cokinetics(PPK)解析]
健康成人男子延べ168例、本態性高血圧症及び高齢本態性高血圧症患者延べ30例、腎障害を伴う高血圧症患者18例、肝障害を伴う高血圧症患者8例、計224例から得られた2,886時点の血中カンデサルタン濃度測定値を用いて、性、年齢、体重、肝機能指標(AST(GOT)、ALT(GPT))、腎機能指標(血清クレアチニン、BUN)、血中アルブミン値及び高血圧の有無とカンデサルタンのクリアランス、分布容積、相対的バイオアベイラビリティとの関連性を検討した結果、肝障害患者(AST(GOT)値>40又はALT(GPT)値>35)におけるクリアランスが45%低下することが推定されている。
2.
尿中排泄率2~5)
本態性高血圧症患者(38~68歳)8例、高齢本態性高血圧症患者(65~70歳)6例、腎障害を伴う高血圧症患者18例、肝障害を伴う高血圧症患者8例に1日1回4mgを朝食後に初回投与し、さらに1日休薬後連日7日間反復投与した時、いずれも尿中には未変化体は検出されず、活性代謝物のカンデサルタン及び非活性代謝物M-IIが排泄される。投与24時間までの尿中カンデサルタン及びM-IIの総排泄率は本態性高血圧症患者で11~12%、高齢本態性高血圧症患者では10~12%、肝障害を伴う高血圧症患者で約10~11%であり、ほとんど差は認めない。腎障害を伴う高血圧症患者の尿中排泄率は、血清クレアチニン3.0mg/dL以上の患者では1日目1.1%、9日目1.8%で、血清クレアチニン1.5mg/dL未満の腎機能正常例では1日目6.8%、9日目9.3%であった。
以上の反復投与時の血中濃度、尿中排泄率からみて、本態性高血圧症患者、高齢本態性高血圧症患者、肝障害を伴う高血圧症患者及び腎障害を伴う高血圧症患者ともに蓄積性は認められないと考えられる。
3.
血中ジゴキシン濃度に及ぼす影響6)
メチルジゴキシン使用中の慢性心不全患者(54~74歳)5例に本剤1日1回4mgを朝食後に初回投与し、さらに1日休薬後連日7日間反復投与した時においても、血中ジゴキシン濃度は本剤非投与時に比較して増加は認められない。また、カンデサルタンの血中濃度は本態性高血圧症患者に本剤を単独投与した場合とほとんど差は認められない。
4.
代謝
カンデサルタン シレキセチルはカルボキシルエステラーゼにより活性代謝物カンデサルタンに代謝され、さらに一部がCYP2C9により非活性代謝物M-IIに代謝されるが、本態性高血圧症患者に本剤を投与したときのM-IIの血中濃度及び尿中排泄率はカンデサルタンの血中濃度及び尿中排泄率に比べ低く、CYP2C9の遺伝的多型によるカンデサルタンの血中濃度への影響は少ないと考えられる。
また、カンデサルタンはCYP1A1、1A2、2A6、2B6、2C8、2C9-Arg、2C19、2D6、2E1、3A4の代謝活性を阻害しない(in vitro)。
5.
蛋白結合率
[14C]カンデサルタンをヒトの血清、4%ヒト血清アルブミン溶液に添加した時の蛋白結合率は、ともに99%以上である(in vitro)。
臨床成績
1. 高血圧症7~20)
高血圧症、腎実質性高血圧症の各患者を対象に、1日1回2~12mgを一般臨床試験では8~24週間、二重盲検比較試験では12週間、長期投与試験では24~52週間、腎障害を伴う高血圧症及び重症高血圧症における試験では2~8週間、経口投与した臨床試験において、降圧効果が評価された高血圧症のタイプ別有効率は表1のとおりである。
なお、本態性高血圧症患者を対象とした二重盲検比較試験の結果、本剤の有用性が認められている。
2. 慢性心不全7~20)
慢性心不全の患者を対象に、本剤1日1回4mgを2~4週間投与し、その後1日1回8mgを24週間投与した二重盲検比較試験(プラセボ対照)の結果、アンジオテンシン変換酵素阻害剤で治療されているか、あるいは治療されたことがある患者に対しアンジオテンシン変換酵素阻害剤に替えて本剤又はプラセボを投与した場合の「心不全症状の明らかな悪化」※の発現は本剤投与群4.6%(3/65例)であり、プラセボ群30.3%(23/76例)に比べ有意に抑制され、本剤の有用性が認められている。なお、上記試験では、ジギタリス製剤(52%)、利尿剤(83%)等が併用されている。
※心不全症状の悪化により入院・加療を要する場合、あるいは、心不全治療剤(強心剤、利尿剤、不整脈用剤、アンジオテンシン変換酵素阻害剤以外の血管拡張剤)の追加・増量処置を行い、約2週間後以降も同様の処置を継続する場合など主治医が悪化と判断した場合
表1 降圧効果が評価された高血圧症のタイプ別有効率
高血圧症のタイプ 有効率(「下降」※の率)
「判定不能」を含む 有効率(「下降」※の率)
「判定不能」を除く
本態性高血圧症(軽・中等症) 72.6%(606/835) 78.1%(606/776)
重症高血圧症 77.5%(31/40) 83.8%(31/37)
腎障害を伴う高血圧症
〔腎実質性高血圧症〕 63.4%(26/41)
〔66.7%(22/33)〕 72.2%(26/36)
〔73.3%(22/30)〕
合計 72.4%(663/916) 78.1%(663/849)
※収縮期血圧(-20mmHg以上)及び拡張期血圧(-10mmHg以上)を満たす場合、平均血圧(-13mmHg以上)を満たす場合、あるいは、下降傾向であっても150/90mmHg未満(ただし、腎障害を伴う高血圧症の入院患者では、140/85mmHg未満)に降圧した場合
薬効薬理
1.
降圧作用機序21~23)
カンデサルタン シレキセチルの降圧作用は、生体内で吸収過程において速やかに加水分解され活性代謝物カンデサルタンとなり、主に血管平滑筋のアンジオテンシンIIタイプ1(AT1)受容体においてアンジオテンシンIIと拮抗し、その強力な血管収縮作用を抑制することによって生ずる末梢血管抵抗の低下による。さらに、AT1受容体を介した副腎でのアルドステロン遊離に対する抑制作用も降圧作用に一部関与していると考えられる。
2.
レニン-アンジオテンシン系に及ぼす影響2~4,8,9)
高血圧症患者74例(本態性高血圧症56例、腎障害を伴う高血圧症患者18例)を対象に、本剤1日1回1~12mgの反復投与試験の結果、血漿レニン活性、血漿アンジオテンシンI濃度及び血漿アンジオテンシンII濃度の上昇がみられている。
3.
心血行動態、腎機能及び脳血流量に及ぼす影響24~26)
本態性高血圧症患者10例