行群間比較試験19)
副腎皮質ステロイド0.2mg/kg/日以上(プレドニゾロン換算値)による治療にも関わらず高安動脈炎の再発を認める12歳以上の患者を対象に、副腎皮質ステロイドを増量の上、症状の寛解を達成した後に、副腎皮質ステロイド漸減投与下でトシリズマブ162mg/1週皮下注(例数:18例)又はプラセボ(例数:18例)を投与する二重盲検比較試験を実施した。二重盲検期間終了後、162mg/1週皮下注を非盲検下で継続投与した。成績は以下のとおりであった。
1) 再発抑制効果
高安動脈炎の再発までの期間を評価した結果を下記の図6と表5に示す。
**図6 高安動脈炎の再発までの期間(Kaplan-Meier曲線)
2) 副腎皮質ステロイドの減量効果
試験開始時の副腎皮質ステロイド投与量は30mg/日(20-100mg/日の中央値)であった。本剤投与後、最終投与量が10mg/日以下となった被験者の割合は、二重盲検期間終了時点で61.1%(18例中11例)であった。
(2) 巨細胞性動脈炎患者を対象とした海外第III相二重盲検並行群間比較試験20)
50歳以上の巨細胞性動脈炎の新規発症又は再発患者を対象に、副腎皮質ステロイドのベースラインの投与量を20~60mg/日(プレドニゾン換算値)とし、26週間の副腎皮質ステロイド漸減投与下でトシリズマブ162mg/1週皮下注又は162mg/2週皮下注を投与する2群と26週間又は52週間の副腎皮質ステロイド漸減投与下でプラセボを投与する2群の計4群で52週間の二重盲検比較試験を実施した。成績は以下のとおりであった。
1) 再発抑制効果
初回投与52週後の寛解維持割合を下記の表6に示す。26週間の副腎皮質ステロイド漸減投与下のプラセボ群14.0%に対し、162mg/1週皮下注群で56.0%、162mg/2週皮下注群で53.1%とプラセボ群に比べて有意に高かった。
2) 副腎皮質ステロイドの減量効果
52週間の累積副腎皮質ステロイド投与量(中央値)は、26週間又は52週間の副腎皮質ステロイド漸減投与下のプラセボ群でそれぞれ3296.0mg、3817.5mgであったのに対し、トシリズマブ162mg/1週皮下注又は162mg/2週皮下注投与群はいずれも1862.0mgであった。
表2 初回投与24週後のACR基準20%、50%及び70%改善頻度
例数 点滴静注群
156 皮下投与群
159 群間差注7)
[95%信頼区間]
ACR20 88.5% 79.2% -9.4%
[-17.6;-1.2]
ACR50 67.3% 63.5% -4.3%
[-14.7;6.0]
ACR70 41.0% 37.1% -3.8%
[-14.5;6.8]
注7)群間差(皮下投与群―点滴静注群)は登録時の体重(60kg未満、60kg以上)と抗TNF製剤の前治療の有無を層別因子とし、Mantel-Haenszel法を用いて調整した。
*表3 初回投与12週後のDAS28のベースラインからの変化量
例数 Q2W群
20 QW群
21 群間差注8)
[95%信頼区間]
P値
ベースライン 5.49±1.37 5.91±1.23 /
投与12週後 4.65±1.81 3.77±1.62 /
ベースラインからの変化量 -0.84±1.14 -2.14±1.71 -1.21
[-2.13;-0.30]
P=0.0108
**,*(平均値±SD)
*注8)群間差(QW群-Q2W群)は、登録時のDAS28を共変量とした共分散分析。
表4 投与52週後のModified Sharp法による各スコアの変化量
例数
既存治療
143 トシリズマブ
157 P値
骨びらん 3.21(1.0) 0.85(0.0) <0.001
関節裂隙狭小化 2.91(1.0) 1.49(0.0) 0.024
Total 6.12(2.5) 2.34(0.5) 0.001
( )内は中央値
**表5 高安動脈炎の再発までの期間(ITT集団)
本剤群 プラセボ群
例数 18 18
無再発被験者数(%) 10(55.6) 7(38.9)
再発までの期間の中央値(週)注9)
[95%信頼区間]注10) 推定不能
[12.1;推定不能] 12.1
[10.7;16.0]
ハザード比[95.41%信頼区間]注11)
P値注12),注13) 0.41[0.15;1.10]
P=0.0596 0.41[0.15;1.10]
P=0.0596
**注9)Kaplan-Meier法。
**注10)二重対数変換のBrookmeyer-Crowley法。
**注11)年齢カテゴリ(18歳未満、18歳以上65歳未満、65歳以上)を層別因子としたCox比例ハザードモデル。
**注12)年齢カテゴリ(18歳未満、18歳以上65歳未満、65歳以上)を層別因子としたLog-rank検定。
**注13)O’Brien-Fleming型のα消費関数に基づき、最終解析時の有意水準は両側0.0459とされた。
**表6 初回投与52週後の寛解維持割合(ITT集団,NRI)
本剤1週間隔投与群 本剤2週間隔投与群 プラセボ群 プラセボ+52週CS漸減群
例数 100 49 50 51
寛解維持割合(例数) 56.0%(56) 53.1%(26) 14.0%(7) 17.6%(9)
プラセボ群との群間差
[99.5%信頼区間]
P値注14),注15) 42.0
[18.0;66.0]
P<0.0001 39.1