臨床試験で、プラセボを投与した患者に比べて死亡率が高いことが示されたとの報告がある9)。
注)これらの患者への投与は、本邦では承認外である。
薬物動態
1. 血中濃度
(1) 健康成人10)
健康成人男子7例に300国際単位(以下IU)を静脈内投与した場合、血漿中濃度は、投与直後に最高血中濃度(以下Cmax)に達し、それ以降半減期0.4時間及び7.0時間の2相性の減衰を示した。
エスポー及びプラセボ投与後の血漿中濃度推移
(2) 透析施行中の腎不全患者11)
透析施行中の腎不全患者11例に300IUを静脈内投与した場合、血漿中濃度は、健康成人とほぼ同様の推移を示し、半減期6.0時間の減衰を示した。1,500IU(8例)又は3,000IU(12例)を静脈内投与した場合、半減期はそれぞれ5.9時間又は7.5時間の減衰を示し、投与量の増加に伴い血漿中からの消失はやや緩やかとなった。
エスポー投与後の血漿中濃度推移
(3) 未熟児12)
極小未熟児3例に200IU/kgを単回皮下投与した場合、血清中濃度は、投与8時間後にCmaxに達し、Cmaxは434.0mIU/mLであった。また、Cmaxに達した後、半減期が10.4時間の減衰を示した。
エスポー投与後の血清中濃度推移
2. 尿中排泄10),12)
健康成人男子7例に300IUを静脈内投与した場合、投与後24時間までに投与量の0.88%が尿中へ排泄された。
極小未熟児2例に200IU/kgを皮下投与した場合、投与後48時間までに投与量の0.18%が排泄された。
臨床成績
1. 透析施行中の腎性貧血
(1) 一般臨床試験13~16)、二重盲検比較試験17),18)
透析施行中の腎性貧血患者650例に対して、本剤1,500~3,000IUを毎透析終了時に静脈内投与した場合、貧血改善効果は602例に認められ、その有効率は92.6%であった。
8週間投与におけるヘマトクリットの上昇は1,500IU投与群で平均6.4%、3,000IU投与群で平均8.4%であった。
腎性貧血の改善に伴い自他覚症状(動悸、息切れ、皮膚粘膜の蒼白など)の改善が認められた。
(2) 輸血量に及ぼす影響15)
長期投与試験において、本剤投与開始前3ヵ月と試験期間48週の輸血量を比較すると、輸血を受けていた症例は40例から6例に減少し、総輸血量も236単位から20単位に減少した。
2. 未熟児貧血
一般臨床試験19),20)、非盲検比較試験21)
未熟児貧血患児72例に対して、本剤200IU/kgを週2回皮下投与した場合、貧血改善効果は62例に認められ、その有効率は86.1%であり、最低ヘモグロビン濃度低下抑制効果及び輸血回避効果が認められた。
薬効薬理
本剤は赤血球前駆細胞に直接作用し、造血効果を発揮する。
(1) 造血作用22~24)
本剤をラット、マウス及びイヌ等の正常動物に静脈内投与した場合、用量及び投与回数に依存して顕著な造血効果が認められている。また、部分腎摘出ラット、ゲンタマイシン誘導腎障害ラット及び遺伝性嚢胞腎マウスを用いた腎性貧血モデルで、本剤の静脈内投与により、顕著な貧血改善が認められている。
(2) 作用機序25),26)
各種造血前駆細胞に対して、本剤のコロニー形成亢進作用を検討した結果、後期赤芽球前駆細胞(CFU-E)由来のコロニー形成を顕著に促進させ、高濃度下では前期赤芽球前駆細胞(BFU-E)由来のコロニー形成を促進させる(in vitro)。
また、腎性貧血患者においてもCFU-E、BFU-E由来のコロニー形成を促進させる。
有効成分に関する理化学的知見
一般名
エポエチン アルファ(遺伝子組換え)
Epoetin Alfa(Genetical Recombination)
本質
本品は、遺伝子組換えヒトエリスロポエチンであり、チャイニーズハムスター卵巣細胞で産生される。165個のアミノ酸残基〔C809H1301N229O240S5;分子量:18,235.70(タンパク質部分)〕からなる糖タンパク質(分子量:約37,000~42,000)である。
取扱い上の注意
〈注射液シリンジ〉
(1)
プランジャーロッドの無理な操作はしないこと。またバックストップは、投与終了後まで外さないこと。
(2)
できるだけ使用直前までピロー包装からシリンジを取り出さないこと。
(3)
シリンジ先端部のフィルム・チップキャップが外れている、またはシリンジの破損等の異常が認められるときは使用しないこと。
**包装
エスポー注射液750:10アンプル
エスポー注射液750シリンジ:10シリンジ
エスポー注射液1500シリンジ:10シリンジ
エスポー注射液3000シリンジ:10シリンジ
主要文献及び文献請求先
主要文献
1)
Manzoni P. et al : N. Engl. J. Med. 353, 2190(2005)
2)
Besarab A. et al. : N. Engl. J. Med. 339, 584(1998)
3)
Singh A.K. et al. : N. Engl. J. Med. 355, 2085(2006)
4)
Pfeffer M. A. et al. : N. Engl. J. Med. 361, 2019(2009)
5)
Leyland-Jones B. et al. : J. Clin. Oncol. 23, 5960(2005)
6)
Henke M. et al. : Lancet 362, 1255(2003)
7)
Overgaard J. et al. : J. Clin. Oncol. 27, 15s(2009)
8)
Luksenburg H. et al. : FDA Briefing Document. ODAC May 4(2004)
9)
Smith R.E. Jr. et al. : J. Clin. Oncol. 26, 1040(2008)
10)
田中孝司ほか:臨床評価 16,547(1988)
11)
小出桂三ほか:臨床薬理 20,391(1989)
12)
中村友彦ほか:日本産婦人科・新生児血液学会誌 3,39(1993)
13)
高久史麿ほか:腎と透析 24,1009(1988)
14)
前田貞亮ほか:腎と透析 26,1115(1989)
15)
川口良人ほか:臨床医薬 4,2075(1988)
16)
久保和雄ほか:臨床透析 5,603(1989)
17)
高久史麿ほか:腎と透析 26,279(1989)
18)
藤見 惺ほか:医学のあゆみ 148,759(1989)
19)
中畑龍俊ほか:小児内科 25,5