組織内移行
(トミロン錠 成人の場合)
喀痰4)、扁桃5)、耳漏6)、上顎洞粘膜7)、鼻茸7)、篩骨洞粘膜7)等へ良好な移行が認められた。
3.
代謝・排泄
本剤は吸収時に腸管粘膜でエステラーゼにより代謝され、抗菌活性を有するセフテラムとピバリン酸になる8)。ピバリン酸は、カルニチン抱合をうけ、尿中にピバロイルカルニチンとして排泄される。セフテラムは、活性体のまま一部胆汁中にも排泄されるが、主に尿中に排泄され8)、小児に3mg/kg又は6mg/kgを食後経口投与したとき、平均最高尿中濃度は2~4時間後に得られ、その値はそれぞれ83μg/mL及び156μg/mLであった。投与後8時間までの平均尿中回収率は16~20%であった2)。
4.
腎機能障害者の血中濃度
(トミロン錠 成人の場合)
腎機能障害者に100mgを食後単回投与したとき、次表のとおり、腎機能の低下に伴い血中半減期の延長が認められている9)。
腎機能障害の程度(Ccr:mL/min) 血中半減期(hr)
正常者 (Ccr≧80) 0.83
軽度 (70≧Ccr≧40) 1.46
中等度 (30≧Ccr≧20) 4.36
臨床成績
国内の医療機関で実施された一般臨床試験では、総症例648例について本剤の効果が検討され、その概要は次表のとおりである。
疾患群 疾患名 有効率(%)
呼吸器感染症 咽頭・喉頭炎 97.0(96/99)
呼吸器感染症 扁桃炎(扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍を含む) 98.2(164/167)
呼吸器感染症 急性気管支炎 93.8(60/64)
呼吸器感染症 肺炎 94.9(93/98)
尿路感染症 膀胱炎、腎盂腎炎 95.0(76/80)
耳鼻科領域感染症 中耳炎 90.9(50/55)
耳鼻科領域感染症 副鼻腔炎 100(3/3)
猩紅熱 猩紅熱 98.8(81/82)
薬効薬理
1. 抗菌作用
(1)
本剤のセフテラム ピボキシルは体内で代謝され、セフテラムとなり抗菌力を示す。
(2)
セフテラムはグラム陽性・陰性菌に対し幅広い抗菌スペクトルを有し、特にグラム陽性のレンサ球菌属、肺炎球菌、グラム陰性の大腸菌、クレブシエラ属、インフルエンザ菌等に対し強い抗菌力を示した。
さらに、従来の経口セフェム剤(セファレキシン、セファクロル等)で感受性の低いプロテウス属、モルガネラ・モルガニー、プロビデンシア属に対しても優れた抗菌力を示し、その作用は殺菌的であった10)11)12)。
(3)
セフテラムは各種細菌産生のβ-ラクタマーゼに対し安定で、β-ラクタマーゼ産生株に対しても強い抗菌力を示した10)11)12)。
2. 作用機序
作用機序は細菌の細胞壁合成阻害である。ペニシリン結合タンパク(PBP)の3、1A、1Bsに強く結合して殺菌的に作用する10)。
3. 実験的感染症に対する治療効果
大腸菌、クレブシエラ・ニューモニエ、プロテウス・ミラビリス、プロテウス・ブルガリス等によるラット及びマウス実験的感染症において、優れた治療効果を示し、さらにβ-ラクタマーゼ産生株感染に対する治療効果も、セファレキシン、セファクロルより優れていた10)11)12)。
有効成分に関する理化学的知見
一般名:
セフテラム ピボキシル(Cefteram Pivoxil)
略号:
CFTM-PI
化学名:
2,2-Dimethylpropanoyloxymethyl(6R,7R)-7-[(Z)-2-(2-aminothiazol-4-yl)-2-(methoxyimino)acetylamino]-3-(5-methyl-2H-tetrazol-2-ylmethyl)-8-oxo-5-thia-1-azabicyclo[4.2.0]oct-2-ene-2-carboxylate
構造式:
分子式:
C22H27N9O7S2
分子量:
593.64
性状:
白色~微黄白色の粉末である。アセトニトリルに極めて溶けやすく、メタノール、エタノール(95)又はクロロホルムに溶けやすく、水にほとんど溶けない。
融点:
約110℃付近で半融状態となり、その後徐々に着色し、発泡分解するが、明瞭な変化点は認められない。
取扱い上の注意
本剤は吸湿しやすいため、バラ包装品は調剤時にその都度密栓すること(主成分の分解により特異臭がすることがある)。また、分包品はアルミピロ開封後なるべく速やかに使用すること。長期保存する場合は湿気を避けて保存すること。
包装
トミロン細粒小児用10%:100g 0.25g×240包
0.5g×240包
主要文献及び文献請求先
主要文献
1)
杉江 秀夫ほか:脳と発達,24(1),79-80(1992)
2)
本廣 孝ほか:Jpn.J.Antibiot.,42(9),2023-2061(1989)
3)
渡辺 啓子ほか:化学療法の領域,7(2),349-360(1991)
4)
力富 直人ほか:Chemotherapy,34(S-2),535-545(1986)
5)
藤巻 豊ほか:Chemotherapy,34(S-2),913-926(1986)
6)
栗山 一夫 :耳鼻臨床,79(8),1363-1370(1986)
7)
大西信治郎ほか:Chemotherapy,34(S-2),927-933(1986)
8)
才川 勇ほか:Chemotherapy,34(S-2),158-165(1986)
9)
福岡 義和ほか:Chemotherapy,34(S-2),150-157(1986)
10)
才川 勇ほか:Chemotherapy,34(S-2),66-84(1986)
11)
岡本 世紀ほか:Chemotherapy,34(S-2),1-12(1986)
12)
西野 武志ほか:Chemotherapy,34(S-2),44-60(1986)
文献請求先
**大正富山医薬品株式会社 メディカルインフォメーションセンター