ワルファリンが主である。6)7)
本薬の代謝に関与する主な肝薬物代謝酵素CYPの分子種はCYP2C9(光学異性体のS体)であり、CYP1A2、CYP3A4(光学異性体のR体)も関与することが報告されている。8)
薬物動態の表
ワーファリン顆粒0.2%及び錠1mg単回経口投与時の薬物動態パラメータ
製剤 例数 Cmax
(ng/mL) tmax
(hr) AUC0-144
(ng・hr/mL) t1/2
(hr)
顆粒0.2% 24 163±27 0.25(0.25-0.50) 3497±476 102±32
錠1mg 24 157±27 0.25(0.25-2.00) 3366±499 106±52
平均値±標準偏差、tmaxは中央値(最小値-最大値)
臨床成績
臨床効果
(1) 静脈血栓に対する効果
網膜静脈血栓症の視力の改善に有効であった。9)
(外国人のデータ)
血栓性静脈炎、心筋梗塞、冠不全及び肺梗塞の患者の症候の消失に有効であった。10)
(2) 心筋梗塞における冠状動脈閉塞に対する効果
(外国人のデータ)
急性心筋梗塞入院患者92例を対象に、心筋梗塞後の腓静脈血栓症の予防効果について検討した。その結果トロンボテスト値5~15%に維持した投与群は、静脈血栓症検出3例(6.5%)で、非投与群の10例(22%)に比較して有意(p<0.05)な抗血栓効果を認めた。11)
また、近年の長期抗凝血薬療法の無作為臨床試験成績として、心筋梗塞患者1,214例を対象とし、プラセボ投与群に比べ全死亡率、再梗塞、脳血管障害の各々の減少率は、24%(p=0.027)、34%(p=0.0007)、55%(p=0.0015)であったとの報告がある。12)
(3) 非弁膜症性心房細動における脳塞栓症等の全身性塞栓症の予防に対する効果
(外国人のデータ)
5つの大規模無作為臨床試験での塞栓症の年間発症率は、対照群が3.0~7.4%であったのに対し、本薬投与群で0.4~2.5%であり、その減少率は42~86%であった。13)14)15)16)17)
本剤低用量と抗血小板剤の併用群と、本剤の通常用量群との脳梗塞、全身性塞栓の年間発現率を比較した。年間発現率は併用群では7.9%、通常用量群では1.9%であった。18)
(4) 人工弁置換術後の抗凝血薬療法に対する成績
1,000例を超える人工弁置換術後の抗凝血薬療法の報告で血栓塞栓症の年間発症率は1.4%との成績が報告されている。19)
薬効薬理
1. 抗凝血作用
本薬は、ウサギに2mg/kgを経口投与した後6~18時間にわたってプロトロンビン時間の延長が認められた。20)
2. 血栓形成抑制作用
家兎の頸動脈を結紮して血栓を形成させ、本薬を13~20mg/kg/週の用量で10~30日間投与し、血栓成長におよぼす影響を検討した結果、プロトロンビン活性が15%以下に抑制された例では血栓重量が有意に減少した。21)
3. 作用機序
本薬は、ビタミンK作用に拮抗し肝臓におけるビタミンK依存性血液凝固因子(プロトロンビン、第VII、第IX、及び第X因子)の生合成を抑制して抗凝血効果及び抗血栓効果を発揮する。
また、本薬によって血中に遊離するPIVKA(Protein induced by Vitamin K absence or antagonist:プロトロンビン前駆体)が増加することにより抗凝血作用及び血栓形成抑制作用を持つ。22)
有効成分に関する理化学的知見
一 般 名
ワルファリンカリウム(Warfarin Potassium)
化 学 名
Monopotassium(1RS)-2-oxo-3-(3-oxo-1-phenylbutyl)chromen-4-olate
分 子 式
C19H15KO4
分 子 量
346.42
構 造 式
物理化学的性状
ワルファリンカリウムは白色の結晶性の粉末である。
本品は水に極めて溶けやすく、エタノール(95)に溶けやすい。
本品は水酸化ナトリウム試液に溶ける。
本品1.0gを水100mLに溶かした液のpHは7.2~8.3である。
本品は光によって淡黄色となる。
本品の水溶液(1→10)は旋光性を示さない。
取扱い上の注意
本剤は、顆粒表面に白色の付着物が見られることがあるが、添加物によるものである。
包装
ワーファリン顆粒0.2%:100g
主要文献及び文献請求先
主要文献
1)
安永幸二郎:内科宝函, 17, 279(1970) WF-0371
2)
工藤龍彦ら:医学のあゆみ, 104, 36(1978) WF-0005
3)
須田光明:日本内科学会雑誌, 82, 137(1993) WF-0742
4)
坂牧成恵ら:食品衛生学雑誌, 47, 85(2006) KY-0162
5)
O’Reilly, R. A. et al.:Thromb. Diath. Haemorrh., 1, 1(1964) WF-0036
6)
Banfield, C. et al.:Br. J. Clin. Pharmacol., 16, 669(1983) WF-0399
7)
Lewis, R. J. et al.:J. Clin. Invest., 49, 907(1970) WF-0037
8)
Kaminsky, L. S. et al.:Pharmacol. Ther., 73, 67(1997) WF-1010
9)
大野恭信:臨床眼科, 18, 37(1964) WF-0040
10)
Nodine, J. H. et al.:Penn. Med. J., 192, 1(1961) WF-0039
11)
Wray, R. et al.:New Engl. J. Med., 288, 815(1973) WF-0042
12)
Smith, P. et al.:New Engl. J. Med., 323, 147(1990) WF-0908
13)
Petersen, P. et al.:Lancet, 8631, 175(1989) WF-0518
14)
Kistler, J. P.:New Engl. J. Med.,