評価項目(EGFR遺伝子変異) ゲフィチニブ群(例数) カルボプラチン+パクリタキセル群(例数) ハザード比注) 95%信頼区間
無増悪生存期間(陽性) 9.5ヵ月(中央値)(n=132) 6.3ヵ月(中央値)(n=129) 0.482 0.362-0.642
無増悪生存期間(陰性) 1.5ヵ月(中央値)(n=91) 5.5ヵ月(中央値)(n=85) 2.853 2.048-3.975
全生存期間(陽性) 21.6ヵ月(中央値)(n=132) 21.9ヵ月(中央値)(n=129) 1.002 0.756-1.328
全生存期間(陰性) 11.2ヵ月(中央値)(n=91) 12.7ヵ月(中央値)(n=85) 1.181 0.857-1.628
注) ハザード比はCox比例ハザードモデルにより算出した。ハザード比が1を下回っている場合、ゲフィチニブ投与時の増悪あるいは死亡のリスクがカルボプラチンとパクリタキセル併用化学療法時と比較して低いことを意味している。
薬効薬理
1. 抗腫瘍効果
in vitro系において、ゲフィチニブは口腔扁平上皮癌株KBのEGF刺激による増殖を阻害した(IC50:0.054μmol/L)18)。ヒト腫瘍ヌードマウス移植系において、ゲフィチニブは12.5~200mg/kg/日の用量で非小細胞肺癌株A549、ヒト前立腺癌株Du145、ヒト外陰部腫瘍株A431、大腸癌株CR10、HCT15、HT29、LoVo、口腔扁平上皮癌株KB、卵巣癌株HX62に対して腫瘍増殖抑制作用を示した18)。
2. 作用機序
ゲフィチニブはEGFRチロシンキナーゼを選択的に阻害し(EGFRチロシンキナーゼに対するIC50は0.027μmol/Lであり、ErbB2、KDR、Flt-1、Raf、MEK-1及びERK-2に対する阻害作用はその100分の1以下)、腫瘍細胞の増殖能を低下させる18)。また、DNA断片化19)及び組織形態学的観察20),21)に基づき、ゲフィチニブがアポトーシスを誘導するとの報告がある。さらに、血管内皮増殖因子(VEGF)の産生抑制を介して腫瘍内の血管新生を阻害することも報告されている22)。さらにゲフィチニブは野生型EGFRよりも変異型EGFRに対してより低濃度で阻害作用を示し23)、アポトーシスを誘導する24)ことにより、悪性腫瘍の増殖抑制あるいは退縮を引き起こすことが報告されている。
3. 代謝物25)
ヒトの主代謝物O-脱メチル体のEGF刺激下での細胞増殖に対する阻害作用はゲフィチニブの約14分の1であり、本代謝物の臨床効果への寄与は小さいと思われる。
有効成分に関する理化学的知見
一般名 :ゲフィチニブ(Gefitinib)(JAN)
化学名 :N-(3-Chloro-4-fluorophenyl)-7-methoxy-6-[3-(morpholin-4-yl)propoxy]quinazolin-4-amine
構造式 :
分子式 :C22H24ClFN4O3
分子量 :446.90
融点 :約195℃
分配係数:14000(1-オクタノール/pH9緩衝液)
性状 :白色の粉末である。酢酸(100)、ジメチルスルホキシドに溶けやすく、ピリジンにやや溶けやすく、テトラヒドロフランにやや溶けにくく、メタノール、エタノール(99.5)、酢酸エチル、2-プロパノール、アセトニトリルに溶けにくく、水にほとんど溶けない。ゲフィチニブの溶解度はpHに依存する。低pH域ではやや溶けにくく、pH4~6の間で溶解度は大きく低下し、pH6以上においてはほとんど溶けない。製剤(イレッサ錠250)の各pHにおける溶出率は上記のゲフィチニブの溶解度に関する知見と一致しており、pH5.0以下では15分以内に85%以上の溶出がみられたが、pHが増加するにつれて溶出率が次第に低下した。
表 イレッサ錠250の溶出率(%)
有効成分に関する理化学的知見の表
試験液 15分 30分 45分
pH1.2 101 102 -
pH3.0 90 96 -
pH4.0 89 94 96
pH5.0 87 96 96
pH6.8 <10 <10 <10
水 <10 <10 <10
包装
イレッサ錠250:[PTP]14錠
主要文献及び文献請求先
主要文献
1)
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2)
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Fukuoka, M., e