ても有効濃度が長時間持続する。1g静注約24時間後の平均値は、胆管胆汁中131μg/mL12)、腹腔内浸出液中11.8μg/mL13)、子宮・卵巣中3.4~8.8μg/g14)、骨盤死腔浸出液中20μg/mL15)であった。
また、扁桃16)、喀痰17)、胆嚢組織12)、虫垂壁18)、羊水19)、乳突洞粘膜20)、上顎洞粘膜21)、口腔組織22)、精巣上体23)への移行も認められ、わずかながら乳汁19)への移行も認められた。
小児化膿性髄膜炎患者での髄液中濃度24)は約50mg/kg静注あるいは点滴静注で、平均7.7μg/mL(投与0~6時間後)、平均6.8μg/mL(投与6~12時間後)であった。
4. 代謝25)
尿中には抗菌活性を有する代謝物は認められていない。
5. 排泄
本剤は未変化体で尿中、胆汁中に排泄される。腎機能正常男子42例に0.5、1gを静注あるいは点滴静注したとき、投与後24時間の尿中排泄率は約50%であった7)。また、小児33例に10~40mg/kgを静注あるいは点滴静注したとき、投与後24時間の尿中排泄率は約60%であった8)。
臨床成績
成人及び小児の1,513例についての一般臨床成績概要は次表のとおりである。なお、1日投与量は成人では大部分が1~2g、小児では20~60mg/kgであった。26)
臨床成績の表
感染症 例数 有効率(%)
敗血症 23 78.3
呼吸器感染症 咽頭・喉頭炎、扁桃炎 87 97.7
呼吸器感染症 急性気管支炎 32 87.5
呼吸器感染症 肺炎 342 85.4
呼吸器感染症 肺膿瘍 12 66.7
呼吸器感染症 膿胸 7 57.1
呼吸器感染症 慢性呼吸器病変の二次感染
(慢性気管支炎・気管支拡張症の感染時・慢性呼吸器疾患の二次感染) 127 78.7
尿路感染症 膀胱炎 205 68.8
尿路感染症 腎盂腎炎 146 80.8
腹膜炎(骨盤腹膜炎を含む) 64 92.2
腹腔内膿瘍(ダグラス窩膿瘍) 4 100.0
胆道感染症 胆嚢炎 51 88.2
胆道感染症 胆管炎 30 83.3
婦人科領域感染症 バルトリン腺炎 15 100.0
婦人科領域感染症 子宮内感染 99 98.0
婦人科領域感染症 子宮付属器炎 34 88.2
婦人科領域感染症 子宮旁結合織炎(骨盤死腔炎を含む) 25 80.0
化膿性髄膜炎 23 91.3
角膜炎(角膜潰瘍) 10 70.0
耳鼻咽喉科感染症 急性中耳炎 13 84.6(注7)
耳鼻咽喉科感染症 慢性中耳炎 34 61.8(注7)
耳鼻咽喉科感染症 副鼻腔炎 39 92.3
口腔外科感染症 顎骨周辺の蜂巣炎 36 88.9
口腔外科感染症 顎炎 55 85.5
合計 1,513 83.8
注7)中耳炎を対象とした比較試験における本剤の有効率は急性中耳炎(17例)で70.6%、慢性中耳炎(88例)では62.5%であった27)。
淋菌感染症については、国内外において、咽頭・喉頭炎28-30)、尿道炎31,32)、子宮頸管炎30)、骨盤内炎症性疾患33)及び直腸炎28,29,34-36)に対する本剤の有効性が報告されているが、精巣上体炎(副睾丸炎)に対する報告はない。
薬効薬理
1. 抗菌作用37-40)
(1)
グラム陽性・陰性の好気性菌及び嫌気性菌に広く抗菌作用を示し、その作用は殺菌的である。
(2)
グラム陰性桿菌の大腸菌、シトロバクター属、クレブシエラ属、エンテロバクター属、セラチア属、プロテウス属、インフルエンザ菌及びバクテロイデス属に対して強い抗菌力を示す。
(3)
グラム陽性球菌のレンサ球菌属、肺炎球菌、ペプトストレプトコッカス属に対して強い抗菌力を示す。
(4)
黄色ブドウ球菌に対する感受性のピークは3.13μg/mLであった。なお同一の菌株においてアルブミンを添加した培地を使用した場合には、感受性のピークは25.0μg/mLと上昇を示した。
(5)
淋菌に対して強い抗菌力を示す。
(6)
各種細菌の産生するβ-lactamaseに対して安定である。
2. 作用機序37,38,41)
作用機序は細胞壁合成阻害である。大腸菌ではペニシリン結合蛋白質の3に最も親和性が高く、次いで1a、1b、2の順であり、細菌細胞壁ペプチドグリカン架橋形成を阻害して殺菌的に作用する。
有効成分に関する理化学的知見
一般名
セフトリアキソンナトリウム水和物
(Ceftriaxone Sodium Hydrate)(JAN)
略号
CTRX
化学名
Disodium(6R,7R)-7-[(Z)-2-(2-aminothiazol-4-yl)-2-(methoxyimino)acetylamino]-3-(6-hydroxy-2-methyl-5-oxo-2,5-dihydro-1,2,4-triazin-3-ylsulfanylmethyl)-8-oxo-5-thia-1-azabicyclo[4.2.0]oct-2-ene-2-carboxylate hemiheptahydrate
構造式
分子式
C18H16N8Na2O7S3・3 1/2 H2O
分子量
661.60
性状
白色~淡黄白色の結晶性の粉末である。水又はジメチルスルホキシドに溶けやすく、メタノールにやや溶けにくく、エタノール(99.5)に極めて溶けにくく、アセトニトリルにほとんど溶けない。
融点(分解)
159℃付近から黄変しはじめ、徐々に褐変し、270℃で黒色化するが、300℃まで明らかな融点ないし分解点を示さない。
取扱い上の注意