投与した際の組織内濃度は,血液,肝では投与後1時間で最高濃度を示し,腸を除く他の組織では,2時間まで増加し,その後減少した。腸では4時間で最高濃度を示した11)。
3. 代謝
(1) 本剤は,主に肝代謝酵素CYP2B6で代謝され,活性化される。また,CYP2C8,2C9,3A4,2A6も本剤の代謝に関与していることが報告されている。(in vitro)12)
(2) 代謝物13):4-ヒドロキシシクロホスファミド※,アルドホスファミド※,ホスファミドマスタード※,アクロレイン,4-ケトシクロホスファミド,カルボキシホスファミド
(※:活性代謝物)
4. 排泄
(外国人によるデータ)
(1) 各種の悪性腫瘍患者26例に,14C-標識シクロホスファミド6.8~80mg/kg※を静脈内投与した場合,尿中には投与量の約62%が2日以内に,約68%が4日以内に排泄された。また,糞便中には投与量の約1.8%が4日以内に排泄され,呼気中には投与量の約0.9~1.4%が4日以内に排泄された14)。(※:一部承認外の高用量を含む。)
(2) 大部分は不活性代謝物として尿中に排泄され 13),活性代謝物の尿中排泄率は12時間で投与量の約1%5),未変化体の尿中排泄率は24時間で投与量の約10%であった15)。
5. その他
血漿蛋白結合率:シクロホスファミド12~24%13)(外国人によるデータ)
薬物動態の表
表1 活性代謝物の薬物動態パラメータ
投与量注1
(mg/kg) n Cmax
(μg/mL) AUC0-12
(μg・hr/mL)
20 8 1.31±0.73 4.66±1.20
注1:活性代謝物測定のために承認外の高用量を投与している。
(測定法:蛍光法)(mean±S.D.)
表2 造血幹細胞移植の前治療時におけるシクロホスファミドの薬物動態パラメータ
半減期(hr) P値 文献
Day1
Day2 P値 文献
7.1
5.5 p<0.0005 6)
4.7±1.3
2.8±0.4 p<0.02 7)
8.7±4.6
3.6±0.9 p=0.00000 8)
6.77±1.27
4.51±0.99 p=0.00001 9)
(mean±S.D.)
臨床成績
1. 自覚的並びに他覚的症状の緩解
再評価結果における自覚的並びに他覚的症状の緩解による有効性評価対象例(本剤の単独投与例)4976例の疾患別有効率は,次のとおりであった。
表3 臨床成績参照
2. 造血幹細胞移植の前治療
(1) 急性白血病,慢性骨髄性白血病,骨髄異形成症候群,再生不良性貧血の有効性評価対象66例の患者に対して,他の前治療の併用下で,本剤1日50~60mg/kgを2~4日点滴静注し,その後造血幹細胞移植を実施し,前治療薬剤の評価を実施した。
(2) 本剤の骨髄抑制効果ありは98.5%(65例/66例),移植骨髄生着あり97.0%(64例/66例),前治療の総合効果は95.5%(63例/66例)で,すぐれた有効性を示した。
(3) 本剤は白血球数を速やかに減少(300/mm3未満,平均7.5日)させ,その後白血球数1000/mm3以上に比較的早く回復(移植後平均16.5日)させることから,造血幹細胞移植時の前治療の条件に合致するものと考えられた。
臨床成績の表
表3 臨床成績
疾患名 有効例数/
有効性評価
対象例数 有効率(%) 疾患名 有効例数/
有効性評価
対象例数 有効率(%)
多発性骨髄腫 159/362 43.9 慢性白血病 92/191 48.2
悪性リンパ腫 616/1060 58.1 咽頭癌 17/28 60.7
肺癌 152/537 28.3 胃癌 57/270 21.1
乳癌 364/1005 36.2 膵癌 5/21 23.8
急性白血病 134/382 35.1 肝癌 13/33 39.4
真性多血症 2/3 - 結腸癌 31/132 23.5
子宮癌 63/304 20.7 睾丸腫瘍 17/27 63.0
卵巣癌 166/358 46.4 絨毛性疾患 25/39 64.1
神経腫瘍 42/84 50.0 横紋筋肉腫 22/34 64.7
骨腫瘍 28/61 45.9 悪性黒色腫 11/45 24.4
薬効薬理
1. 薬理作用
抗腫瘍効果
(1) 動物移植性腫瘍に対する効果(in vivo)
マウスのEhrlich癌,Bashford癌,ラットの吉田肉腫,Walker癌,Jensen肉腫等に対して明らかな腫瘍増殖抑制効果を示し,マウスL1210白血病,ラット腹水肝癌AH13等のほか多くの動物移植性腫瘍に対して延命効果を認めている16)~19)。
(2) 細胞学的効果(in vitro)
ラット吉田肉腫の試験において,短時間内に分裂像の減少,異常分裂像がみられ,細胞の膨化,核の崩壊,細胞質の融解を認めた20)。
2. 作用機序
シクロホスファミドは生体内で活性化された後,腫瘍細胞のDNA合成を阻害し,抗腫瘍作用をあらわすことが認められている。
(1) マウスEhrlich癌(腹水型)に75mg/kgを腹腔内投与し,腫瘍細胞の核酸合成に及ぼす影響をみたところ,DNA及びRNAの合成を共に抑制したがDNAの方をより著明に抑制した21)。
(2) マウスEhrlich癌(腹水型)に30,60,120mg/kgを腹腔内に投与した場合,いずれの投与量においても,腫瘍細胞分裂周期のG2期(分裂前期)に作用し,M期(分裂期)への移行を遅らせ,その結