尿薬を投与しても体液貯留が認められるうっ血性心不全患者を対象に、トルバプタン15mg又はプラセボを1日1回7日間経口投与し有効性を検討した。主要評価項目である最終投与時の体重変化量は、トルバプタン15mg群-1.54±1.61kg(ベースライン:59.42±12.30kg、53例)(平均値±標準偏差、以下同様)、プラセボ群-0.45±0.93kg(ベースライン:55.68±12.60kg、57例)であり、トルバプタン群では、プラセボ群に比較して有意な体重減少が認められた(p<0.0001、t検定)。体重減少は投与翌日よりみられ投与期間を通じて継続した(図2)。また、最終投与時における心性浮腫に伴う所見(頚静脈怒張、肝腫大、下肢浮腫)が改善した(表5)24)。
図2 心性浮腫患者における体重のベースラインからの変化量(プラセボとの二重盲検比較試験)
2. 肝性浮腫
※第III相二重盲検比較試験において、他の利尿薬を投与しても体液貯留が認められる肝硬変患者を対象に、トルバプタン7.5 mg又はプラセボを1日1回7日間経口投与し有効性を検討した。主要評価項目である最終投与時の体重変化量は、トルバプタン7.5 mg群-1.95±1.77 kg(ベースライン:59.35±12.69 kg、82例)(平均値±標準偏差、以下同様)、プラセボ群-0.44±1.93 kg(ベースライン:59.15±13.15 kg、80例)であり、トルバプタン群では、プラセボ群に比較して有意な体重減少が認められた(p<0.0001、t検定)。体重減少は投与翌日よりみられ投与期間を通じて継続した(図3)。最終投与時における肝性浮腫に伴う所見(腹水量、腹囲、下肢浮腫)が改善した(表6)。また、臨床症状(腹部膨満感、倦怠感、臥位での圧迫感、呼吸困難感、全身状態)も改善した25)。
図3 肝性浮腫患者における体重のベースラインからの変化量(プラセボとの二重盲検比較試験)
3. 常染色体優性多発性のう胞腎
※第III相二重盲検比較試験(国際共同試験)3)において、常染色体優性多発性のう胞腎患者(1,444例、日本人患者177例を含む)を対象に、トルバプタン45mg/15mg、60mg/30mg、90mg/30mg又はプラセボを朝、夕1 日2 回3 年間経口投与し有効性を検討した。
対象とした常染色体優性多発性のう胞腎患者は、以下の条件を満たした。(1)20歳(海外は18歳)以上50歳以下、(2)無作為割付前31日以内のクレアチニンクリアランスが60mL/min以上、(3)無作為割付時のMRIにより腎容積の増加が速いと推定される患者(両側腎容積750mL以上)。
投与は、1 日60mg(朝45mg、夕15mg)より開始し、忍容性が認められれば、1 日90mg(朝60mg、夕30mg)、1 日120mg(朝90mg、夕30mg)と1 週ごとに漸増し、各被験者が長期間服用可能な最大用量を3 年間投与した。
※主要評価項目である両側腎容積の変化率の群間差は-2.7%/年(トルバプタン群:2.8%/年の増加、プラセボ群:5.5%/年の増加)となり、プラセボ群に比べトルバプタン群で変化率を有意に減少させた(p<0.001)(図4)。また、常染色体優性多発性のう胞腎の臨床症状に関する複合評価項目(腎機能悪化、腎臓痛、高血圧悪化、アルブミン尿悪化)においても、複合イベントの発現リスクを有意に減少させた(表7)。複合評価項目の各項目及び腎機能の変化の結果については、表7に示す。日本人部分集団においても同様な結果であった。
図4 常染色体優性多発性のう胞腎患者における両側腎容積の変化率に対する影響(プラセボとの二重盲検比較試験)
腎容積のベースラインの平均値:トルバプタン群1,704.8mL、プラセボ群1,667.5mL
臨床成績の表
表5 心性浮腫に伴う所見の変化(プラセボとの二重盲検比較試験)
心性浮腫に伴う所見 トルバプタン15mg群 プラセボ群
頚静脈怒張変化量 (cm)
[例数] -2.03±2.81
[27] -0.51±1.18
[19]
肝腫大変化量 (cm)
[例数] -1.07±0.89
[18] -0.35±1.00
[17]
下肢浮腫改善率 (%)
[例数] 63.9
[23/36] 42.1
[16/38]
(平均値±標準偏差)
表6 肝性浮腫に伴う所見の変化(プラセボとの二重盲検比較試験)
肝性浮腫に伴う所見 トルバプタン7.5mg群 プラセボ群
腹水変化量 (mL)
[例数] -492.4±760.3
[82] -191.8±690.8
[80]
腹囲変化量 (cm)
[例数] -3.38±3.56
[81] -1.11±3.67
[79]
下肢浮腫改善率 (%)
[例数] 54.8
[23/42] 28.3
[13/46]
(平均値±標準偏差)
表7 常染色体優性多発性のう胞腎における各評価項目の結果26)
全体集団
トルバプタン群 全体集団
プラセボ群 日本人集団
トルバプタン群 日本人集団
プラセボ群
腎容積の変化率
変化率(1) 2.80
(n=819) 5.51
(n=458) 1.27
(n=106) 5.04
(n=58)
腎容積の変化率
群間差(p値)(5) -2.708(p<0.0001) -2.708(p<0.0001) -3.770(p<0.0001) -3.770(p<0.0001)
複合評価項目
イベント数(2) 43.94
(n=961) 50.04
(n=483) 40.98
(n=118) 51.87
(n=59)
複合評価項目
ハザード比(p値)(6) 0.865(p=0.0095) 0.865(p=0.0095) 0.771(p=0.1281) 0.771(p=0.1281)
複合評価項目における各項目
腎機能悪化
イベ