1%~1%未満)
胃炎
9. 胃腸障害
(0.01%~0.1%未満)
食道炎
10. 肝胆道系障害
(1%~10%未満)
臨床検査値異常(AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP、ALP、LDH、血中ビリルビンの増加)
11. 肝胆道系障害
(0.1%~1%未満)
胆石症
12. 皮膚及び皮下組織障害
(頻度不明注2))
白血球破砕性血管炎、蕁麻疹、脱毛症
13. 皮膚及び皮下組織障害
(1%~10%未満)
発疹注3)、そう痒症
14. 皮膚及び皮下組織障害
(0.1%~1%未満)
色素沈着障害
15. 腎及び尿路障害
(10%以上)
血中クレアチニン増加
16. 腎及び尿路障害
(1%~10%未満)
蛋白尿
17. 全身障害
(0.1%~1%未満)
発熱、浮腫、疲労
上記の副作用があらわれることがあるので、異常が認められた場合には必要に応じて適切な処置を行うこと。注1)
注1)副作用の頻度については海外での臨床試験に基づき分類した。
注2)自発報告でのみ発現した副作用は頻度不明とした。
注3)重度な発疹があらわれたときには休薬し、適切な処置を行うこと。投与を再開する場合には、低用量から開始すること。
高齢者への投与
一般に高齢者では生理機能が低下しているので、患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。なお、海外において、本剤投与によって、消化器症状(特に下痢)が高齢者で多くあらわれることが報告されている。
妊婦、産婦、授乳婦等への投与
1.
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。〔ラットにおいて、高用量で胎児の骨格変異の発現頻度(100mg/kg/日)及び死産児数(90mg/kg/日)が増加したとの報告がある。動物実験において、胎児へ移行したとの報告がある(ラット・30mg/kg投与・母体の15%量の移行、ウサギ・40mg/kg投与・母体の1.2%量の移行)。〕
2.
本剤服用中は授乳を避けさせること。〔ラットで母乳中へ移行することが報告されている。〕
小児等への投与
1.
海外臨床試験において、小児患者に投与した場合、小児患者の暴露量の方が成人の暴露量に比べて約20~30%低かったとの報告がある。
2.
国内においては小児の使用経験はない。また、海外においては2歳未満の使用経験はない。
3.
小児の投与量については、体重の変化を考慮すること。
臨床検査結果に及ぼす影響
1.
化学的便潜血検査で、本剤により排泄された鉄により偽陽性を示す可能性がある。
2.
*本剤投与中に血清鉄及び不飽和鉄結合能の測定値が見かけ上、高値を示す可能性がある。
過量投与
海外において、鉄過剰のβサラセミア患者における本剤80mg/kgの単回投与で、軽度の悪心及び下痢が認められた。また、海外において、処方量の2~3倍量を数週間服用したとの報告がある。そのうちの1例に軽症の肝炎が認められたが、投与中止後、長期に及ぶ影響なく回復した。
徴候、症状
急性の症状として悪心、嘔吐、頭痛及び下痢があらわれる可能性がある。
処置
催吐又は胃洗浄並びに対症療法等の適切な処置を行うこと。
適用上の注意
1. 服用時
本剤は水100mL以上で十分に懸濁して服用すること。また、コップ等の底に本剤が残った場合は、再度水で懸濁して服用すること。なお、本剤を噛み砕いたり、丸ごと飲み込んだりしないこと。
2. 薬剤交付時
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して懸濁し服用するよう指導すること。(PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔を起こして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することが報告されている)
その他の注意
1.
**本剤との因果関係は明らかではないが、本剤投与中に好中球減少、血小板減少、貧血増悪等の血球減少が、主として骨髄不全を合併しやすい血液疾患患者においてあらわれたとの報告がある。本剤投与中は、定期的に血液検査を行い、原因が明らかでない血球減少があらわれた場合には休薬すること。
本剤による治療の再開については、血球減少の原因が本剤以外の要因であることが判明した場合とすること。
2.
類薬であるデフェロキサミンと1日500mg以上(経口)のビタミンCとの併用では、心機能の低下がみられたとの報告がある。
薬物動態
1. 血漿中濃度推移
輸血による鉄過剰症患者(26例)にデフェラシロクス5~30mg/kgを単回及び1日1回7日間反復経口投与したとき、血漿中デフェラシロクス濃度は以下の図のように推移した。5)反復投与時には投与開始4日でほぼ定常状態に到達し、AUC0-24の比から求めた累積率は1.2~2.3であった。
輸血による鉄過剰症患者(26例)にデフェラシロクス5~30mg/kgを単回(左)及び1日1回7日間反復(右)経口投与したときの血漿中デフェラシロクス濃度推移(平均値±標準偏差)
●:5mg/kg(n=6)、□:10mg/kg(n=7)、◆:20mg/kg(n=6)、△:30mg/kg(n=7)
輸血による鉄過剰症患者にデフェラシロクスを単回及び1日1回7日間反復経口投与したときの薬物動態パラメータ
単回投与
投与量(mg/kg):5(n=6)
Tmax(h):2.0[0.9~3.0]
Cmax(μmol/L):20.4±6.1
AUC0-24(μmol・h/L):190±91
t1/2(h):8.5±3.4
単回投与
投与量(mg/kg):10(n=7)
Tmax(h):3.0[1.0~4.0]
Cmax(μmol/L):53.3±18.7
AUC0-24(μmol・h/L):535±137
t1/2(h):17.1±4.7
単回投与
投与量(mg/kg):20(n=6)
Tmax(h):4.0[1.0~10.0]
Cmax(μmol/L):112±29
AUC0-24(μmol・h/L):1,270±370
t1/2(h):20.5±4.9
単回投与
投与量(mg/kg):30(n=7)
Tmax(h):3.0[2.0~4.0]
Cmax(μmol/L):119±40
AUC0-24(μmol・h/L):1,450±420
t1/2(h):18.9±9.8※
反復投与
投与量(mg/kg):5(n=6)
Tmax(h):1.5[1.0~4.0]
Cmax(μmol/L):27.4±10.7
AUC0-24(μmol・h/L):345±236
t1/2(h):17.5±7.2
反復投与
投与量(mg/kg):10(n=7)
Tmax(h):3.0[1.1~10.0]
Cmax(μmol/L):67.3±22.2
AUC0-24(μmol・h/L):848±442
t1/2(h):20.5±7.5
反復投与
投与量(mg/kg):20(n=6)
Tmax(h):3.4[1.0~4.2]
Cmax(μmol/L):119±14
AUC0-24(μmol・h/L):1,510±190
t1/2(h):21.4±7.2
反復投与
投与量(mg/kg):30(n=7)
Tmax(h):4.0[1.0~10.0]
Cmax(μmol/L):224±100
AUC0-24(μmol・h/L):3,620±2,760
t1/2(h):19.5±4.9
Tmaxは中央値[最小値~最大値]を、それ以外は平均値±標準偏差を示す。
※ n=6
2. 食事の影響
健康成人(28例)にデフェラシロクス20mg/kgを標準食と同時、標準食摂取30分前及び高脂肪食摂取30分前に単回経口投与したときのCmax及びAUCは空腹時と比べてそれぞれ約1.5倍、約1.2倍及び約1.2倍に増加した。6) (外国人のデータ)
また、βサラセミア患者(12例)にデフェラシロクス20mg/kgを高脂肪食摂取5分後に単回経口投与したときのCmax及びAUCは空腹時と比べてそれぞれ約1.8倍及び約2.0倍に増加した。7) (外国人のデータ)
3. 吸収
健康成人(17例)にデフェラシロクス375mg(約5mg/kg)を単回経口投与したときの絶対的バイオアベイラビリティーは73.5%であった。8) (外国人のデータ)
4. 分布
デフェラシロクスの血漿蛋白結合率は約99%であり、主な結合蛋白は血清アルブミンである(in vitro)。9,10)
健康成人(17例)にデフェラシロクス130mgを静脈内投与したときの分布容積は14Lであった。8) (外国人のデータ)
5. 代謝
デフェラシロクスは主にUGT1A1及びUGT1A3によりグルクロン酸抱合を受け、また一部CYP1A2及びCYP2D6により酸化代謝を受ける(in vitro)。11,12)
βサラセミア患者(5例)に[14C]デフェラシロクス1,000mg(約15mg/kg)を経口投与したとき、血漿中放射能の大部分は未変化体(総放射能のAUCの約90%)であり、血漿中に認められた主代謝物はデフェラシロクスのアシルグルクロン酸抱合体(総放射能のAUCの約3%)であった。13)尿及び糞中に排泄された放射能の多くは未変化体であり、酸化代謝物はわずかであった(投与量の約8%)。 (外国人のデータ)
6. 排泄
βサラセミア患者(5例)に[14C]デフェラシロクス1,000mg(約15mg/kg)を経口投与したとき、投与後168時間までに投与量の約84%が糞中に排泄され、約8%が尿中に排泄された。13) (外国人のデータ)
(参考)[14C]デフェラシロクス10mg/kgを静脈内投与したラットから投与後24時間までに排泄された胆汁を、別のラットに十二指腸内投与したところ、胆汁中に排泄された放射能の約39%が投与後48時間までに再吸収された。
7. 肝機能障害患者における薬物動態
軽度(Child-Pugh分類クラスA)、中等度(Child-Pugh分類クラスB)の肝機能障害を有する患者(それぞれ6例)にデフェラシロクスを単回経口投与したときのAUCは、健康成人(6例)に比べそれぞれ1.2倍及び1.8倍に増加した。高度(Child-Pugh分類クラスC)の肝機能障害を有する患者は1例のみであったが、AUCは健康成人の2.8倍であった。(外国人のデータ)
臨床成績
1. 国内臨床試験
輸血による鉄過剰症患者(26例)にデフェラシロクス5~30mg/kgを1日1回7日間反復経口投与したとき、尿及び糞中への鉄排泄は以下の通りであった。5)
デフェラシロクスを1日1回7日間反復経口投与時の鉄排泄
投与量(mg/kg):5(n=6)
鉄排泄(mg/kg/日)
糞中鉄排泄:0.0690±0.0975※
尿中鉄排泄:0.00450±0.00080
総鉄排泄:0.0738±0.0977※
投与量(mg/kg):10(n=7)
鉄排泄(mg/kg/日)
糞中鉄排泄:0.120±0.118
尿中鉄排泄:0.0131±0.0035
総鉄排泄:0.133±0.117
投与量(mg/kg):20(n=6)
鉄排泄(mg/kg/日)
糞中鉄排泄:0.326±0.117
尿中鉄排泄:0.0158±0.0021
総鉄排泄:0.342±0.118
投与量(mg/kg):30(n=7)
鉄排泄(mg/kg/日)
糞中鉄排泄:0.582±0.385
尿中鉄排泄:0.0231±0.0114
総鉄排泄:0.605±0.387
※ n=5 (平均値±標準偏差)
2. 海外臨床試験
本剤の有効性は、肝鉄濃度(肝臓の乾燥重量1gあたりの鉄含有量、以下LICとする)を指標に、投与1年後のLICが7mg/g未満に減少した場合を有効(治療開始前のLICが10mg/g以上の場合、開始前と比較して1年で3mg/g以上の減少を有効)と定義し、有効率を評価した。
海外第III相試験で、βサラセミア患者に本剤(5~30mg/kg)及びデフェロキサミン(20~50mg/kg以上)を1年間投与したとき、有効率はそれぞれ52.9%(146/276例)及び66.4%(184/277例)であった。14)
海外第II相試験で、難治性貧血患者及びβサラセミア患者に本剤(5~30mg/kg)を1年間投与したときの有効率は50.5%(93/184例)であった。15)
海外第II相試験及び海外第III相試験(計4試験)で1ヵ月あたりの輸血量の違いによるLIC及び血清フェリチンの変化は以下のとおりであった。16)
投与量
a)デフェラシロクス:30mg/kg、デフェロキサミン:50mg/kg以上
b)デフェラシロクス:20mg/kg、デフェロキサミン:35mg/kg以上50mg/kg未満
c)デフェラシロクス:10mg/kg、デフェロキサミン:25mg/kg以上35mg/kg未満
投与量
a)デフェラシロクス:30mg/kg、デフェロキサミン:50mg/kg以上
b)デフェラシロクス:20mg/kg、デフェロキサミン:35mg/kg以上50mg/kg未満
c)デフェラシロクス:10mg/kg、デフェロキサミン:25mg/kg以上35mg/kg未満
薬効薬理
1.
デフェラシロクスは、3価の鉄イオンに選択的で高い親和性を有する。17)
2.
デフェラシロクスにより体内に蓄積した鉄は胆汁を介して排泄される。18)
3.
デフェラシロクスは、ラット及びマーモセットへの経口投与により、主要な鉄貯蔵臓器である肝臓の鉄濃度を低下させる。19,20)
有効成分に関する理化学的知見
構造式
一般名
デフェラシロクス(Deferasirox)
化学名
4-[3,5-Bis(2-hydroxyphenyl)-1H-1,2,4-triazol-1-yl]benzoic acid
分子式
C21H15N3O4
分子量
373.36
性状
白色~微黄白色の粉末である。アセトンにやや溶けにくく、メタノール又はエタノール(95)に溶けにくく、水にほとんど溶けない。また、溶解性にpH依存性があり、酸性側ではほとんど溶けないが、アルカリ性側では溶けにくい。
包装
エクジェイド懸濁用錠125mg 20錠(PTP)
エクジェイド懸濁用錠500mg 20錠(PTP)
主要文献及び文献請求先
主要文献
1)
厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業 特発性造血障害に関する調査研究(平成20年度):輸血後鉄過剰症の診療ガイド 〔EXJS00045〕
2)
Takatoku,M.et al.:Eur.J.Haematol.78(6),487,2007 〔EXJS00004〕
3)
Malcovati,L.et al.:J.Clin.Oncol.23(30),7594,2005 〔EXJS00001〕
4)
Olivieri,N.F.et al.:New Engl.J.Med.331(9),574,1994 〔EXJS00003〕
5)
社内資料:国内第I相試験 〔EXJU00001〕
6)
社内資料:食事の影響(健康成人) 〔EXJU00003〕
7)
社内資料:食事の影響(βサラセミア患者) 〔EXJU00009〕
8)
社内資料:外国健康成人血漿中濃度推移 〔EXJU00002〕
9)
社内資料:血漿蛋白質との結合(蛋白結合率) 〔EXJU00004〕
10)
社内資料:結合蛋白の同定 〔EXJU00005〕
11)
社内資料:UDP-グルクロン酸転移酵素による抱合代謝 〔EXJU00006〕
12)
社内資料:チトクロムP450による代謝 〔EXJU00007〕
13)
社内資料:経口投与時の吸収、血中動態、代謝及び排泄経路の検討を目的とした試験 〔EXJU00008〕
14)
Cappellini,M.D.et al.:Blood 107(9),3455,2006 〔EXJM00054〕
15)
Porter,J.et al.:Eur.J.Haematol.80(2),168,2008 〔EXJM00151〕
16)
社内資料:海外第II相及び第III相試験(4試験併合) 〔EXJU00010〕
17)
Heinz,U.et al.:Angewandte Chemie(International Ed. in English)38(17),2568,1999 〔EXJS00002〕
18)
Hershko,C.et al.:Blood 97(4),1115,2001 〔EXJM00035〕
19)
社内資料:鉄負荷ラットにおける肝臓鉄への影響 〔EXJU00011〕
20)
社内資料:非鉄負荷マーモセットにおける肝臓鉄への影響 〔EXJU00012〕
文献請求先
主要文献に記載の社内資料につきましても下記にご請求下さい。
ノバルティス ファーマ株式会社 ノバルティス ダイレクト
〒106-8618 東京都港区西麻布4-17-30
製造販売業者等の氏名又は名称及び住所
製造販売
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