腎障害のある患者[水分、塩化ナトリウムの過剰投与に陥りやすく、症状が悪化するおそれがある。]
3.
尿崩症の患者[本症には適切な水分、電解質管理が必要であり、本剤の投与により電解質等に影響を与え、症状が悪化するおそれがある。]
4.
糖尿病の患者[非ケトン性高浸透圧性昏睡があらわれることがある。]
重要な基本的注意
1.
フルクトース‐1,6‐ビスホスファターゼ(FBPase)欠損症の新生児、乳児、幼児に対して、脳浮腫あるいは代謝不全から誘発される脳浮腫予防のために本剤を投与して神経障害(痙攣、頻呼吸、嗜眠等)があらわれ、死亡したとの報告がある3)。新生児等の脳浮腫、原因不明の意識障害に対し、本剤を投与する際には、血糖値、血中乳酸値を測定し、糖新生系の異常、特にFBPase欠損症の可能性が疑われる場合には投与しないこと。さらに、本剤投与中、投与後においては、血糖低下傾向がないこと、及び意識障害に代表される神経症状、脳浮腫の悪化が生じないことを確認し、悪化がみられた場合は、このような患者への本剤の投与は中止すること。
2.
成人発症II型シトルリン血症の患者に対して、脳浮腫治療のために本剤を投与して病態が悪化し、死亡したとの報告がある。成人発症II型シトルリン血症(血中シトルリンが増加する疾病で、繰り返す高アンモニア血症による異常行動、意識障害等を特徴とする)が疑われた場合には、本剤を投与しないこと。
3.
急性の硬膜下・硬膜外血腫が疑われる患者には、出血源を処理し、再出血のおそれのないことを確認してから本剤を投与すること(血腫の存在を確認することなく本剤を投与すると、頭蓋内圧の下降により一時止血していたものが再び出血することがある)。
4.
本剤には塩化ナトリウムが含まれているので、食塩摂取制限の必要な患者に投与する場合には注意すること。
5.
乳酸アシドーシスがあらわれることがあるので注意すること。
副作用
副作用等発現状況の概要
総症例8,650例中、副作用が報告されたのは157例(1.82%)で、発現件数は184件であった。(再審査終了時、1988年)
重大な副作用
アシドーシス
頻度不明
乳酸アシドーシスがあらわれることがあるので、症状があらわれた場合には炭酸水素ナトリウム注射液等を投与するなど適切な処置を行うこと。(自主改訂、1995年)
その他の副作用
副作用が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
1.泌尿器
0.1~5%未満
尿潜血反応陽性、血色素尿、血尿、尿意
2.消化器
0.1~5%未満
悪心
3.消化器
0.1%未満
嘔吐
4.代謝異常
0.1~5%未満
低カリウム血症
5.代謝異常
0.1%未満
高ナトリウム血症、非ケトン性高浸透圧性高血糖
6.その他
0.1~5%未満
頭痛、口渇
7.その他
0.1%未満
腕痛、血圧上昇、けん怠感
高齢者への投与
一般に高齢者では生理機能が低下していることが多いので、本剤投与に際しては水・電解質異常に留意し、慎重に投与すること。
適用上の注意
投与前
(1)
眼科手術中に尿意を催すことがあるので、術前に排尿しておくことが望ましい。
(2)
投与に際しては、感染に対する配慮をすること(患者の皮膚や器具消毒)。
(3)
寒冷期には体温程度に温めて使用すること。
(4)
開封後直ちに使用し、残液は決して使用しないこと。
薬物動態
1. 分布(参考)4)
ラットの静脈内14C‐glycerin投与による全身autoradiographyでは、放射能はほぼ全身にわたり分布し、血中・肝における速やかな消失とは異なり脳への移行及び消失は遅れを示した。
2. 代謝、排泄(参考)4)
ラット、ウサギの静脈内14C‐glycerin投与試験の結果、投与した放射能の65%が14CO2として48時間までに呼気中に排泄された。このときの尿中排泄量はラットで13%、ウサギで9%、糞中排泄量は両者ともごくわずかで、またラットでの胆汁中への排泄量は1%以下であった。
臨床成績
1.
頭蓋内圧亢進、脳浮腫の状態が持続している患者(61症例)を対象とした二重盲検比較試験において、本剤500mLを2時間かけて静脈内投与した結果、速やかな頭蓋内圧下降、脳浮腫軽減、脳血流改善等の効果をもたらし、自・他覚所見の改善も認められ有用性が明らかにされた5)。
総合全般改善度(第三者判定)〔改善以上〕:41.4%(12/29)
2.
脳浮腫及び頭蓋内圧亢進を伴う各種中枢神経疾患患者(17施設253例)に本剤を1日500mLから1000mL静脈内投与した結果、脳脊髄液圧は有意に下降し、頭蓋内圧亢進症状と考えられる自・他覚症状は61.7%に改善がみられた6)。
3.
緑内障患者及び白内障又は緑内障術前処置の患者(57症例)を対象とした二重盲検比較試験において、本剤500mLを60~90分の投与速度で静脈内投与した結果、有用性が認められた7)。
有用率〔有用以上〕:87.7%(50/57)
薬効薬理
1.
ネコ及びウサギにglycerinを静脈内投与したところ、いずれも著明な脳脊髄液圧下降作用が認められた8)。
2.
ウサギに本剤を静脈内投与したところ、前房内圧及び硝子体内圧の下降作用が認められた9)。
3.
イヌの硬膜外baloon法及びcold‐injury法により作成した脳障害モデルに本剤を静脈内投与したところ、増加している脳水分量の減少をはじめ、脳血流量増加、脳酸素消費量増加、脳組織代謝改善等の作用が認められた10)。
4.
ネコの実験的脳虚血モデルに本剤を静脈内投与し、生理学的・組織学的に検討した結果、脳虚血性障害に対し保護的に作用することが認められた11,12)。
5.
ヒト(頭蓋内圧又は眼内圧下降を必要とする患者)に本剤を静脈内投与した結果、本剤は速やかで強い頭蓋内圧下降作用、眼内圧下降作用を示した5,7,13,14)。
6.
ヒト(脳卒中)に本剤又は、glycerinを投与し、局所脳循環を測定したところ、虚血状態から正常状態への血流増加作用がみられ、充血部位から虚血部位への血流再分配作用も認められた15‐17)。
7.
ヒト(脳卒中)にglycerinを投与したところ、脳浮腫形成における悪循環因子すなわち脳細胞内のエネルギー産生障害因子とされる遊離