重大な副作用
1. ジギタリス中毒
(頻度不明)
高度の徐脈、二段脈、多源性心室性期外収縮、発作性心房性頻拍等の不整脈があらわれることがある。また、さらに重篤な房室ブロック、心室性頻拍症あるいは心室細動に移行することがある。初期症状として消化器、眼、精神神経系症状[「その他の副作用」の項参照]があらわれることが多いが、それらの症状に先行して不整脈が出現することもある。このような症状があらわれた場合には、減量又は休薬するなど適切な処置を行うこと。[処置法は「過量投与」の項参照。]
2. 非閉塞性腸間膜虚血
(頻度不明)
非閉塞性腸間膜虚血があらわれることがあり、腸管壊死に至った例も報告されているので、観察を十分に行い、激しい腹痛、血便等の症状があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
その他の副作用
1. 消化器
頻度不明
食欲不振、悪心・嘔吐、下痢等
2. 眼
頻度不明
視覚異常(光がないのにちらちら見える、黄視、緑視、複視等)
3. 精神神経系
頻度不明
めまい、頭痛、失見当識、錯乱、譫妄等
4. 肝臓
頻度不明
AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP、Al-Pの上昇
5. 血液
頻度不明
血小板数減少
6. 過敏症注)
頻度不明
発疹、蕁麻疹、紫斑、浮腫等
7. その他
頻度不明
女性型乳房、筋力低下
注)このような症状があらわれた場合には投与を中止すること。
高齢者への投与
高齢者に投与する場合には少量から投与を開始し、血中濃度等を監視するなど、観察を十分に行い、慎重に投与すること。[ジギタリス中毒があらわれやすい。]
妊婦、産婦、授乳婦等への投与
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。]
小児等への投与
小児等に投与する場合には少量から投与を開始し、血中濃度や心電図等を監視するなど、観察を十分に行い、慎重に投与すること。[ジギタリス中毒があらわれやすい。]
過量投与
徴候・症状
ジギタリス中毒が起こることがある[「副作用」の項参照]。
処置法
(1) 薬物排泄
胃内のジゴキシンの吸収を防止するために活性炭が有効と報告されている。
(2) 心電図
直ちに心電図による監視を行い、上記ジギタリス中毒特有の不整脈の発現に注意する。
(3) 重篤な不整脈の治療法
徐脈性不整脈及びブロックにはアトロピン等が用いられる。(徐脈性不整脈に通常用いられる交感神経刺激剤はジギタリス中毒には用いるべきではない。)重篤な頻脈性不整脈が頻発するときは塩化カリウム、リドカイン、プロプラノロール等が用いられる。
(4) 血清電解質
1)
特に低カリウム血症に注意し、異常があれば補正する。
2)
高カリウム血症には、炭酸水素ナトリウム、グルコース・インスリン療法、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム等が用いられる。
(5) 腎機能
ジゴキシンは腎排泄型であるので腎機能を正常に保つ。血液透析は一般に無効であるとされている。
適用上の注意
薬剤交付時
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。[PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することが報告されている。]
薬物動態
1. 血中濃度
健康成人男子にハーフジゴキシンKY錠0.125又はジゴキシンKY錠0.25(ジゴキシンとして0.125mg又は0.25mg)を単回経口投与したとき、血清中濃度は投与後約1時間でCmaxに達し、0.125mg投与のCmax及びAUCは、0.25mg投与のほぼ1/2であった1)。(薬物動態の表参照)
健康成人男子にハーフジゴキシンKY錠0.125又はジゴキシンKY錠0.25を1錠単回経口投与したときの血清中濃度推移 (平均値±S.D.n=8)
2. 代謝・排泄
本剤は大部分が未変化体で尿中に排泄されるが、一部代謝される。主な代謝物は薬理活性のないdihydrodigoxinとdihydrodigoxigenin、薬理活性を持つdigoxigenin-bis-digitoxiside及びdigoxigenin-mono-digitoxisideである。主な代謝酵素は肝薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)3Aが考えられている。腎排泄を主経路とし、糸球体濾過とP糖蛋白質を介する尿細管分泌により尿中に排泄される2),3)。
薬物動態の表
Cmax(ng/mL) Tmax(hr) T1/2(hr) AUC0→48(ng・hr/mL)
0.125mg 0.97±0.42 1.2±0.8 22.1±21.1 5.28±2.12
0.25mg 1.68±0.45 0.9±0.2 30.1±7.8 11.59±1.47
薬効薬理
ジゴキシンは、心筋収縮力増強作用、徐脈作用、抗不整脈作用、また、二次的な作用及び腎におけるNa+の再吸収抑制により利尿作用を有するとされている4)〜6)。
有効成分に関する理化学的知見
一般名
ジゴキシン(Digoxin)
化学名
3β-[2,6-Dideoxy-β-D-ribo-hexopyranosyl-(1→4)-2,6-dideoxy-β-D-ribo-hexopyranosyl-(1→4)-2,6-dideoxy-β-D-ribo-hexopyranosyloxy]-12β,14-dihydroxy-5β,14β-card-20(22)-enolide
分子式
C41H64O14
分子量
780.94
構造式
性状
ジゴキシンは、無色〜白色の結晶又は白色の結晶性の粉末である。ピリジンに溶けやすく、エタノール(95)に溶けにくく、酢酸(100)に極めて溶けにくく、水にほとんど溶けない。
包装
ジゴキシン錠0.0625「KYO」 100錠(PTP、バラ)
ハーフジゴキシンKY錠0.125 100錠(PTP、バラ)、1,000錠(PTP)、1,400錠(PTP)
ジゴキシンKY錠0.25 100錠(PTP、バラ)、1,000錠(PTP)
主要文献及び文献請求先
主要文献
1)
大西明弘ほか:診療と新薬.39:4