血液透析患者6例に100mg(力価)を食後に単回経口投与したとき、血漿中濃度の消失半減期は健康成人の約11倍に増加した。同じ患者に100mg(力価)を食後に単回経口投与し、ほぼ最高血漿中濃度に達した時間より4時間透析を施行したとき、透析中の半減期は非透析日の約1/6に短縮し、透析による除去率は61%であった4)。(「薬物動態の表」表2参照)
2. 組織内移行
患者喀痰中5)、扁桃組織6)7)、上顎洞粘膜組織6)7)、中耳分泌物6)7)、皮膚組織8)、口腔組織9)10)等への移行が認められた。なお、乳汁中への移行は認められていない11)。
3. 代謝
ヒトの血漿、尿及び糞便中には抗菌活性代謝物質は認められていない1)。
4. 排泄
主として腎より排泄される。
(1)
健康成人6例(空腹時)における50、100、200mg(力価)経口投与時の尿中排泄率(0~24時間)は約26~33%で、最高尿中濃度は4~6時間でそれぞれ44.3、81.5、132μg/mLであった1)。
(2)
腎機能障害患者に100mg(力価)を単回経口投与したとき、腎機能の低下に伴い排泄の遅延が認められた3)。
薬物動態の表
表1 腎機能障害患者への100mg単回投与時
Ccr(mL/min) 例数 t1/2(h) AUC(μg・h/mL)
≧100 3 1.66 2.76
51~70 1 2.41 10.74
31~50 3 2.92 7.48
≦30 2 4.06 16.94
表2 血液透析患者への100mg単回投与時
Cmax(μg/mL) Tmax(h) t1/2(h) AUC0-∞(μg・h/mL) 除去率(%)
非透析日 2.36 9.00 16.95 69.05 -
透析日 2.03 - 2.76注) 30.18 61
注)透析中の半減期
臨床成績
1,638例の一般臨床試験における成績概要は次のとおりである。なお、一般臨床試験における1日投与量は主として300mg(力価)(食後分3)であり、最大600mg(力価)(食後分3)であった。(「臨床成績の表」表3参照)
また、3種類の二重盲検比較試験(浅在性化膿性疾患12)、肺炎13)、複雑性尿路感染症14))において本剤の有用性が認められている。
臨床成績の表
表3
疾患名 有効例/症例数 有効率(%)
皮膚感染症:表在性皮膚感染症 22/25 88.0
毛嚢(包)炎 20/23 87.0
伝染性膿痂疹 2/2 -
皮膚感染症:深在性皮膚感染症 96/110 87.3
せつ、せつ腫症、よう 46/52 88.5
丹毒、蜂巣炎、ひょう疽、化膿性爪囲(廓)炎 50/58 86.2
皮膚感染症:リンパ管・リンパ節炎 13/14 92.9
皮膚感染症:慢性膿皮症(皮下膿瘍、汗腺炎、感染性粉瘤、慢性膿皮症) 91/107 85.0
外科領域感染症:外傷・熱傷及び手術創等の二次感染 31/36 86.1
外科領域感染症:乳腺炎 11/13 84.6
外科領域感染症:肛門周囲膿瘍 12/12 100
呼吸器感染症:咽頭・喉頭炎 27/31 87.1
呼吸器感染症:扁桃炎 65/67 97.0
呼吸器感染症:急性気管支炎 108/133 81.2
呼吸器感染症:肺炎 139/174 79.9
尿路感染症:膀胱炎 271/327 82.9
尿路感染症:腎盂腎炎 60/76 78.9
尿路感染症:尿道炎(淋菌性尿道炎) 45/45 100
婦人科感染症:バルトリン腺炎 37/40 92.5
婦人科感染症:子宮内感染 69/78 88.5
婦人科感染症:子宮付属器炎 21/25 84.0
眼科領域感染症:麦粒腫 18/18 100
眼科領域感染症:瞼板腺炎 11/14 78.6
耳鼻科感染症:外耳炎 22/26 84.6
耳鼻科感染症:中耳炎 43/60 71.7
耳鼻科感染症:副鼻腔炎 23/33 69.7
歯科口腔外科感染症:歯周組織炎 54/59 91.5
歯科口腔外科感染症:歯冠周囲炎 35/40 87.5
歯科口腔外科感染症:顎炎 69/75 92.0
合計 1,393/1,638 85.0
薬効薬理
1. 抗菌作用
(1)
グラム陽性菌及び陰性菌に広範囲な抗菌スペクトルを有し、特にグラム陽性菌のブドウ球菌属、レンサ球菌属等に対して強い抗菌力を示し、その作用は殺菌的である15)~19)。
(2)
各種細菌の産生するβ-lactamaseに安定で、β-lactamase産生菌にも優れた抗菌力を示す15)~17)20)21)。
2. 作用機序
作用機序は細菌細胞壁の合成阻害であり、その作用点は菌種により異なるが、ペニシリン結合蛋白(PBP)の1(1a、1bs)、2及び3に親和性が高い20)21)。
有効成分に関する理化学的知見
一般名
セフジニル(Cefdinir)
略号
CFDN