が速やかに代謝される群(Extensive Metabolizer:EM)と緩やかに代謝される群(Poor Metabolizer:PM)に分類した健康成人男子12例(EM:8例、PM:4例)を対象として、1回30mg1日2回を5日間点滴静注した場合の血清中濃度は図及び表1のとおりである。1)
2.
蛋白結合2)
ランソプラゾールのヒト血清蛋白結合率は、0.05~5μg/mLの濃度範囲で約98%である。
3.
代謝
ランソプラゾールは主にCYP2C19及びCYP3A4により代謝される。3) CYP2C19には遺伝多型が存在し、日本人をはじめとするアジア系のモンゴル人種では約10~20%がPMであると報告されている。4)
4.
尿中排泄5)
健康成人男子(9例)に30mgを1回静脈内投与した場合、尿中には未変化体は認められず、すべて代謝物であり、投与終了24時間後までの尿中累積排泄率は12~17%である。
表1 1回30mg1日2回、5日間点滴静注時の血中濃度
CYP2C19による代謝型 |
AUC0-12(ng・h/mL) |
Cmax(ng/mL) |
T1/2(h) |
1日目 |
EM |
4,386±1,335 |
2,262±354 |
1.5±0.4 |
1日目 |
PM |
10,415±1,159 |
2,727±315 |
4.0±0.7 |
5日目 |
EM |
4,939±1,541 |
2,414±406 |
1.6±0.5 |
5日目 |
PM |
12,579±1,939 |
3,134±316 |
4.2±1.1 |
臨床成績
出血を伴う消化性潰瘍等を対象とした臨床試験において、1回30mg1日2回静脈内投与され止血効果が評価された203例のうち、3日間(72時間)以内に止血が認められた症例は94.6%(192/203例)である。203例中内視鏡的な前処置が行われなかった症例は41例であり、3日間(72時間)以内に止血が認められた症例は97.6%(40/41例)である。
また、上記臨床試験において、1回30mg1日2回静脈内投与された221例の有害事象(臨床検査値異常変動を除く)の発現率は14.9%(33/221例)である。
背景因子別の発現率では、男性12.7%(21/166例)、非高齢者8.5%(14/165例)、体重50.0kg以上60.0kg未満の層14.9%(11/74例)、体重60.0kg以上の層(体重が不明であった例を除く)10.0%(10/100例)と比べて、女性21.8%(12/55例)、高齢者33.9%(19/56例)、体重50.0kg未満の層29.7%(11/37例)でやや高かった。6~8)
薬効薬理
1.
作用機序9~12)
本剤は胃粘膜壁細胞の酸生成部位へ移行した後、酸による転移反応を経て活性体へと構造変換され、この酸転移生成物が酸生成部位に局在してプロトンポンプとしての役割を担っているH+, K+-ATPaseのSH基と結合し、酵素活性を抑制することにより、酸分泌を抑制すると考えられる。
血液凝固能及び血小板凝集能は酸性条件下で強く障害され、さらに血液凝固の結果として形成されたフィブリンは酸性条件下でペプシンにより溶解されることが報告されているが、本剤は胃内pHを上昇させることにより血液凝固能及び血小板凝集能を改善し、ペプシン活性を抑制して出血抑制作用を示すと考えられる。
また、胃の損傷粘膜の修復は酸性条件下で抑制されるが、本剤は酸分泌を抑制することにより胃内pHを上昇させ、損傷粘膜の修復を促進すると考えられる。
2.
胃出血抑制作用13)
ラット(静脈内投与)において、脱血ショックによる胃出血に対して抑制作用を示す。
3.
胃粘膜損傷形成抑制作用13)
ラット(静脈内投与)において、アスピリン又はインドメタシンによる胃粘膜損傷の形成を抑制する。
4.
胃酸分泌抑制作用(24時間胃内pHモニタリング)1,14,15)
健康成人への1回30mg1日2回静脈内投与により、持続的な胃酸分泌作用が認められる。また、静脈注射(約3分)又は点滴静注(30分)において、24時間胃内pH4ホールディングタイム(pH4以上の時間の割合)は同様である。
なお、本剤の代謝型が判定された健康成人への1回30mg1日2回静脈内投与における酸分泌抑制効果(24時間ごとのpH4ホールディングタイム)は、1日目ではEM(56~69%)、PM(90%)、5日目ではEM(80~88%)、PM(98%)である。
有効成分に関する理化学的知見
化学構造式
一般名
ランソプラゾール(Lansoprazole)〔JAN〕
化学名
(RS)-2-({[3-Methyl-4-(2,2,2-trifluoroethoxy)-2-pyridyl]methyl}sulfinyl)benzimidazole
分子式
C16H14F3N3O2S
分子量
369.36
融点
約166℃(分解)
性状
ランソプラゾールは白色~帯褐白色の結晶性の粉末である。N,N-ジメチルホルムアミドに溶けやすく、メタノールにやや溶けやすく、エタノール(99.5)にやや溶けにくく、ジエチルエーテルに極めて溶けにくく、水にほとんど溶けない。
包装
10バイアル
主要文献及び文献請求先
主要文献
1)
注射用ランソプラゾールの臨床薬理試験成績1(社内資料)
2)
ランソプラゾールの蛋白結合に関する検討(社内資料)
3)
ランソプラゾールの代謝に関する検討(社内資料)
4)
千葉 寛 : 日本薬理学会