はしないこと。
(2) ゴム栓部のシールフィルムを開封後直ちに使用し、一部使用して放置した残液や、万一浮遊物の認められるもの、不透明な液は使用しないこと。
(3) *ソフトバッグ製品は、原則として連結管を用いたタンデム方式による投与はできない。
その他の注意
1. 組織残留性
(1) 本剤に使用しているヒドロキシエチルデンプン〔置換度0.50~0.55、重量平均分子量(Mw)約70000〕を家兎に20mL/kg/回を1回投与した結果、体内残留率は、10日後4.6%、60日後1.6%、また、10日間連続投与では、10日後3.2%、30日後2.5%、60日後1.5%、120日後0.8%であった2)。
(2) 高分子ヒドロキシエチルデンプン〔置換度0.6~0.66、重量平均分子量(Mw)200000〕を家兎に5日間静注した結果、120日後でも約14%が体内に残留していたとの動物実験が報告されている3)。
2.
海外臨床試験において、重症敗血症患者にHES製剤注)を使用した場合、酢酸リンゲル液を使用した場合と比較して投与後90日時点での死亡のリスクが増加し腎代替療法を要した患者の割合が高かったとの報告がある4)。また、敗血症患者を含むICUの入院患者にHES製剤を使用した場合、生理食塩液を使用した場合と比較して投与後90日までの死亡のリスクは増加しなかったが、腎代替療法を要した患者の割合が高かったとの報告がある5)(<効能・効果に関連する使用上の注意>の項参照)。
3.
海外臨床試験において、成人の人工心肺を使用した心臓手術時の輸液管理にHES製剤注)を使用した場合、アルブミンを使用した場合と比較して輸血が必要となる術後出血及び出血による再手術のリスクが高かったとの報告がある6)。
注)本剤とは分子量及び置換度等の異なるもの。
薬物動態
本剤を術後患者に投与した結果、ヒドロキシエチルデンプンの低分子部分から尿中へ排泄され、高分子部分は血中に留まった。しかし、高分子部分もα-アミラーゼにより徐々に低分子化され、尿中へ排泄された7)。
臨床成績
1. 循環血液量維持効果8)
平均出血量370mLの手術患者に対し、本剤を出血量の1.5倍投与(乳酸リンゲル液併用)した結果、循環血液量は術後2時間まで術前の値を維持し、その間、血圧、中心静脈圧に著変を認めなかった。
2. 体外循環希釈効果9)
希釈体外循環の充てん液として本剤を使用(乳酸リンゲル液及び新鮮血液を併用)した結果、本剤の使用量は体外循環中の循環血液量の10~15%で十分であった。
薬効薬理
1. 臨床薬理作用
(1) コロイド浸透圧及び晶質浸透圧と体内水分バランス10)
本剤のコロイド浸透圧及び晶質浸透圧は、それぞれ血漿の浸透圧に近似しているため、細胞間質液の血管内取りこみも、また、血管外への早期移行も少なく、体内水分バランスを崩さなかった(術中使用)。
(2) 循環血液量維持効果11)
血液量の維持効果を131Iを用いて検討した結果、乳酸リンゲル液に比べ循環血液量の維持効果が優れていた(術中使用)。
(3) 末梢循環改善作用12)
血液粘度をわずかに低下させ、末梢循環を改善した(術前使用)。
2. 基礎薬理作用
(1) 循環血漿量及び血圧保持効果
1) 等量輸注13)
家兎を3mL/分の速度で、20mL/kg脱血し、脱血終了後直ちに等量点滴注入すると、血圧は直ちに95%の回復を示し、以後5時間目まで血圧保持効果が認められた。
2) 1.5倍量輸注14)
15mL/kgを脱血後のイヌに、脱血量の1.5倍量を輸注した場合、等量輸注以上の血圧保持効果が認められた。更に、1.5倍量輸注により心拍数、ECG、心仕事量、中心静脈圧などから、特に心臓に負担をかけていないことが確認された。
(2) 血液粘度低下作用15)
脱水状態の家兎に本剤及び10%デキストラン40をともに60~90mL/30分の速度で投与した結果、ヘマトクリット値の低下は10%デキストラン40より少なかったにもかかわらず、血液粘度の低下は本剤の方が著明であった。本剤は10%デキストラン40と比較して、血液粘度の低下に効果的に作用した。
(3) 浸透圧と赤血球形態16)
浸透圧が血漿に近似しているため、赤血球形態に悪影響を及ぼさない(in vitro)。
(4) 電解質組成と酸塩基平衡17)
電解質組成が細胞外液に近似しており、また、配合された乳酸塩により、アシドーシスの予防に有効である(イヌ)。
有効成分に関する理化学的知見
一般名:
ヒドロキシエチルデンプン70000(Hydroxyethylated Starch)[JAN]
極限粘度:
0.09~0.14
置換度:
0.50~0.55
重量平均分子量(Mw):
約70000(GPC-LALLS法)18)
取扱い上の注意
(使用前の注意)
*・薬液が漏出したり、混濁・浮遊物などの異物が認められるものは使用しない。
・ゴム栓部のシールフィルムが万一はがれているときは使用しない。
(調製時の注意)
・通気針(エアー針)は不要である(軟らかいバッグなので、大気圧で自然に輸液剤が排出される)。
・注射針は無菌的操作により、ゴム栓部にまっすぐ刺すこと。斜めに刺すと注射針が容器頸部を貫通し、液漏れの原因となることがある。
なお、輸液セットの針はゴム栓部のOUTに、薬剤添加時(混注)にはINと表示した○印の位置に刺すこと。
・薬剤添加後はよく転倒混和して速やかに使用し、貯蔵は避けること。
・容器の液目盛りはおよその目安として使用すること。
*(バッグの取扱い上の注意)
・軟らかいポリプロピレン製のバッグなので、鋭利なもの等で傷をつけないこと(液漏れの原因となる)。
包装
ヘスパンダー輸液 500mL 20袋 ソフトバッグ入り
主要文献及び文献請求先
主要文献
1)
佐々木なおみ,他,医学のあゆみ,123,1013(1982).
2)
フレゼニウス カービ ジャパン(株),生体内動態並びに残留性比較試験(社内資料)
3)
フレゼニウス カービ ジャパン(株),生体内動態に関する研究(社内資料)
4)
Perner A. et al.,N Engl J Med.,367(2),124(2012).
5)
Myburgh JA. et al.,N Engl J Med.,367(20),1901(2012).
6)
Navickis RJ. et al.,J Thorac Cardiovasc Surg,144,223(2012).
7)
小田