減量又は中止する場合には、副作用の症状、重症度等に応じて以下の基準を考慮すること。減量後に再度増量はしないこと。
減量の目安
(1) 左室駆出率(LVEF)低下による休薬及び中止基準
(2) AST(GOT)、ALT(GPT)増加による休薬、減量及び中止基準
(3) 高ビリルビン血症による休薬、減量及び中止基準
(4) 血小板減少症による休薬及び減量基準
(5) 末梢神経障害による休薬基準
GradeはNCI CTCAE(v.4)による。
ULN:正常値上限
4.
本剤の投与時には、添付の日局注射用水(点滴静注用100mg:5mL、点滴静注用160mg:8mL)により溶解してトラスツズマブ エムタンシン(遺伝子組換え)20mg/mLの濃度にした後、必要量を注射筒で抜き取り、直ちに日局生理食塩液250mLに希釈し、点滴静注する。
使用上の注意
慎重投与
(次の患者には慎重に投与すること)
1.
安静時呼吸困難等の症候性の肺疾患のある患者[肺臓炎があらわれることがある(「重大な副作用」の項参照)。]
2.
左室駆出率(LVEF)が低下している患者[LVEF低下を悪化させるおそれがある(「重要な基本的注意」、「重大な副作用」の項参照)。]
3.
次に掲げる心機能の低下するおそれのある患者[心不全等の心障害があらわれるおそれがある。]
(1)
アントラサイクリン系薬剤の投与歴のある患者
(2)
胸部への放射線治療中の患者又はその治療歴のある患者
(3)
うっ血性心不全若しくは治療を要する重篤な不整脈のある患者又はその既往歴のある患者
(4)
冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症等)の患者又はその既往歴のある患者
(5)
高血圧症の患者又はその既往歴のある患者
4.
肝機能障害のある患者[安全性は確立していない。]
5.
血小板数減少のある患者又は抗凝固剤治療を受けている患者[出血のおそれがある(「重要な基本的注意」、「重大な副作用」の項参照)。]
重要な基本的注意
1.
左室駆出率(LVEF)低下、うっ血性心不全等の心障害があらわれることがあるので、本剤投与開始前には患者の心機能を確認すること。また、本剤投与中は心症状の発現状況・重篤度等に応じて適宜心機能検査(心エコー等)を行い、患者の状態(LVEFの変動を含む)を十分に観察し、休薬、投与再開又は中止を判断すること(「重大な副作用」の項参照)。
2.
Infusion reaction(症状:呼吸困難、低血圧、喘鳴、気管支痙攣、頻脈、紅潮、悪寒、発熱等)が、本剤投与中又は投与開始後24時間以内に多く報告されている。これらの症状は、主に本剤の初期の投与時にあらわれやすい。本剤投与中及び投与後は患者の状態を十分に観察し、異常が認められた場合には投与中止等の適切な処置を行うとともに、症状が回復するまで患者の状態を十分に観察すること(「重大な副作用」の項参照)。
3.
AST(GOT)、ALT(GPT)、総ビリルビン等の増加があらわれることがある。重度な肝機能障害、肝不全が認められ、死亡に至った例も報告されているので、本剤投与開始前及び投与中は定期的に肝機能検査(AST(GOT)、ALT(GPT)、総ビリルビン等)を行い、異常が認められた場合には、休薬、減量、投与中止等の適切な処置を行うこと(「重大な副作用」の項参照)。
4.
血小板数減少があらわれることがあるので、本剤投与開始前及び投与中は定期的に血小板数を測定し、出血に関する症状の有無を確認する等、患者の状態を十分に観察すること。異常が認められた場合には、休薬、減量、投与中止等の適切な処置を行うこと(「重大な副作用」の項参照)。
5.
本剤の使用にあたっては、本剤と一般名が類似しているトラスツズマブとの取り違えに注意すること(「用法・用量」、「過量投与」の項参照)。
相互作用
ヒト肝ミクロソーム等を用いたin vitro試験において、本剤を構成するメイタンシン誘導体であるDM1は、主としてCYP3A4及び一部CYP3A5で代謝されることが示唆されているため、CYP3Aを強く阻害する薬剤と併用する際には注意すること。
副作用
副作用等発現状況の概要
HER2陽性の手術不能又は再発乳癌患者を対象とした国内第II相試験(JO22997試験)のうち本剤が投与された73例において、副作用が67例(91.8%)に認められた。主な副作用は、けん怠感32例(43.8%)、鼻出血30例(41.1%)、悪心29例(39.7%)、発熱23例(31.5%)、食欲減退21例(28.8%)、血小板数減少20例(27.4%)、AST(GOT)増加15例(20.5%)等であった。(承認時)
HER2陽性の手術不能又は再発乳癌患者を対象とした海外第III相試験(TDM4370g試験)のうち本剤が投与された490例において、副作用が427例(87.1%)に認められた。主な副作用は、けん怠感201例(41.0%)、悪心165例(33.7%)、血小板数減少145例(29.6%)、AST(GOT)増加100例(20.4%)、ALT(GPT)増加79例(16.1%)等であった。(承認時)
重大な副作用
1. 間質性肺疾患注5)
(1.1%)
呼吸困難、咳嗽、疲労、肺浸潤、急性呼吸窮迫症候群等の症状を伴う肺臓炎又は間質性肺炎があらわれることがあり、死亡に至った例も報告されているので、患者の状態を十分に観察すること。異常が認められた場合には、投与中止等の適切な処置を行うこと。
2. 心障害注5)
(1.6%)
左室駆出率(LVEF)低下、うっ血性心不全等の心障害があらわれることがあり、重度の心障害に至った例も報告されている。異常が認められた場合には、投与中止等の適切な処置を行うこと。
3. 過敏症注5)
(1.4%)
アナフィラキシー等の重度の過敏症があらわれることがあるので、患者の状態を十分に観察すること。異常が認められた場合には、直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。
4. Infusion reaction注5)
(1.2%)
呼吸困難、低血圧、喘鳴、気管支痙攣、頻脈、紅潮、悪寒、発熱等を含むInfusion reactionがあらわれることがあるので、患者の状態を十分に観察し、異常が認められた場合には、投与中止等の適切な処置を行うこと。また、重度のInfusion reactionがあらわれた場合には直ちに投与を中止して適切な処置を行うとともに、症状が回復するまで患者の状態を十分に観察すること。
5. 肝機能障害注5)(28.2%)、肝不全注5)(頻度不明注6))
AST(GOT)増加(20.4%)、ALT(GPT)増加(15.5%)、血中ビリルビン増加(3.6%)等の肝機