独立したラインにて投与すること。
(3)
他の注射剤、輸液等と混合しないこと。
その他の注意
1.
本剤投与により抗トシリズマブ抗体が発現したとの報告がある(国内臨床試験・疾患別、関節リウマチ:601例中18例(3.0%)、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎:19例中1例(5.3%)、全身型若年性特発性関節炎:128例中11例(8.6%)[以上、効能追加時]、キャッスルマン病:35例中1例(2.9%)[承認時])。
2.
本邦において、本剤と抗リウマチ薬(DMARD)との併用療法における有効性及び安全性は確立していない。なお、海外の関節リウマチを対象とした臨床試験では、トランスアミナーゼ値上昇の発現頻度が本剤単剤療法時に比べてDMARD併用療法時で高かった。基準値の3倍を超えるALT(GPT)あるいはAST(GOT)上昇の発現頻度は、DMARD併用療法:本剤8mg/kg+DMARD群103/1582例(6.5%)、プラセボ+DMARD群18/1170例(1.5%)、単剤療法:本剤8mg/kg群6/288例(2.1%)、MTX単剤群14/284例(4.9%)で、これらの異常は一過性で肝炎や肝不全に伴うものではなかった。
3.
**国内の臨床試験では2.9年(投与期間0.1~8.1年の中央値)まで、海外の関節リウマチを対象とした臨床試験では4.6年(投与期間0.0~5.8年の中央値)までの期間で実施されており、これらの期間を超えた本剤の長期投与時の安全性は確立していない。
4.
ヒト肝細胞を用いたin vitro試験において、IL-6が肝薬物代謝酵素(CYPs)発現を抑制することが報告されていることから1)-3)、ヒト肝細胞にIL-6をトシリズマブ共存下で添加したところ、CYPsの発現に変化は認められなかった4)。また、炎症反応を有する患者では、IL-6の過剰産生によりCYPsの発現が抑制されているとの報告がある5),6)。関節リウマチ患者を対象とした臨床試験において、本剤投与後にIL-6阻害に伴ってCYP3A4、CYP2C19及びCYP2D6発現量が増加することが示唆された。このことから、過剰のIL-6によって抑制されていたCYPsの発現が本剤投与により回復し、炎症反応の改善に伴って併用薬の効果が減弱する可能性は否定できない7)。
5.
動物実験(マウス)において、gp130を介したシグナル伝達が心筋細胞の保護作用を有することが報告されている8)。gp130を介してシグナル伝達に関与するサイトカインは複数知られており、IL-6もその一つである。本薬はIL-6の作用を阻害することから、心臓への影響は否定できない。
6.
本薬はヒトとカニクイザルのIL-6レセプターに対しては中和活性を示すが、マウス及びラットのIL-6レセプターに対しては中和活性を示さない。このため、がん原性試験は実施されていない。
7.
関節リウマチを対象とした本剤の海外臨床試験において、本剤8mg/kg投与時の重篤な感染症の発現頻度が体重100kgを超える患者群で高い傾向が認められたため、海外における1回投与量の上限は800mgとされている。
8.
関節リウマチを対象とした海外臨床試験において、本剤との因果関係は不明であるが脱髄関連疾患が認められたとの報告がある。
薬物動態
1. 血中濃度
(1) 第I相試験(単回投与)9)
健康成人男性5例を対象に、0.15、0.50、1.0、2.0mg/kgを単回投与した(1時間点滴静注)。Cmaxは投与量に比例して上昇したものの、投与量の増加に伴ってCLtotalは減少し、T1/2及びMRTが有意に延長したことから、トシリズマブの体内動態に非線形性が認められた(表1)。
注)本剤の承認用量は1回8mg/kgである(「用法・用量」の項参照)。
(2) 関節リウマチ患者での薬物動態
1) 単回投与試験10)
関節リウマチ患者31例を対象に、8mg/kgを単回投与した(1時間点滴静注)。血清中トシリズマブ濃度を図1に示した。このときの薬物動態パラメータはAUCfinite=19852±5749hr・μg/mL(平均値±SD、以下同様)、T1/2=133±25.7hr、CLtotal=0.4±0.1mL/hr/kg及びVdss=78.5±16.8mL/kgであった。
図1 関節リウマチ患者における単回投与時の血清中トシリズマブ濃度推移(平均値±SD)
2) 反復投与試験
1. 用量相関性の検討11)
関節リウマチ患者15例(1群5例)を対象に、2、4あるいは8mg/kgを2週間隔にて投与した(2時間点滴静注)。
CLtotalは投与量の増加にともなって減少し、T1/2は有意に延長したことから非線形性の体内動態が認められた(表2)。
注)本剤の承認用量は1回8mg/kgである(「用法・用量」の項参照)。
2. 第III相試験12)
関節リウマチ患者157例を対象に、8mg/kgを4週間隔で13回投与した(1時間点滴静注)。血清中トシリズマブ濃度は初回投与以降上昇し、血清中トシリズマブ投与直前値は3回目投与4週間後(初回投与12週後、平均値±SD以下同様)で9.8±7.5μg/mL、6回目投与4週間後(初回投与24週間後)で12.3±8.6μg/mLであり、初回投与20週後以降ほぼ一定の値で推移した(図2)。
図2 関節リウマチ患者における反復投与時の血清中トシリズマブ濃度(投与直前値)推移(平均値±SD)
(3) 多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎患者での薬物動態13)
多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎患者19例(3-19歳、中央値12歳)を対象に、8mg/kgを4週間隔で3回投与した(1時間点滴静注)。初回投与後の血清中トシリズマブ薬物動態パラメータの比較を表3に示した。7歳未満の群で血清中トシリズマブの消失速度の大きい症例が認められた。
(4) 全身型若年性特発性関節炎患者での薬物動態14)
全身型若年性特発性関節炎患者(2-19歳、中央値8歳)を対象に、8mg/kgを2週間隔で3回反復投与し(1時間点滴静注)、その後有効性の認められた被験者を対象に6回(合計9回、初回投与後18週間)投与を行った。
初回投与後及び3回目投与後の血清中トシリズマブ薬物動態パラメータを表4に示した。7歳未満の群で血清中トシリズマブの消失速度の大きい症例が認められた。
血清中トシリズマブ濃度推移は初回投与8週から14週の範囲で定常状態となったと考えられ、血清中トシリズマブ濃度(投与直前値)は57.4μg/mL(初回投与18週後、例数:13)であった