1)の低親和性の基質であることが明らかとなった。また、チトクロームP450(CYP)系薬物代謝酵素の阻害剤ではないことが示された。臨床試験では、カスポファンギンは他の薬剤のCYP3A4代謝を誘導しなかった。カスポファンギンはP-gpの基質ではなく、またCYPによりほとんど代謝されなかった。
(1) シクロスポリンとの併用(外国人データ)6) 健康成人にカスポファンギン70mgを1日1回反復静脈内投与時にシクロスポリン4mg/kgを単回又は3mg/kgを12時間間隔で2回経口投与したとき、カスポファンギンのAUCは約35%増加した。カスポファンギンはシクロスポリンの薬物動態に影響を及ぼさなかった。
(2) タクロリムスとの併用(外国人データ)7) 健康成人にカスポファンギン70mgを1日1回反復静脈内投与時にタクロリムス0.1mg/kgを12時間間隔で2回経口投与したとき、タクロリムスの投与後12時間の血中濃度は26%減少した。一方、タクロリムスはカスポファンギンの薬物動態に影響を及ぼさなかった。
(3) リファンピシンとの併用(外国人データ)8) 健康成人にカスポファンギン50mg(静脈内投与)及びリファンピシン600mg(経口投与)を1日1回14日間反復併用投与したとき、第1日にカスポファンギンのAUCは約60%増加した。リファンピシンの定常状態でカスポファンギンと併用した際は、カスポファンギンのC24hrは約30%減少したものの、AUC及びC1hrはほとんど変化しなかった。一方、カスポファンギンはリファンピシンの薬物動態に影響を及ぼさなかった。
(4) 薬物クリアランスの誘導作用を有する薬剤との併用9)10) 母集団薬物動態解析の結果から、成人患者では薬物クリアランスの誘導作用を有する薬剤(エファビレンツ、ネビラピン、デキサメタゾン、フェニトイン及びカルバマゼピン)とカスポファンギンとの併用により、カスポファンギンの血中濃度は臨床的に有意に低下する可能性が示唆された。また、小児患者でも薬物クリアランスの誘導作用を有する薬剤(デキサメタゾン)との併用により、成人患者と同様、カスポファンギンの血中濃度は臨床的に有意に低下する可能性が示唆された。
(5) その他の薬剤との併用(外国人データ)11)~14) 健康成人でイトラコナゾール、アムホテリシンB、ミコフェノール酸モフェチル又はネルフィナビルとカスポファンギンを併用した際、カスポファンギンの薬物動態はこれらの薬剤の影響を受けなかった。また、カスポファンギンはイトラコナゾール、アムホテリシンB及びミコフェノール酸(ミコフェノール酸モフェチルの活性代謝物)の活性代謝物の薬物動態に影響しなかった。
表1 日本人健康成人にカスポファンギンを1日1回14日間反復静脈内投与したときの平均薬物動態パラメータ
薬物動態パラメータ 用量 例数 第1日
幾何平均
(90%信頼区間) 第14日
幾何平均
(90%信頼区間) 第14日/第1日
幾何平均比
(90%信頼区間)
AUC0-24hr
(μg・hr/mL) 50mg 6 71.09
(64.46,78.41) 120.03
(109.01,132.16) 1.69
(1.62,1.76)
AUC0-24hr
(μg・hr/mL) 70/50mg‡ 6 106.61
(94.73,119.98) 123.58
(111.60,136.84) 1.16
(1.13,1.19)
AUC0-24hr
(μg・hr/mL) 100mg 6 141.19
(132.64,150.30) 268.60
(243.45,296.34) 1.90
(1.80,2.00)
C1hr
(μg/mL) 50mg 6 8.93
(7.97,10.01) 11.90
(10.68,13.27) 1.33
(1.28,1.39)
C1hr
(μg/mL) 70/50mg‡ 6 14.44
(13.49,15.45) 12.41
(11.25,13.69) 0.86
(0.81,0.91)
C1hr
(μg/mL) 100mg 6 17.21
(15.46,19.15) 23.29
(21.73,24.96) 1.35
(1.29,1.43)
C24hr
(μg/mL) 50mg 6 1.14
(0.94,1.38) 2.48
(2.22,2.78) 2.17
(1.99,2.38)
C24hr
(μg/mL) 70/50mg‡ 6 1.53
(1.21,1.94) 2.51
(2.08,3.02) 1.64
(1.49,1.81)
C24hr
(μg/mL) 100mg 6 2.28
(1.90,2.73) 6.20
(5.25,7.33) 2.72
(2.46,3.01)
t1/2β(hr)† 50mg 6 - 13.90
(1.56) -
t1/2β(hr)† 70/50mg‡ 6 - 13.77
(1.99) -
t1/2β(hr)† 100mg 6 - 16.01
(2.87) -
† t1/2βは調和平均(ジャックナイフ標準偏差)
‡ 第1日:70mg、第2日~第14日:50mg/日
表2 日本人及び外国人小児患者にカスポファンギンを1日1回反復静脈内投与したときの定常状態における平均薬物動態パラメータ
薬物動態パラメータ 日本人小児患者
例数 日本人小児患者
幾何平均
(95%信頼区間) 外国人小児患者
例数 外国人小児患者
幾何平均
(95%信頼区間)
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