は,本剤投与中及び本剤投与後一定期間,適切な避妊を行うよう指導すること。[生殖発生毒性試験は実施されていない(本剤がヒトSLAMF7特異的で動物実験が実施できないため)。]
2.
授乳中の女性に投与することを避け,やむを得ず投与する場合には授乳を中止させること。[本剤のヒト母乳中への移行に関するデータはないが,ヒトIgGは母乳中に移行することが知られている。]
小児等への投与
低出生体重児,新生児,乳児,幼児又は小児に対する安全性は確立していない。[使用経験がない]
臨床検査結果に及ぼす影響
本剤は,ヒト化IgGκモノクローナル抗体であることから,血清中Mタンパクの血清蛋白電気泳動法及び免疫固定法の両方で検出される可能性がある。この干渉が,IgGκ型の多発性骨髄腫患者において,完全奏効の評価及び完全奏効からの再発の評価に影響を及ぼす可能性があることに注意すること。
適用上の注意
1. 調製時
(1)
患者の体重に基づき必要となるバイアル数を準備する。
(2)
18G以下の注射針を装着した注射筒を用いて,300mg製剤の場合は13mL,400mg製剤の場合は17mLの注射用水で溶解し,25mg/mLの濃度とすること。
(3)
バイアルを立てた状態でゆっくりと溶液を回転させて溶解し,穏やかに数回反転させる。バイアルは振とうせず,激しく撹拌しないこと。
(4)
完全に溶解した後,5~10分間静置する。溶解液は無色~微黄色の澄明~乳白光を呈する液である。溶解液に微粒子や変色がないか目視で確認すること。微粒子又は変色が認められた場合には使用しないこと。
(5)
患者の体重から計算した必要量をバイアルから抜き取り,通常230mLの生理食塩液又は5%ブドウ糖注射液で希釈すること。
(6)
用時調製し,調製後は速やかに使用すること。また,残液は廃棄すること。
2. 投与時
(1)
希釈液の全量を,輸液ポンプを用いて,0.22ミクロン以下のメンブランフィルターを用いたインラインフィルターを通して投与すること。
(2)
他の薬剤等との配合又は混注はしないこと。
(3)
本剤は点滴静注用としてのみ用い,急速静注は行わないこと。
その他の注意
免疫原性:
再発又は難治性の多発性骨髄腫患者を対象とした国際共同第3相試験において,299例中45例(15.1%)で本剤に対する結合抗体が検出され,そのうち19例(持続陽性は2例)で中和抗体の発現が認められた。
薬物動態
1. 血清中濃度
(1) 単回投与(外国人における成績)1)
多発性骨髄腫患者8例に本剤10mg/kgをレナリドミド及びデキサメタゾンと併用投与したときの血清中濃度推移及び血清中濃度から算出した薬物動態パラメータを以下に示す。
図1:単回投与時の血清中エロツズマブ濃度推移(平均値+標準偏差)
(表1参照)
(2) 反復投与(日本人における成績)2)
再発又は難治性の日本人多発性骨髄腫患者3例に本剤10mg/kgをレナリドミド及びデキサメタゾンと併用で毎週投与したときの静脈内投与後の血清中濃度と血清中トラフ濃度推移を以下に示す。
図2:反復投与時の血清中エロツズマブ濃度推移(平均値+標準偏差)
2. 腎機能障害患者(外国人における成績)1)
多発性骨髄腫患者で腎機能が正常(CrCL 90mL/min以上)な患者8例,重度腎機能障害(CrCL 30mL/min未満)患者7例及び末期腎不全(CrCL 30mL/min未満で血液透析を実施)患者8例に,本剤10mg/kgをレナリドミド及びデキサメタゾンと併用投与したときの本剤の薬物動態を評価した結果,腎機能が正常な患者と,重度腎機能障害及び末期腎不全患者との間に,臨床的に重要な薬物動態の違いは認められなかった。
表1:単回投与時の薬物動態パラメータ
Cmaxa
(μg/mL) Tmaxb
(h) AUC(0-T)a
(μg・h/mL) AUC(INF)a
(μg・h/mL) T-HALFa
(h) CLTa
(mL/h/kg) Vza
(mL/kg)
217
(24) 3.23
(2.9-4.9) 39559
(28) 46401
(39) 147
(66) 0.215
(46) 59.4
(30)
a:幾何平均値(変動係数%),b:中央値(最小値-最大値)
臨床成績
再発又は難治性の多発性骨髄腫患者を対象とした国際共同第3相試験(CA204004試験)3)
1~3レジメンの前治療歴を有する再発又は難治性の多発性骨髄腫患者注1)646例(日本人患者60例を含む)を対象とし,本剤注2)及びレナリドミド注3)+デキサメタゾン注4)(E-Ld群)とレナリドミド注3)+デキサメタゾン注4)(Ld群)との有効性及び安全性を比較検討する,ランダム化非盲検国際共同第3相試験を実施した。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)及び奏効割合[修正EBMT(欧州血液骨髄移植グループ)基準により部分奏効以上の効果を示した患者の割合]であり,独立評価委員会による評価を行った。その結果,PFSの中央値は,E-Ld群で19.4ヵ月,Ld群で14.9ヵ月であり,E-Ld群はLd群に比べてPFSが有意に延長した[ハザード比0.70,97.61%信頼区間:0.55, 0.88,層別log-rank検定p=0.0004(有意水準 0.0239)]。奏効割合は,E-Ld群で78.5%(252/321例,95%信頼区間:73.6, 82.9),Ld群で65.5%(213/325例,95%信頼区間:60.1, 70.7)であり,E-Ld群はLd群に比べて奏効割合が有意に改善した[共通オッズ比1.94(99.5%信頼区間:1.17, 3.23),Cochran-Mantel-Haenszel検定p=0.0002(有意水準 0.005)]。(2014年10月29日データカットオフ)
また,副次評価項目である全生存期間(OS)の中間解析の結果,OSの中央値はE-Ld群で43.7ヵ月(95%信頼区間:40.3, 推定不可),Ld群で39.6ヵ月(95%信頼区間:33.3, 推定不可)であり,統計学的に有意な延長は認められていない[ハザード比:0.77,98.6%信頼区間:0.58, 1.03,層別log-rank検定p=0.0257(有意水準=0.014)]。(2015年10月29日データカットオフ)
図3:CA204004試験での無増悪生存期間のKaplan-Meier曲線
注1)レナリドミ