4. 代謝
エベロリムスは主としてCYP3A4によって代謝される(in vitroのデータ)。7)腎移植患者に14C標識したエベロリムスを単回経口投与したとき、エベロリムスは主に未変化体として血液中に存在し、その他の主な代謝物として3種の水酸化体及び環状ラクトンの加水分解による2種の開環体及びフォスファチジルコリン抱合体が検出された。8) (外国人のデータ)
5. 排泄
腎移植患者に14C標識したエベロリムスを単回経口投与したとき、投与した放射能の約80%は糞中に排泄され、尿中には約5%が排泄された。なお、尿及び糞中に未変化体は検出されなかった。8) (外国人のデータ)
6. 肝機能障害
成人において、エベロリムスの血中濃度は肝機能障害により上昇し、軽度(Child-Pugh分類クラスA)、中等度(Child-Pugh分類クラスB)及び重度(Child-Pugh分類クラスC)の肝機能障害を有する被験者にアフィニトール錠を用いて10mgを単回経口投与したときのAUC0-infは、肝機能の正常な被験者のそれぞれ1.6倍、3.3倍、3.6倍であった。9) (外国人のデータ)
小児において、エベロリムスの薬物動態に対する肝機能障害の影響は検討されていない。
7. 腎機能障害
固形癌患者のデータを用いて母集団薬物動態解析を実施した結果、クレアチニンクリアランス(25~178mL/min)はエベロリムスの見かけの全身クリアランス(CL/F)に対して有意な影響を及ぼさないことが示唆された。10) (外国人のデータ)
8. 高齢者での薬物動態
固形癌患者のデータを用いて母集団薬物動態解析を実施した結果、年齢(27~85歳)はエベロリムスのCL/Fに対して有意な影響を及ぼさないことが示唆された。10) (外国人のデータ)
9. 小児での薬物動態
小児の結節性硬化症に伴う上衣下巨細胞性星細胞腫患者(3~17歳)にアフィニトール錠を投与したとき、体表面積あたりの投与量(1.5~14.6mg/m2)とトラフ濃度(0.5~20.8ng/mL)の間に用量比例関係が認められたことから、小児におけるクリアランスは体表面積に比例して増加することが示唆された。11) (外国人のデータ)
臨床成績
結節性硬化症に伴う上衣下巨細胞性星細胞腫患者を対象とした臨床試験(参考)
(1) 結節性硬化症に伴う上衣下巨細胞性星細胞腫患者を対象とした第II相海外臨床試験(海外で実施された医師主導単群試験)11)
結節性硬化症に伴う上衣下巨細胞性星細胞腫患者を対象に、アフィニトール錠注3(開始用量3.0mg/m2の1日1回又は隔日投与、トラフ濃度を測定し5~15ng/mLを目標に投与量を調節)を同一時刻に経口投与した(投与量範囲1.25~17.5mg/日)。
合計28例にエベロリムスが投与された。年齢の中央値は11.0(範囲:3~34)歳であった。主要評価項目の上衣下巨細胞性星細胞腫の最大病変の体積変化は、ベースライン時は中央値1.74(範囲:0.49~14.23)cm3であったのに対し、6ヵ月時点は中央値0.93(範囲:0.31~7.98)cm3であり、中央値で0.80(範囲:0.06~6.25)cm3の有意な縮小が認められた(片側Wilcoxon signed rank検定 p<0.001)。
(注3:本試験で使用されたアフィニトール錠と分散錠の生物学的同等性は示されていない。)
(2) 結節性硬化症に伴う上衣下巨細胞性星細胞腫患者を対象とした第III相海外臨床試験(世界10ヵ国で実施された二重盲検比較試験)12)
結節性硬化症に伴う長径1cm以上の上衣下巨細胞性星細胞腫患者を対象に、プラセボを対照群として臨床試験錠1mg注4(開始用量4.5mg/m2/日注5、トラフ濃度を測定し5~15ng/mLを目標に投与量を調節)を食直後に連日経口投与を行った(投与量範囲1~22mg/日)。
合計117例がエベロリムス群(78例)又はプラセボ群(39例)に無作為割付けされた。年齢の中央値は9.5(範囲:0.8~26.6)歳であった。主要評価項目である上衣下巨細胞性星細胞腫に対する奏効率は、エベロリムス群34.6%、プラセボ群0%であり、プラセボ群と比較してエベロリムス群で有意に高かった(無作為化時の酵素誘導作用性抗てんかん薬使用の有無により層別化したCochran-Mantel-Haenszelの正確検定 p<0.0001)。
(注4:本試験で使用された臨床試験錠1mgとアフィニトール分散錠との生物学的同等性は示されていない。)
(注5:本剤の承認された開始用量は、アフィニトール錠と同じ3.0mg/m2である。【用法及び用量】の項参照)
薬効薬理
1. 抗腫瘍作用
In vitro試験において、エベロリムスはヒト及びげっ歯類由来腫瘍細胞株の増殖を抑制した。13~18)また、in vivo試験において、エベロリムスはヒト腫瘍細胞株を異種移植したマウス19~31)、同系腫瘍移植マウス32)及び同系腫瘍移植ラット33,34)の腫瘍増殖を抑制した。
2. 血管新生阻害作用
In vitro試験において、エベロリムスは血管内皮増殖因子(VEGF)及び塩基性線維芽細胞増殖因子によるヒト臍帯静脈内皮細胞の増殖を阻害した。35)また、エベロリムスは腫瘍細胞からのVEGF産生を阻害した。32)In vivo試験において、エベロリムスはマウスに皮下移植したVEGF含有チャンバー内の血管新生を阻害した。36)B16/BL6メラノーマ細胞を同所性移植したマウスにおいて、エベロリムスは移植部位及び転移部位の腫瘍血管密度を減少させた。32)
3. TSC遺伝子欠損マウスに対する作用
エベロリムスは、結節性硬化症の原因遺伝子と考えられているTuberous sclerosis(TSC)遺伝子のうち、TSC1遺伝子を神経細胞で欠損させたマウスの生存日数を延長し、脳内のリン酸化S6を低下させた。37)また、エベロリムスは、TSC2遺伝子をヘテロで欠損させたマウスでみられる腎腫瘍形成を抑制した。38)
4. 作用機序
エベロリムスは、細胞内イムノフィリンであるFKBP(FK506 binding protein)12に結合した。39)エベロリムスとFKBP12の複合体がセリン・スレオニンキナーゼであるmTORを選択的に阻害すると考えられている。mTORは、p70S6キナーゼ及び4E-BP1をリン酸化することによって蛋白質合成を調節し、細胞の成長、増殖及び生存に関与する。
エベロリムスを投与された担癌マウス40)及び担癌ラット33)の腫瘍においてp70S6キナーゼが阻害され、エベロリムスを投与された担癌ラットの腫瘍において4E-BP1のリン酸化が阻害された。33)
有効成分に関する理化学的知見
構造式
一般名
エベロリムス(Everolimus)
化学名
(1R,9S,12S,15R,16E,18R,19R