症、体重増加抑制及び摂餌量減少、胎児重量の減少が観察されている。また、動物実験 (ラット及びウサギ) で胎盤を通過することが報告されている]。
2.
授乳中の婦人に投与することを避け、やむを得ず投与する場合には授乳を中止させること[動物実験 (ラット) で乳汁中に移行することが報告されており、授乳期新生児の体重増加抑制が認められている]。
小児等への投与
低出生体重児、新生児、乳児、幼児又は小児に対する安全性は確立していない (使用経験がない)。
過量投与
本剤の過量投与は低カルシウム血症を発現させると考えられる。過量投与の場合、低カルシウム血症の徴候及び症状を観察し、低カルシウム血症の発現あるいは発現のおそれがある場合にはカルシウム剤の点滴投与等を考慮すること。なお、本剤はたん白結合率が高いので、血液透析は過量投与の効果的な処置とはならない。
適用上の注意
薬剤交付時
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服薬するよう指導すること[PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔を起こして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することが報告されている]。
その他の注意
1.
透析導入前の二次性副甲状腺機能亢進症を伴う慢性腎不全患者に本剤を投与した海外臨床試験において、透析施行中の患者に比べて血中カルシウム濃度が正常下限 (8.4mg/dL) 未満になりやすいとの報告がある3)。なお、透析導入前の患者への投与は承認外である。
2.
海外において、本剤による過度のPTHの低下により、無形成骨症が生じたとの報告がある。
3.
海外において、本剤投与後の急激なPTHの低下により、低カルシウム血症及び低リン酸血症を伴う飢餓骨症候群 (hungry bone syndrome) を発現したとの報告がある。
薬物動態
1. 単回経口投与時の血中濃度4)
血液透析患者 (日本人) に本剤を25、50及び100mgを空腹時に単回経口投与した時の非透析日及び透析日における血漿中シナカルセト濃度は投与量に依存して高くなっており、二相性の消失を示した。薬物動態パラメータは表1のとおりであり、透析の影響は認められなかった。
血液透析患者にシナカルセト塩酸塩を単回投与した時の血漿中濃度推移
2. 反復経口投与時の血中濃度
反復投与時の血漿中シナカルセト濃度のトラフ濃度推移については、血液透析患者 (日本人) を対象に最長53週間検討しているが、経時的な上昇又は低下傾向は認められず、反復投与により血漿中シナカルセト濃度は定常状態に到達していることが確認された。
3. 食事の影響5)
健康成人 (日本人) を対象に本剤50mgを単回経口投与した時の本剤の薬物動態に対する食事の影響を検討した結果、空腹時及び食後投与時における本剤の薬物動態パラメータはほぼ同様な値を示しており、本剤の薬物動態に及ぼす食事の影響は小さいものと考えられた。
4. たん白結合率
健康成人の血漿を使用したin vitro 試験でのシナカルセト (25~100ng/mL) の血漿たん白結合率は男性で96.67~97.67%、女性で94.33~97.67%と高く、男女間に差は認められなかった6)。また、本剤を単回経口投与した時のシナカルセトの血漿たん白結合率は、肝機能正常者及び肝機能障害者 (外国人) を対象とした試験7) において94.7~97.1%、腎機能正常者及び腎機能障害者 (外国人) を対象とした試験8) で92.7~95.1%とほぼ同じ値を示した。結合たん白種としてアルブミンが考えられ6)、サイトIIに対する親和性が高いことが示唆された9)。
5. 代謝
健康成人 (外国人) を対象として14C標識体75mgを単回経口投与した結果、シナカルセトはN -脱アルキル化又はナフタレン環の酸化により速やかに代謝されることが確認された10)。
6. 排泄
健康成人 (日本人) を対象とした試験における本剤の未変化体の尿中排泄率は非常に低く、反復投与による尿中排泄に対する影響は認められなかった11)。健康成人 (外国人) を対象として14C標識体75mgを単回経口投与した結果より、本剤は主に代謝物として尿中に排泄されることが確認された10)。
7. 薬物相互作用
健康成人 (外国人) を対象に胃内pHを変動させる薬剤 (炭酸カルシウム) の影響について検討した結果、これらの薬剤は本剤の薬物動態に影響を及ぼさないことが確認された12)。また、リン吸着剤 (セベラマー塩酸塩) の影響について検討した結果、セベラマー塩酸塩は本剤の薬物動態に影響を及ぼさないことが確認された13)。
健康成人 (外国人) を対象に本剤がワルファリンの薬物動態及び薬力学に与える影響を検討した結果、本剤はR -及びS -ワルファリンの薬物動態及びワルファリンの薬力学 (プロトロンビン時間及び第VII血液凝固因子活性) に影響を与えないことが確認された14)。
表1 血液透析患者にシナカルセト塩酸塩を単回投与した時の薬物動態パラメータ
投与量 (mg) 薬物動態パラメータ 非透析日 透析日
25 Cmax(ng/mL) 5.16±2.34 9.92±6.64
25 tmax(hr) 5.6±1.1 4.8±1.4
25 AUC (ng・hr/mL) 57.6±25.1 85.4±26.0
25 t1/2 (hr) 28.45±14.24 32.94±14.52
50 Cmax(ng/mL) 17.89±10.00 20.71±13.71
50 tmax(hr) 6.0±1.1 4.6±1.6
50 AUC (ng・hr/mL) 207.1±91.8 218.6±99.6
50 t1/2 (hr) 38.58±20.19 33.96±10.23
100 Cmax(ng/mL) 26.92±15.80 36.70±26.09
100 tmax(hr) 4.8±1.8 4.4±1.8
100 AUC (ng・hr/